祝!苦節うん十年、ついに高野さんが講談社ノンフィクション賞を受賞!!
公開日:
:
つれづれ日記 編集者, 謎の独立国家ソマリランド, 講談社, 講談社ノンフィクション賞, 高野秀行

内容も厚さもすごい、高野秀行『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』(本の雑誌社)。従来の高野本の面白さに加え、“役に立つ?”内容も満載。特に、ソマリアの海賊はどれくらい儲かるのか試算をした見積書は必見!
賞とは無縁のノンフィクション作家、自称“無冠の帝王”の高野秀行さんが、『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』(本の雑誌社)で第35回講談社ノンフィクション賞を受賞した。
講談社ノンフィクション賞に角幡唯介・高野秀行さん(朝日新聞)
しかも、後輩である角幡唯介さんの『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)と同時受賞で、今年の講談社ノンフィクション賞は、早稲田大学探検部が制覇したことになる。
無茶苦茶うれしい。
出会ったころは、賞歴どころか、“重版童貞”をこじらせ、書く本書く本、編集者、装丁家、デザイナー、イラストレーター、校正者など、制作関係者限定で大好評という、笑えない状態が続いていたけれど、『ワセダ三畳青春記』や『異国トーキョー漂流記』(ともに集英社文庫)がジワジワ売れ始め、あっという間に人気のノンフィクション作家になっていった。
この辺の右肩上がりの快進撃は、間近で見ていて本当に痛快だった。
そして、今回の受賞である。
惜しむらくは、この快進撃の一番最初のきっかけを作った、集英社の名編集者、“姐さん”こと、堀内倫子さんと一緒に祝えないことだと思う。
心の底から、高野さんの作品を愛し、高野さんの限りない筆力を信じて、時に厳しい赤字と、時に長い電話と、時に熱い文芸論(アルコール入り)を飛ばしながら、ずっとずっと作品に寄り添っていたのに、2009年、突如としてひとり旅立ってしまった。
姐さんと高野さんとのやりとりは、こちらに詳しいけれど、高野さんの作品と、高野秀行という人物を恋愛感情とは別の気持ちで、心底愛していたんだと思う。
高野さんが取材でトルコだったか、中東だったかへ出かけた時、姐さんから私の所へ何度も電話がかかってきた。内容は、その昔、私が編集した高野さんの『世界のシワに夢を見ろ!』の編集方針の問題点であったり、私の編集者としての課題だったり、単なる世間話だったりしたけれど、結局は、「早く高野さんに日本に帰ってきてもらって、次の本を書いて欲しい」という気持ちを抑えられず、縁のある人たちへ電話していたようだった。ちなみに、受話器の向こうでロックグラスの音が聞こえることから、高野さんと姐さんからの電話を“カランカラン電話”と呼んでいたことを付け加えておく。
天才編集者は死んだが、その編集魂と能力は愛した作家の腕に憑依し、以後の快進撃と、今回の受賞につながった。
姐さん、高野さんついにやったよ。
でも、姐さんなら「高野さん、まずはおめでとう。でもこれに安心してたらダメ。ソマリランドの続編はちゃんと書いてるの? 早く見せてちょうだい」くらいはいいそうな気がする。しかも、授賞式の会場で。。。
PR
関連記事
-
-
友あり便りあり、また嬉しからずや
親、親戚、同僚、友達、先輩後輩。 人にはいろんな知人がいて、いろんな付き合いがある。 人よりも
-
-
得意分野の違う人たちとつながる面白さ
昨日は痛飲してしまった。 スタートが5時半だったので、何とか電車のあるうちに解散できたものの、気
-
-
亡き友へ「復活」の響き
演奏会から数日後、実家から新聞の切り抜きが送られてきた。 長野県の地方紙、伊那毎日新聞に「復
-
-
自転車旅、本になりました。
と言っても、自分が書いたわけではない。 昨年の1〜2月、辺境作家の高野さんが訳あって自転車で東京〜
-
-
15年ぶりにコンクール出場
先日、久しぶりに吹奏楽のコンクールに出場した。 最後の参加が高校3年生だから、実に15年ぶ
-
-
自費出版で楽譜集や曲集本をつくりたい人に必要な、5つのステップ。やはりネックは○○○だった。
このブログにアクセスしてくる検索ワードのなかに「楽譜」や「著作権処理」「自費出版」といったキーワード
-
-
POCOYO(ぽこよ)イギリス発の大注目キャラ
以前書いたように我が家は民放が映りません。 (4/25「民放砂漠」参照) それでいつものようにチャン
-
-
ジューンブライドと、ミャンマーの「黒」デューサー
高校の同期、従兄弟、6月に入って結婚式が相次ぐ。 用事があって出席できなかったが、大学の後輩も10年
-
-
一見ムダなようでも、好きなことに没頭しておくと、後でいいかもよ……というお話
一件ムダかもしれないことが、ひょんなことで役に立つケースがあります。 特に、子どものころ好きだ
-
-
Wataru Kobayashi Profile English ver.
高校の同級生で、今、シカゴで映画監督をしている梶野純子さんの協力により、私のつたない英語バージョン