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クンサー死去

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


 韓国へ行っている間だったため知らなかったが、
「元・麻薬王」ことクンサーが死んだそうだ。
 私はクンサー本人に会ったことはないが、
私の二十代後半は常にクンサーの動向で生活のスケジュールが変わるくらい、
大きな存在だった。
 私は結局、クンサーと敵対するシャン人兄弟、さらには同じく敵対するワ人の側につき、
クンサーに共感をもったことは一度もないが、
彼の死に「一時代が終わった」という思いはたしかにする。
 クンサーはスケールのでかい「悪党」だった。
 国民党の残党に育ててもらいながら、その国民党軍の麻薬輸送を襲った。
 そこにラオス空軍が突っ込み、三者が入り乱れる激戦となった。
 のちに「シャン州独立」を謳い、「反政府ゲリラ」を結成。
 民族の英雄として民衆からあがめられたこともあった(写真1)。

 しかし、1996年1月、私がワ州にいるとき、突然政府に投降。
 武器を引き渡したが、その武器の凄さに政府軍兵士がぶっ飛び、
「オレたちより凄い軍備があるのにどうして投降するんだ?」と首をかしげたという話は
『ミャンマーの柳生一族』に書いたとおりである。(写真2)
 最初から政府と裏で通じていたのだろう。
 クンサーの時代は終わっても、ミャンマーはまだ「江戸時代」のままである。
 これからどうなるのか、それは誰にもわからない。

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Comment

  1. 穂積彩子 より:

    なんとなく、、、クンサー、馬渕、クンサーってどんな人。
    普通のおじさん。そう。うん。1つの時代は確実に終わりましたね。

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    • ハックは奴隷じゃなかったですね。すみません、間違いました。 https://t.co/S39LyxaidJ ReplyRetweetFavorite
    • 斎東さんはもっぱらネットやSNSを利用してルーマニア語を習い、「ひたすら現地で実践」という私の語学とは真逆に見えるが、そのやり方は手に取るようにわかる。ネットを通していながら、斎東さんも「現場主義」なんだと思う。 https://t.co/406lKPRFVW ReplyRetweetFavorite
    • 発売当初からずっと気になっていた話題作、斎東鉄腸著『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、ルーマニア語の小説家になった話』通称「千葉ルー」(左右社)をようやく読んだのだが、予想を上回る興奮と感動にとらえられた。言語と文学をこんな… https://t.co/CbvWvyPHWa ReplyRetweetFavorite
    • 私の誕生日までは待てないですよ笑 7月下旬に出ます。カレンダーは誰か作ってくれる人がいたらいいですね…。 https://t.co/1j0Y7psJYv ReplyRetweetFavorite
    • 『イラク水滸伝』の写真と図版の最終セレクト打ち合わせ、2時間ほどで終わる予定が、なんと10時間もかかってしまった!でもこれで相当いいものになったはず。 ReplyRetweetFavorite
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