辺境から天使の歌声
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最終更新日:2012/05/25
今日のお仕事
当ブログでもご紹介の通り、去る9月30日、大田区の池上会館にて「第二回ミャンマー辺境映像祭」が開催された。映像コンテンツはそれぞれ素人の撮影とは言うものの、ナガやチンといった被写体は全て辺境そのものであり、些細なブレや意外な構図がかえって見る人々にミャンマー辺境地帯のリアリティーを伝えていたように思う。中でも元東京外語大ビルマ語科講師、土橋泰子先生の『50年前のミャンマー』は圧巻で、当日ミャンマーから来日したルーインさんや、会場に集まったミャンマーの若者から「この話は私のおばあさんから聞いたことがあります」といった反響が出るほど。大変貴重な第一級の史料を日本の女性が持っていることに驚くと共に、ぜひ「50年前のミャンマー」を出版化なり、展示企画なりでもっと沢山の人々に見て頂きたいと感じた。
全5演目が終わり、司会が最後のメッセージを伝えようととしたところ、映像祭の中心人物である太郎さんが何やら英語で話している。しばらくすると、舞台に一人の女性がすくっと立って静かに歌い始めた。繊細で素朴、細いけれど芯のあるそんな彼女の歌は、トンクーナガ族が昔から歌う伝統的な歌であった。
ナガの歌は同じフレーズを何度も何度もリピートするという様式をとっていることが多く、彼女の歌も同様であった。4分の2が1小節と4分の4が3小節からなる変則な4小節を延々ループし、歌は2拍目(4分の4のアーフタクト)から歌い始める。歌い終わって次の歌い出しまでの1拍の休符が何ともいえない叙情感を引き立てるのだ。残念ながら私は専門家ではないので、どういったメッセージを歌い、どういった背景で歌が出来ているのかについては分からないのだが、聴衆全体が静かにそして満ち足りた気持ちで聴き入っていたことだけははっきりしていた。トンクーナガ族で日本に来たことのある人はおそらく彼女が初めてであろう。
日本の印象を「人が多い」「賑やか」と語った遙か異国のプリンセスは淡々と歌を歌い終え、聴く者全ての心を遠い辺境の丘陵へと誘っていったのだった。
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