『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます
公開日:
:
高野秀行の【非】日常模様
6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。
ふつう、文庫化といえば、単行本に「文庫あとがき」として後日談をちょっと付け加えた程度だが、
今回はちとちがう。
本書は単行本のとき、いわゆる「結論」的な文章をつけなかった。
ブータンを旅している中で、いきなりバサッと終わっている。
おかげで「尻切れトンボ」とか「何だかよくわからないまま終わっている」など、
多くの批判を受けた。ネットのレビューだけでなく、何人もの知人友人から直接お叱りを受けた。
友人知人は通常、ほめるか何も言わないかなので、これは極めて異例だ。
ネットのレビューにいたっては「著者のやる気が感じられない」「手抜き」「むりやり書籍化したのでは」とまで酷評されてしまった。
いや、やる気がないとか手抜きということはありえない。
私が本を書くというのは「義務」ではなく「欲望」のなせる技なので、絶対に手など抜かない。
性欲や食欲同様、欲望を満たすためには何でもやる。
ただ、今回は戦略として間違っていただけだ。
私はブータン紀行に関しては、あからさまな結論を述べず、スッと終わった方が読者に余韻を残すのではないかと思い、熟慮したうえでそうしたのだが、結果は「画竜点睛を欠く」となってしまったようだ。
なので、今回の文庫化にあたっては、本来単行本につけるべき「あとがき」もしくは「エピローグ」に類する文章を書き加えてこの旅を総括した。ブータン紀行は私の辺境ノンフィクション人生の大きな転換点だった、と。
そのうえで後日談も付け加えた。
もし単行本ですでに読まれた方、それから口コミやレビューで「終わり方がイマイチ」と聞いている方、
ぜひ文庫にトライしてみてください。
読後感は相当変わっていると思います。
関連記事
-
-
なぜか東金経由アフリカ行き
言い忘れていたが、出発は二日遅れて、今日になっていた。 ところが突然、千葉の東金に現地の事情をよく知
-
-
発売直前の本は売れるように見える
本の雑誌社へ赴き、できたての「アスクル」を見る。 一見ビジネス書風だが色合いがおかしい。 ブログに載
-
-
NHK「きょうのお料理」
立て続けに珍しいインタビューを二つ受けた。 一つは朝日新聞の受験生向けサイト。 テーマはパニック力
-
-
判断能力の急激な低下
うーん、参った。 内澤さんの話、何も問題なかったのか。 これでは私がただ赤っ恥をかいただけではない
- PREV :
- 室町クレージージャーニー
- NEXT :
- ソマリランドの歌姫、来日!