音楽と、ミャンマーと、ウルトラセブン
公開日:
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最終更新日:2012/05/25
つれづれ日記
私が担当したリサイタルが文化庁芸術祭の大賞を受賞したことを祝って、知人たちが素敵な記念パーティーをひらいてくれた。
Photo by Goto Osamu
もともとコンサートやライブの企画、構成に関わりはじめたのは、ドレミ楽譜出版社で働いていた頃、手弁当でオアシスという尺八とギターのデュオのマネージャーみたいなことをしていたのがきっかけだった。
その後、バンドは小さいながらもいろんな人たちに応援され、CDを出したり、街のイベントやFM番組にでたり、全国ツアーにまわったりした。その中でファンになってくれたある社長はポケットマネーで自分の子会社のあるマレーシアへバンドを招聘し、現地のマスコミや業界関係者に渡りをつけて、イベントやライブを行うことができた。
クアラルンプールの空港に着いたら、そのまま国営テレビ局の公開収録現場へ直行なんていうこともあった。
また、あるバーのマスターは常連だったメンバーの心の聞き役として、普段は吐露できない悩みや思いに耳を傾け、同じく常連だった前述の社長とともに、何か「面白いことをやってみよう」と、徹夜明けの体でバンドが関わるイベントにも参加してくれた。
音楽には上手い下手はもちろんあるけれど、ある一定ラインから上は、人と人とのつながりだと思う。
ミュージシャンは宿命的に、どうしても演奏の出来不出来、ひいては上手い下手へ目ならぬ耳が行きがちだけれども、客席にいる大方の聴衆はもっと別なことを考えていて、上手い下手はその基準の中の一つでしかない。
ある人にとっては、「トークが面白くて好き」かもしれないし、別な人にとっては、「ステージに全く緊張感がなくてこっちもリラックスできるからいい」のかもしれない。
大事なポイントは、来ているお客さんが「それぞれの価値観で納得、満足する」ことであって、それは必ずしも上手い演奏とは限らないのだ。
永らく私は、そんな簡単なことにも気がつかずに、その手弁当をしこしこと続けていた。
今から5年前の夏。
それは、私が起業する約3ヶ月前の出来事だった。
前述の社長の友人に、ミャンマーの辺境地帯を専門とする旅行会社の社長がいた。
彼の会社の旅行は一風どころか二風も三風も変わっていて、ナガやチンと呼ばれる秘境地帯に、政府の許可をとりつけて海外からの旅行客をガイド付きで連れて行く。その現地の人々は、かつて部族同志で戦い首を狩る、いわゆる首狩り族だった人たちである。
その他にも、片道徒歩21日(往復45日以上)かかる辺境ツアーとか、彼の会社が掲げるトンデモツアーには枚挙に暇がないが、とにかく彼の協力を得て、ミャンマーの辺境地帯を切り口に、何かイベントをやろうということになったのだ。
「辺境」をキーワードに掲げた社長連合は、会場の予約やタイムスケジュール、チラシの作成からチケット発行、告知などなど、イベント開催にまつわる諸事務を私の方にふってきた。なぜなら、私には「ミャンマー辺境映像祭実行委員長」なる肩書きが勝手につけられていたためである。ちなみに、この2004年8月時点で、私はミャンマーへ一度も行ったことがなかった。
「実行委員長がミャンマーへ行ったことないんじゃ、やばくないすかね?、やっぱり」
そう控えめに聞いてみたが、社長連合は全く意に介さず、チラシの校正には「実行委員長:小林渡」と、赤字で書き加えられていた。
さて当日。
社長連合はあろうことか、ミャンマーをはじめ、世界中の辺境を愛してやまない某作家にアタックし、大田区の会場へ無理矢理連れてきた。
彼は「前日に電話があるまで本当にやるとは思ってなかったんだけど・・・」と、明らかに困惑気味だった。
映像祭と唱っているからには、本物の辺境の映像を流さなくてはいけない。
さすがに手広い社長連合は
「チン州ビクトリア山、戦後外国人初登頂!」とか
「ミャンマーの雪山」とか
「日本人カメラ初潜入、首狩りナガ族のお祭り」
「イラワジ川で漁師と共同で魚を捕る川イルカ」
などなど、目を引く映像を持ってきたが、どれも撮りっぱなしの生テープだった。
「渡さん、マックで編集できるよね」
前日の話である。
結局、ミャンマー専門のすご腕カメラマン氏のスライドショーのみ、本人が写真のセレクトと、順番、キャプションをきちんと書いてきてくれていたので、指示通りに並べて音楽を乗せるとしっかりとしたものができたが、後は時間との戦いの中で怒濤の如くストーリーを組み立て、気がつくと外ですずめが鳴いていた。(しかも「川イルカ」は間に合わず、リハーサルの時間を使って最後の編集作業をした。)
この映像祭に、社長連合はひとつ粋な仕掛けを施した。
件のバンドにイベントの音楽を演出してもらうことである。
かくして、映像のバックに流れるBGMは全面的に彼らの音楽となり、そして映像と映像の間にプレイバックする形で30分程度の短いライブを入れ込んだ。
さらに、映像終了後にも仕掛けを用意。
最後の演目が終わると、会場後ろにバーカウンターをオープンした。
ドリンクの仕切はもちろん、あのマスターである。
イスを片付け、立食用の円卓を並べると、中央にバーの常連さんであり、お店のデコレーションも担当するフラワーアーティストが、この日のためにつくってくれたオブジェ「辺境の花」を配置した。
チケットには社長連合の考えた集客のアイデアとして「ドリンク飲み放題」がでかでかと書かれていたため、私とマスターはドリンクの手配に奔走するワケだが、お店の周年祝いにからめてお酒屋さんからビールやワインをいただき、さらに私の前職日本盛からは冷酒の小瓶を1ケース送ってもらい何とか事なきを得た。
ガンガン減っていく生ビールのタンクとワインボトルに比例し、会場は辺境大好きなお客さんの熱気で包まれ、昨日まで半信半疑だった作家氏は熱心な辺境マニアに拘束されかかっている。
そのバックのスクリーンには、社長連合の最後の切り札である、「お供えの子犬の首が○り落とされ、子どもが嬉しそうに炙っている」ショッキングな映像が延々と流れていたが、みんなバラエティテレビでも観るようにビール片手で見つめていたのが忘れられない。
このミャンマー辺境映像祭は少しずつ姿を変えながら、去年ついに3回目を数えた。
3回目のゲストには、戦後まだ日本がミャンマーより貧しかったころ、ミャンマーの国費で日本からミャンマーの大学へ留学した女性が登場。彼女は後に外務省のビルマ担当になり、退職後は職員のビルマ語講師を務めておられるほどの方だ。
また、今まで3回続いた映像祭は、フタを開けてみるとそれなりに人が入って、関係者一同ほっと胸をなで下ろすのだが、当日の開演間際まで集客の悪あがきをする我々にとって、いつも顔を出してくれるありがたい「お客さん担当」の方々もいる。
すっかり前置きが長くなってしまったけれど、そのささやかなパーティーには、私の受賞につながるルーツとなったこの辺境イベントに関わった方々が参加してくださったのだ。
途中、マレーシアの友人やミュージシャンからお祝いのビデオメッセージが流れるというサプライズも用意されていた。
しかも、嫁や子も気軽に参加できるようにと、都心を避け、わざわざ調布を選んだという。
しかし、主催主である例のマレーシア社長から送られてきたメールで、調布になった理由がそれだけではないと知る。
彼の選んだ店は、彼の少年時代の憧れ、ウルトラセブンのアンヌ隊員がオーナーを務めるお店だったのである。。。
果たして、挨拶にいらしたアンヌ隊員こと、ひし美ゆり子さんを前に、祝賀パーティーはどこへやら。一瞬にして大撮影大会へと変わってしまったのである・・・。
憧れのアンヌ隊員を横に、喜びを隠しきれない主催主
Photo by Goto Osamu
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謹賀新年。うわあ、いいなあ〜。私も「記念撮影」したい〜。今年もどうぞヨロシクです。
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先日はお疲れ様でした。
渡さんと飲んで(しかもあれだけ酒があって)、
あんなに素面だったのは初めてだなー(笑)。
おかげさまで問題なく終了しましたね。
よかったよかった。
しかし、この社長連合って文章を読むと極悪人ですね!
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ご無沙汰してます!スライド上映会近くなら行きたいんですが!!!
でも、風習の違いって判ってはいても子犬の首をあぶって喜ぶのは見るのはつらいですねーーーーー。
ところで・・うちの会社、昨年末から円谷プロの四国エリアでのキャラクターショー代理店になりました!
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>こうざんさん
今年もよろしくお願いいたします〜。
アンヌ隊員のかわいさにびっくり。
しかもご自宅が我が家のそばで二度びっくりでしたー。
>アジケトさん
主催どうもありがとうございました。
しっかりしていたのはお家までで、
翌朝はしっかり二日酔い、起きたらお昼でした。。。
社長連合がひねり出す、怒濤の無茶ぶり波状攻撃があって
今の私があるのかもしれません(笑)。
>CKC岡本さん
ご無沙汰していますー。
パーティーの席上で久しぶりに当時の映像を流してみましたが
編集の稚拙云々はさておき、当時の熱気や、辺境の迫力はそのまま健在でした。
四国出張やりますか?>アジケトさん(笑)。
おおお、円谷プロのショー代理店ですか!!
すごいですね!!!
往年のウルトラマン(セブンやタロウ)とかも取りあげたりするのでしょうか。