*

2012年の日本の音楽ソフト市場が世界一になっても、素直に喜べない3つの理由

今日の日経新聞に、2012年の音楽ソフト市場で日本の売上高が約43億ドル(約4200億円)を記録し、アメリカを抜いて世界一になったという記事がありました。

音楽ソフト市場、日本が米抜く 12年世界最大に(日本経済新聞)

お、久しぶりに明るい話か!と思って読んでみると、そうではありませんでした。

米国や英国など、音楽市場の規模で上位5カ国に入った日本以外の国の売り上げがいずれも縮小したのに対し、日本は前年比4.0%増で、4年ぶりに拡大に転じた。

ここだけ読むと、あたかも日本ひとり勝ちのような印象を受けますが、次の文章が日本の音楽業界が抱えている深刻さを浮き彫りにしています。

世界の音楽市場でCDやレコードなど、ダウンロード以外の音楽ソフトが占める割合は57%だったが、日本は80%と突出して高かった。

 

日本の音楽ソフトの売上高がアメリカを抜いて世界一となったのは、CDの売上がほかの国に比べて特出して高かったために、数値を押し上げていたのです。

しかし、世界ではすでにCDはレガシーメディアになりつつあります(フロッピーディスクやMDと同じ扱い!)。

それを裏付けるような数字が、記事のもとになったIFPI(国際レコード産業連盟)の統計から出ています。

二次使用料を除くと、アメリカ約41億ドルに対し、日本は約43億ドルで世界の音楽売上首位。ただし、CD(パッケージ)の売上は80%にもなり、有料音楽配信売上は17%と20か国中最下位。

日本のレコード産業2013年度版PDFより

 

この表は前述の統計をもとに、一般社団法人日本レコード協会がまとめたものです。

これを見ると、音楽ソフトの売上全体では依然アメリカが首位で、Musicman-NETの記事には、この差が「音楽の二次利用に関する権利収入」となっています。

IFPI(国際レコード産業連盟)、2012年の世界音楽売上を公表(Musicman-NET)

ざっとアメリカが3億、日本が1億ほどの権利収入を上げており、これを差し引くことで日本は音楽ソフトの売上世界一を果たしたのですが、気になるのは上記の表の右側、収入シェアの項目です。

日経新聞の記事にもあるよう、日本の売上に占めるCD(パッケージ売上)のシェアは80%!!

これはリストアップされている20か国中、ぶっちぎりのトップです。逆に言えば、世界の音楽ソフトのメインストリームは、すでにCDから移りつつあるということです。

パッケージ売上の右にある、有料音楽配信売上のパーセンテージは、それを如実に物語っています。

青丸で囲んだところを見てください。

世界首位のアメリカでは、有料音楽配信の売上が58%にものぼり、すでにパッケージよりも配信の売上が上回っているのです!

3位のイギリスも39%。そのほか、各国のきなみ20%を超えていて、10%台はドイツ19%、ベルギー18%、そして日本の3国だけ。

しかも日本は17%と、20国中最下位です。

世界的に見てもネットの回線速度はトップクラスにあるのにこの数字。

アップルの音楽配信に最後まで抵抗していたり、昨今の違法ダウンロード禁止法の成立や、著作権保護(といっても、権利者の利権を拡大すること)に血道をあげる関係者の取り組みなど、音楽市場でもきっちりガラパゴス化が顕在化しているな……というのが個人的な思いです。

また、世界に目をやれば、月々定額を支払うことで音楽が聴き放題になるspotify(スポッティファイ)の台頭も気に留める必要があるでしょう。

定額制の視聴システムの普及は、間違いなく音楽市場の売上に影響をおよぼしているはずです。

 

さて、日本を世界一に導いた、売上の8割を占める肝心なパッケージはというと……

日本レコード協会発表の2012年、ミリオンセラー認定CD。有名アーティストのベスト盤とアイドルグループが独占している。

これはこれで、やはり深刻なんじゃないかなと思うわけです。

 

A●Bや、ベスト盤の功罪についてはいろんな方にお任せするとして、上位5か国中、日本だけが唯一対前年比がプラスになっているという状況であっても、あまり明るくなれない理由は次の3つ。

1)CDがレガシーメディア化しているのに、音楽配信の売上がカバーできていない

2)音楽配信の潮流に乗っておらず、市場がガラパゴス化する危険性

3)売上を支えているCDが、「音楽」そのものというより「収集品」となっている

 

それにしても、インドの有料音楽配信売上が60%、中国にいたっては82%もあるというのは衝撃的な数字です。

ただし、どちらも海賊版天国な国なので、正確に捕捉のできる有料配信がシェアを伸ばしているとも考えられますが。。。

PR

関連記事

一流と呼ばれる人たちが心がける、たった3つの行動パターン

先週末は浪曲イベントでどっぷり浪曲に浸かって、日曜日はアコギの神様、石川鷹彦さんのスタジオで対談取材

記事を読む

止まらない音楽のデジタル化と、出版楽譜業界のジレンマについて思う。

ヤマハが開発したアプリ「Chord Tracker」についてFacebookに投稿したところ、いろん

記事を読む

ダッシュボードに「Service」の文字が! その他、Perthのセットアップに必要な、ProjectやEmployeesなども表示された。

WordPressのテーマ「Perth」のセットアップで困ったこと①「サービスを入力してください」ってどこによ!

ここ数年の懸案事項だった会社のホームページを、ついに先日リニューアルしました。 パソコンだけで

記事を読む

自分は今、人生の折り返し地点にいるのかもしれない。

今年に入って、お世話になった人が次々鬼籍へと入られていく。いずれも、子どもの頃から、または、大学時

記事を読む

no image

幸せの尺度について考えてみる

今回は少し仕事から離れて、このところ頭の中をグルグルを回っていることを、ざっと文字にしてみたいと思い

記事を読む

no image

名物ブログのウラに編集の技あり!

新年度の初日、Facebookのウォールに飛び込んできた永江一石さんのリンクを一目見て、今期の日々の

記事を読む

こそっと玉音も入ってる!シンセをバックに尺八と箏で演奏するレディー・ガガ『Telephone』の面白さ

面白い動画が飛び込んできました。 すでにロケットニュースでも取り上げられているので、目

記事を読む

no image

「すごい人たち」に共通すること

先日、丸1日かけて聞き取り取材をしていて、相手からポロっと出てきた言葉が頭の中でグルグルとリフレイン

記事を読む

「エクセル4難民」がたどり着いた、2017年のバーチカル手帳はこれだ!

毎年この時期になると、書店や文房具店の手帳売り場は、来年の手帳を求める人でにぎやかです。 定番

記事を読む

伊藤檀「自分を開く技術」でサッカー本大賞2017の優秀作品賞、読者賞を受賞しました

2000年に楽譜の出版社に転職し、そこから私の編集者人生はスタートしました。 独立後は、楽譜か

記事を読む

PR

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

PR

小林家と居倉家の対面について書かれた福島民友新聞社の記事。
小林家のファミリーヒストリー 〜信州から会津に行ったご先祖様〜

NHKに「ファミリーヒストリー」という人気番組がある。 毎回、ひ

出版不況の中、デジタルオンデマンド印刷の登場は、業界をどう変えるのか?
出版不況の中、デジタルオンデマンド印刷の普及で出版界はどう変わる?

このところ、本の雑誌社の杉江さんと「おとなの社会科見学」が続いている。

レンガ状に配置された「Project」。今回、会社のサービスを紹介する場所に使いました。
WPテーマ「Perth」の設定で困ったこと③プロジェクトが表示されない!

先日、会社のホームページをリニューアルしました。Wordpressの「

WPテーマ「Perth」の設定で困ったこと②アイコンが表示されない!

会社のホームページのリニューアルで、Wordpressの「Perth」

ダッシュボードに「Service」の文字が! その他、Perthのセットアップに必要な、ProjectやEmployeesなども表示された。
WordPressのテーマ「Perth」のセットアップで困ったこと①「サービスを入力してください」ってどこによ!

ここ数年の懸案事項だった会社のホームページを、ついに先日リニューアルし

→もっと見る

  • 2019年12月
    « 12月    
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031  
PAGE TOP ↑