伝統芸能と五線譜
公開日:
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最終更新日:2012/05/25
今日のお仕事
先日、「村のお囃子を譜面にして下さい」というお仕事をいただきました。
演奏を録音した音とその映像もありますとのこと。
弊社にはピアノからギターはもちろん、ハードロックやヘビメタ、クラシックに和楽器…と、どんな音でも譜面にしてしまう「採譜職人」と呼ばれる方々がおりますので、「たぶん大丈夫だと思いますよ」とお受けしました。
はたして資料が届いてみると全部で6曲。茨城県は君島地方の「ひょっとこ」や「獅子舞」などのようです。曲も5分程度のものから10分近いものまで様々。早速曲を職人さんに割り振ってお願いしてみました。その数日後、会社に電話がかかってきます。
Aさん「小林さん、○○○と▲▲▲は拍がわかるんだけれど×××は何だかもうよく分かりません」
Bさん「●●●は爺さんの拍が…」
そこで改めてきちんと音源を聞いてみました。
締太鼓、胴長太鼓、金鉦(ちゃんちき)、笛というスタンダードな組み合わせ。笛の吹き手が3人それぞれひとりずつ。どうやらしきっているのは村のお囃子ご意見番とおぼわしきご老人です。
伝統芸能というのは、もともと譜面や教本といった類を使わず、先輩から後輩へ直接伝えられるいわゆる口伝という形で残っている場合がほとんどだと思うのですが、やはり若者の吹く笛は現代の音楽を聴いているためなのか、本人が意図していているいないにかかわらず、何かしらの「リズム感」を感じることができます。
しかし、ご意見番は違った・・・。
五線譜は「音程」と「リズム(拍)」を同時に効率よく表記することができるため、一般的に広く普及しました。しかしながら拍のない曲(リズム感のない曲)を表記するには、むりやり拍に当てはめてしまうか、極端な話、小節線をとってしまうしかありません。ご意見番の縦横無尽な太鼓さばきの前に五線譜も完敗。「南蛮文化敗れたり」です。
途方にくれた我々でしたが、職人さんの懸命な解析(?)により無事五線譜は完成。映像は立派なDVDとなって、楽譜とセットで先日送られてきました。
「拍がないのにどうやって残りのみんなは合わせているのか」
最後まで消えない謎は残ったままです。
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Comment
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うちのカミさんもそうだったけど、決まったリズムやビートに合わせる、または、それをキープすることは苦手なかわりに、「気」で緩急やノリを合わせることはすごくうまかった。
伝統音楽の人ってこうみたいよ。
合奏の出だしを合わせるのに、「セイ、ヤッ」って声かけるでしょ。
あれは「3、4、」って言ってるのと同じだけど、長唄の場合は
「ハッ、」としか言わない。
「4、」だけでなんで合わせられるの?と思うが、そこは
「ハッ、」の中にある「気」を感じて瞬間にノリを掴むんです。
合理体系では測れない部分ですね。
AGENT: DoCoMo/1.0/N503iS/c10
うーん知的だ。 渡さん、純さん先日は朝までおつきあいいただきありがとう。お二人別々にですが(笑)僕は朝まで三連ちゃんでした。