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幸せの尺度について考えてみる

公開日: : あれこれ思考してみる

今回は少し仕事から離れて、このところ頭の中をグルグルを回っていることを、ざっと文字にしてみたいと思います。

真っ正面から聞くと、少し照れくさい質問ではありますが、
皆さんにとって「幸せ」とはどんな感じでしょう?

たとえば

「美味しいものをたくさん食べること」ができたら幸せ
「エステや温泉でゆっくり疲れを癒すこと」ができたら幸せ
「釣りや読書など、趣味に思いっきり没頭」できたら幸せ
「宝くじが当たったり、給料が上がった」ら幸せ
「ずっと欲しかったアクセサリーや、パソコンが手に入って」幸せ
「何もせず、ぼーっと海を眺めている時間が手に入った」ら幸せ
「愛する人がずっと隣でニコニコしていた」ら幸せ

などなど・・・。
答える人の数だけ、あるかもしれません。

本能に根ざした欲求、いわゆる、食欲、睡眠欲、排泄欲、性欲など、生物として生きていくために必要な、生理的な「欲」のほかにも、人は実に多くの「欲」をもっています。
それらがかなえられることで、得られる感情が「幸せ」の一面といってもよいかと思います。

つまり、さまざまな「欲」に、幸せの一因があるとするなら、これらの「欲」を分類して、満足度を目算してみれば、幸せを視覚化できるのではないか?と考えたのです。

そこで、上に列挙したようなさまざまな「欲」を項目ごとに分け
「モノ」「お金」「時間」「感情」の4つに分類してみました。

「モノ」とは、文字どおりで、上記のアクセサリーやパソコンなどが該当します。
言いかえれば、所有欲ということになるかもしれません。

「お金」も文字どおりですね。年収がどうとか、投資がどうとかという欲求もここに入ると思います。

「時間」とは、誰にも指図されず、自分の自由に使える時間といったらいいでしょうか。

最後の「感情」は、少し分かりづらいかもしれません。
人間関係や、仕事のストレスなどが軽減、開放され、穏やかな心理状態でいたいという欲求です。

この「モノ」「お金」「時間」「感情」という4つの尺度で四角形のチャートを作ってみれば、面積の部分が「幸せ」として可視化されます。

たとえば、同じ面積でも、人によって尺度はまちまちでしょうから、同じ総量の「幸せ」を抱きつつ、満足・不満足のポイントが異なるということになります。

かつて、この4つの尺度には明確な優先順位がありました。
それも暗黙のルールとして。

しかし、それが今、急速に崩壊し、ガラガラポンの状態になっているが故に、人によって、迷ったり悩んだりしているのではないかと思います。

これを、仮に「昭和的尺度」と名付けてみましょうか。

昭和的尺度には、サラリーマンが一家の屋台骨となり
終身雇用のもとで、休みも返上でモーレツに働き
右肩上がりの給料をもらって、家を建て、車を買い
家庭のことは奥さんに任せっきりで、定年後は家族から煙たがられる・・・

という、ちょっとステレオタイプな感じのファミリー像がぴったりはまります。

つまり
1「お金」2「モノ」3「感情」4「時間」の順です。
特に、2と3の間には、三途の川くらい大きな隔たりが存在していて、「お金」や「モノ」を手に入れるためには、「感情」や「時間」を犠牲にしてもなんら問題ないという暗黙のルールが存在していました。

例えば、「上司や得意先の機嫌をとるために、したくもない付き合いをして、自分の感情を我慢したり」(感情)「マイホームを手に入れるために、片道2時間の通勤時間をいとわない」(時間)などがこれにあたります。

もちろん、この価値観を今も忠実に実践している人たちもいますが、海外のビジネス基準からすれば奇異な風習であることは、周知の事実となっています。

かつて、この暗黙のルールを放棄して、自分にあった幸せを求める人たちは少数派で
どちらかといえば、変わり者のレッテルを貼られることが少なくありませんでした。

家族との時間を大切にするため、大企業を辞めて地方で晴耕雨読の生活に転じたり
安定した公務員という職を捨て、自分の夢のために別の世界へチャレンジしたり、といった人たちです。

「モノ」「お金」のために、「感情」や「時間」を犠牲にするというライフスタイルは、モノが不足していて、今日よりも明日の方が給料がよくなるという時代には、
まだ耐えることのできるプランだったと思います。
それは「明日の希望」が、目の前のマイナスを打ち消してくれたからです。

ところが、ほとんどの人にモノが行き渡り、給料は右肩上がりどころか、横ばい、さらには下降線という状況下で、「明日の希望」に黄色信号を灯す大震災が起きました。

また、TwitterやFacebookなどをはじめとする、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)によって、人と人は情報でつながり、多様な情報をすばやくかつ、大量に共有することができるようになりました。
これにより、人々の間にさまざまな価値観を許容する土壌が育ちつつあると思います。

これからの社会は、それぞれの「幸せ」のために、自分に合った尺度の数値を上げ
総面積としての「幸せ」を広げていく時代に入っていくのではないでしょうか。

中には「モノ」や「お金」よりも、「時間」や「感情」を優先したいという人も増えてくるでしょう。

実際、『フリー』(クリス・アンダーソン)『パブリック』(ジェフ・ジャービス・共にNHK出版)などにもあるように、ネットを生活に組み込むことで、トータルの生活コストを落とし、暮らしていくことも少なからず可能になってきました。

また、『第四の消費』(三浦展著・朝日新書)には、一貫してモノを消費し続けてきた日本の人々が2005年あたりを境に、シェア(共有)する方向へと舵を切り始めていると指摘しています。

日本の社会で問題になっている、鬱や自殺問題なども、4つの尺度でいうところの「時間」や「感情」の優先順位を上げるか、少なくとも、同列に扱うという意識が浸透することで、改善するかもしれません。

そんなわけで、今の自分の「幸せ」に疑問符が浮かんでいる方や、「モノ」や「お金」はあるのに、または「時間」も「感情」もあるのに今ひとつ「幸せ」を感じられない方など、一度立ち止まって、4つの尺度と、自分の中にある優先順位に目を向けてみてはどうでしょうか。

 

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Comment

  1. 風@ より:

    はじめまして、たまたまこの記事を拝見させていただきましたが、とても共感しました。

    私は現在、22歳なのですが、今まで自分が抱えていた親世代の人たちとのジェネレーションギャップというのは、こういったところから起きているのではないかと思います。

  2. 小林渡 より:

    風@さん、ありがとうございます。
    なかなか答えがでない問題ですが、世代を超えて情報の共有や意志の共有ができるようになれば・・と思っています。

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