伊藤檀「自分を開く技術」でサッカー本大賞2017の優秀作品賞、読者賞を受賞しました
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2000年に楽譜の出版社に転職し、そこから私の編集者人生はスタートしました。
独立後は、楽譜から音楽書、教則本、そして一般書籍や雑誌と、少しずつ守備範囲を広げながら、趣味実用書の編集を中心に仕事をしてきました。
あれから17年。
編集者として初めて、自分の手がけた本が賞を取りました。
趣味実用書の世界にいると、出版界の賞とはほとんど無縁で、重版が何回かかったとか、何部売れたとかが自分の評価になることがほとんどです。
この本は、企画の段階からいろんな「人の縁」をへてきたのも、自分にとって印象深いことでした。
そもそも、伊藤さんを知ったのは、自分が会社をつくって間もないころ。
当時は、編集のかたわら、音楽イベントの主催や、アーティストの招聘なんかにも首をつっこんでいて、日本のミュージシャンをアジアにつれていったり、マレーシアのアーティストを日本に呼んでコンサートを開いたりしていました。
そのとき、マレーシアで知り合ったライターのアサネギシさんから、「マレーシアに今、日本人のサッカー選手がいて、アジアの渡り鳥として、いろんな国でプレーしているんですよ」と聞いたのが、伊藤檀さんでした。
そのネギシさんを紹介してくれた二村聡さんは、「自分を開く技術」の出版元、本の雑誌社に話をもちかけ、伊藤さんを引合せた張本人。
二村さんは、私が会社を立ち上げる前から、いろいろお世話になっていて、本業は、生物多様性条約に関する生物資源利用の会社経営者です。
さて、通常であれば、「アジアの各国を渡り歩いてプロサッカー選手として活躍している」という武勇伝を読み物にしたてるというのが、よくある本のつくりかたです。
しかし、私はずっと趣味実用畑にいた編集者です。
伊藤さんの考え方や、実践してきた行動の中から、何か人の役にたち、学びとなるものを切り抜いて、本として紹介したい……。そんなことを考えていたら、伊藤さんから思わぬ言葉がでました。
「いわゆるサッカー選手の英雄伝みたいなのはいりません。僕が今まで海外の国々に直接交渉し、プレーをしてきた、そのノウハウをまとめて、僕に続く人たちにも知ってもらいんです。」
その瞬間、私は本の完成イメージが浮かび、それを出版元の杉江由次さんと共有して、編集作業を進めていきました。
伊藤さんからは、LINEを通してテキストやメッセージをもらい、それをもとにインタビューを重ね、本の構成を練っていきました。
原稿の形になってからは、「炎のレッズサポ」でもある杉江さんが、章立てや原稿の順番、足りない部分の指摘など、本として必要な要素を考えてくれました。
こうやって、伊藤さんを中心に、縁のできた人たちがそれぞれ自分たちの得意な仕事を担って、一冊の本をつくりあげたのです。
さらに、この本が生まれるに当たって、もうひとり大事な縁をもった人がいます。
本の装丁と、タイトルを考えてくれた、デザイナー寄藤文平くんです。
寄藤くんといえば、JTの「大人のたばこ養成講座」やR25のイラストなどを手がける売れっ子のクリエーター。
彼とは、小中高とずっと同じ学校に通った友人です。しかも、本の雑誌社の杉江さんとは、本屋大賞や本の装丁でやりとりがありました。
いつか一緒に仕事ができればいいなあ……と思っていたら、ここでまさかの縁がつながりました。
寄藤くんが打ち合せで書いてくれた「自分を開く技術」のラフスケッチ、うれしくて、額に入れて家に飾ってあります(笑)。
そうやって、いろんな縁が一気につながった本が「自分を開く技術」でした。
本当にありがとうございました。
☆ ☆ ☆
選考委員による選評
幅 允孝さん(ブックディレクター)
本書に収録されている「伊藤檀が渡り歩いてきたアジア各国の違い」の一覧表だけでも一読の価値がある。サッカー選手を通じた仕事論として完成度は高い。
実川元子さん(翻訳家/ライター)
「海外でプレーしたい」という夢を叶えたサッカー選手が、どのように道を切り拓いてきたのかを具体的な情報とともに記録したユニークな本。これだけ海外でプレーする日本人選手が増えてきた中で、なぜこれまでこういう本が出なかったのかと目からウロコだった。情報収集、人脈作り、生活の基盤を作ることも含めて自力で道を切り拓いてきた著者だからこそ知っている情報が満載で、中でも日本とは違う文化の国で何に気をつけたらいいのか、どれだけ生活費がかかるのかといった情報が非常に貴重。素直な文体も好感が持てる。これから海外でサッカーをしたい人にとってもとても参考になるはず。
☆ ☆ ☆
一夜明けて、パソコンを開いてネットのニュースを見ていたら、Yahoo!ニュースに自分の写真が載っていて、2度びっくり。
子どものころおばあちゃんに「新聞の三面記事に載っちゃいけんよ」と言われたことを思い出す。。。
▲伊藤さんの受賞コメントは上記記事で読めます。
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