誘拐は困る
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
アフリカ・中東の紛争地取材の超ベテラン、大津司郎さんに8年ぶりくらいで会う。
もう60歳くらいのはずだが、バリバリの現役だ。
前回ニュースゼロで放映された大津さんのソマリア取材特集は
現地のことがさっぱりわからない代物だったが、
「10分の特集では何も説明できから仕方ない」とのことだった。
それにしても、ソマリア潜入取材を行ったときは、ほんとうに怖かったという。
「弾に当たって死ぬのはしょうがないからいいんだよ。
絶対に嫌なのは誘拐。
日本政府に身代金を払ってもらったりしたら、もう自由な立場でものなんか言えない。
この仕事をやめるしかないよ。
スーパーでレジ打ちでもやるしかない。
それがいちばん怖かった」
フリージャーナリストの矜持を見せたあと、
大津さんはそれよりもっと熱心な口調で
「体調不良には高尾山の『気』とDHCの濃縮ウコンがいいよ!」と繰り返し、
渋谷の雑踏に消えていった。
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