2012年の日本の音楽ソフト市場が世界一になっても、素直に喜べない3つの理由
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最終更新日:2018/03/02
あれこれ思考してみる CD, IFPI, 国際レコード産業連盟, 日本レコード協会, 音楽, 音楽ソフト
今日の日経新聞に、2012年の音楽ソフト市場で日本の売上高が約43億ドル(約4200億円)を記録し、アメリカを抜いて世界一になったという記事がありました。
音楽ソフト市場、日本が米抜く 12年世界最大に(日本経済新聞)
お、久しぶりに明るい話か!と思って読んでみると、そうではありませんでした。
米国や英国など、音楽市場の規模で上位5カ国に入った日本以外の国の売り上げがいずれも縮小したのに対し、日本は前年比4.0%増で、4年ぶりに拡大に転じた。
ここだけ読むと、あたかも日本ひとり勝ちのような印象を受けますが、次の文章が日本の音楽業界が抱えている深刻さを浮き彫りにしています。
世界の音楽市場でCDやレコードなど、ダウンロード以外の音楽ソフトが占める割合は57%だったが、日本は80%と突出して高かった。
日本の音楽ソフトの売上高がアメリカを抜いて世界一となったのは、CDの売上がほかの国に比べて特出して高かったために、数値を押し上げていたのです。
しかし、世界ではすでにCDはレガシーメディアになりつつあります(フロッピーディスクやMDと同じ扱い!)。
それを裏付けるような数字が、記事のもとになったIFPI(国際レコード産業連盟)の統計から出ています。
この表は前述の統計をもとに、一般社団法人日本レコード協会がまとめたものです。
これを見ると、音楽ソフトの売上全体では依然アメリカが首位で、Musicman-NETの記事には、この差が「音楽の二次利用に関する権利収入」となっています。
IFPI(国際レコード産業連盟)、2012年の世界音楽売上を公表(Musicman-NET)
ざっとアメリカが3億、日本が1億ほどの権利収入を上げており、これを差し引くことで日本は音楽ソフトの売上世界一を果たしたのですが、気になるのは上記の表の右側、収入シェアの項目です。
日経新聞の記事にもあるよう、日本の売上に占めるCD(パッケージ売上)のシェアは80%!!
これはリストアップされている20か国中、ぶっちぎりのトップです。逆に言えば、世界の音楽ソフトのメインストリームは、すでにCDから移りつつあるということです。
パッケージ売上の右にある、有料音楽配信売上のパーセンテージは、それを如実に物語っています。
青丸で囲んだところを見てください。
世界首位のアメリカでは、有料音楽配信の売上が58%にものぼり、すでにパッケージよりも配信の売上が上回っているのです!
3位のイギリスも39%。そのほか、各国のきなみ20%を超えていて、10%台はドイツ19%、ベルギー18%、そして日本の3国だけ。
しかも日本は17%と、20国中最下位です。
世界的に見てもネットの回線速度はトップクラスにあるのにこの数字。
アップルの音楽配信に最後まで抵抗していたり、昨今の違法ダウンロード禁止法の成立や、著作権保護(といっても、権利者の利権を拡大すること)に血道をあげる関係者の取り組みなど、音楽市場でもきっちりガラパゴス化が顕在化しているな……というのが個人的な思いです。
また、世界に目をやれば、月々定額を支払うことで音楽が聴き放題になるspotify(スポッティファイ)の台頭も気に留める必要があるでしょう。
定額制の視聴システムの普及は、間違いなく音楽市場の売上に影響をおよぼしているはずです。
さて、日本を世界一に導いた、売上の8割を占める肝心なパッケージはというと……
これはこれで、やはり深刻なんじゃないかなと思うわけです。
A●Bや、ベスト盤の功罪についてはいろんな方にお任せするとして、上位5か国中、日本だけが唯一対前年比がプラスになっているという状況であっても、あまり明るくなれない理由は次の3つ。
1)CDがレガシーメディア化しているのに、音楽配信の売上がカバーできていない
2)音楽配信の潮流に乗っておらず、市場がガラパゴス化する危険性
3)売上を支えているCDが、「音楽」そのものというより「収集品」となっている
それにしても、インドの有料音楽配信売上が60%、中国にいたっては82%もあるというのは衝撃的な数字です。
ただし、どちらも海賊版天国な国なので、正確に捕捉のできる有料配信がシェアを伸ばしているとも考えられますが。。。
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