*

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

2016.06.21みらぶー

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。
ふつう、文庫化といえば、単行本に「文庫あとがき」として後日談をちょっと付け加えた程度だが、
今回はちとちがう。

本書は単行本のとき、いわゆる「結論」的な文章をつけなかった。
ブータンを旅している中で、いきなりバサッと終わっている。
おかげで「尻切れトンボ」とか「何だかよくわからないまま終わっている」など、
多くの批判を受けた。ネットのレビューだけでなく、何人もの知人友人から直接お叱りを受けた。
友人知人は通常、ほめるか何も言わないかなので、これは極めて異例だ。
ネットのレビューにいたっては「著者のやる気が感じられない」「手抜き」「むりやり書籍化したのでは」とまで酷評されてしまった。

いや、やる気がないとか手抜きということはありえない。
私が本を書くというのは「義務」ではなく「欲望」のなせる技なので、絶対に手など抜かない。
性欲や食欲同様、欲望を満たすためには何でもやる。
ただ、今回は戦略として間違っていただけだ。
私はブータン紀行に関しては、あからさまな結論を述べず、スッと終わった方が読者に余韻を残すのではないかと思い、熟慮したうえでそうしたのだが、結果は「画竜点睛を欠く」となってしまったようだ。

なので、今回の文庫化にあたっては、本来単行本につけるべき「あとがき」もしくは「エピローグ」に類する文章を書き加えてこの旅を総括した。ブータン紀行は私の辺境ノンフィクション人生の大きな転換点だった、と。
そのうえで後日談も付け加えた。

もし単行本ですでに読まれた方、それから口コミやレビューで「終わり方がイマイチ」と聞いている方、
ぜひ文庫にトライしてみてください。
読後感は相当変わっていると思います。

関連記事

2013年に読んだノンフィクション・ベストテン

毎年恒例となっている「今年読んだ本ベスト10」をやるのをすっかり忘れていた。 今急いでやります。

記事を読む

no image

歴史は水で割るべからず

ゲストハウスのそばのソイ(路地)で、カバーにムエタイのポスターをびっしり貼った屋台を見かけた。

記事を読む

no image

アジア未知動物紀行<第3弾>

「小説現代」(講談社)で不定期連載中の「アジア未知動物紀行」。 第1弾はベトナムの猿人フイハイ、そ

記事を読む

「ダ・ビンチ」2月号にてオードリー春日氏と対談

現在発売中の「ダ・ヴィンチ」2月号にて、オードリーの春日俊彰氏と対談している。 私はテレビ

記事を読む

no image

今年の目標、早くも破綻寸前

今年の目標は「できるだけ仕事をしない」。 もともと私はいろんなことを同時並行でできるタイプではない

記事を読む

no image

サッカーの合間に

井田徹治『生物多様性とは何か』(岩波新書)を読む。 新聞記者だけあって、著者はかなりよく整理して書

記事を読む

no image

また増刷

「異国トーキョー漂流記」(集英社文庫)の増刷が決まった。 これで三ヶ月連続で増刷だ。 運がよすぎるの

記事を読む

no image

骨と沈黙

年に一度のお楽しみ、本の雑誌増刊の「おすすめ文庫王国2009」で 佐藤多佳子が自分の文庫オールタ

記事を読む

no image

電話で追及される

ルワンダ人の友人、カレラから電話がかかってきた。 以前、私が環境NGOを手伝っていたとき、ルワンダの

記事を読む

no image

気仙沼産かじき

土曜日、スーパーに買いだしに行ったら、気仙沼産のかじきの切り身が売っていた。 しかも半額。 買ってき

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2026年2月
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    232425262728  
PAGE TOP ↑