*

こそっと玉音も入ってる!シンセをバックに尺八と箏で演奏するレディー・ガガ『Telephone』の面白さ

面白い動画が飛び込んできました。

すでにロケットニュースでも取り上げられているので、目にされた方も多いと思います。

日本伝統楽器で演奏したレディー・ガガ『Telephone』に世界がシビれる! 海外の声「これ最高!」「原曲より好き」(ロケットニュース24)

 

海外からの称賛の声など、ネットユーザーからの好意的なコメントが寄せられているのですが、ここでは和洋、両方の音楽、楽器に関わった人間として、少し考察してみたいと思います。

この動画を演奏しているのは、都山流の尺八演奏家、石倉光山(いしくら・こうざん)さんが率いる光山組です。箏(こと)は阪元沙有理さん。

※ことは、箏や琴と書きますが、ここでは箏で統一します。

動画では、レディー・ガガのオリジナル『Telephone』のイントロ部分、シンセのハープで刻まれるアルペジオを箏で、続く歌メロを尺八が受け持ちます。

キーは原キー通り、Fm。

尺八は1尺5寸(F管)で吹いています。1尺3寸(G管)の7孔があれば、中メリがない分楽かもしれません。

箏は1の絃をFから順番にキー通り♭4つで並べているように見えますが、未確認です。

さて、この和楽器版『Telephone』、パッと聞いて私もいいね!と思ったのですが、その秘密がいくつかあるので紹介したいと思います。

(あくまで私の主観ベースなのでお許しを)

 

1)和楽器を得意な仕事に特化させている

和楽器の音の特性を言葉で表すと、よく言えば個性的で印象的な音、悪く言えば他の音と混ざりにくく、扱いにくい音です。

さらに、日本独自の音階で育まれてきた楽器のため、いわゆる西洋の音楽を演奏する際に必要な音階を出すのはあまり得意とは言えません。どうしても出しやすい(弾きやすい)音と、出にくい(弾きにくい)音があります。

しかし、調絃や管と運指の選択によって、それぞれの楽器が伸び伸び演奏できるフレーズにはまっており、イントロの箏しかり、歌メロの尺八しかり、個性的な音がより引き立つようになっています。

リズムやハーモニーなど、和楽器があまり得意でない要素をシンセに任せたことで、より得意な部分に特化できているともいえます。

 

2)バックをシンセに任せてオリジナルのグルーブ感を大切にしている

和楽器で有名な曲をカバーする際、気をつけないといけないのが、曲調です。

特に、和楽器のみでアレンジしようとすると、ゆったりとした曲はともかく、ビート感のある曲では、割りふる楽器が三味線、17絃(低音箏)和太鼓などしかないため、リズムやハーモニーを忠実に再現するのは困難です。

ゆったりとしたアコースティックバージョンのアレンジであれば成立しても、オリジナルのようなダンス・ビートをそのまま和太鼓などで再現しようとすると、困難を通り越して、滑稽な方向に行きかねません。。。

この動画では、その辺をバサッと割りきって、オリジナル同様、シンセメインのダンス・ビートにしています。

シンセでがっつりと作り込んだグルーブにすることで、聞き覚えのあるオリジナルの雰囲気はそのまま、なおかつ耳に新しい和楽器が飛び込んでくるという、聴き手に受け入れられやすい音環境になっているのです。

それもそのはず、アレンジを手がけたのは、アンジェラ・アキや、クリスタル・ケイ、RIP SLYMEなどを手がける河野伸さん。奄美出身の唄者、中孝介のアレンジも彼によるものなので、和楽器との絶妙な距離感もうなずけます。

 

3)和楽器の特殊奏法もこそっと入れている

では、シンセの上でオリジナルに忠実に演奏しつづけているのか…といえば、そんなことはなく、例えば1分42秒でこそっと玉音(たばね/たまね のどちんこを振るわせて細かく音を刻む尺八の奏法、いわゆるフラッター)がでてきたり、3分04秒の間奏部分でコロコロ(下側の2つの穴を交互に開け閉めすることで、文字どおりコロコロという細かい音が出る尺八の奏法)が出ていたりします。

その他、箏、尺八ともに、その道で続けてきた人が持っているテクニックがこそっと(ときどき大胆に)聞こえてきて、その辺りも、和っぽい音として海外のネットユーザーの心に刺さっているのかもしれません。

 

4)ダンサーを入れることで映像に「動」の要素を入れている

和楽器はもともと、座敷などで座って演奏する楽器だったため、演奏中の動きはあまり大きくありません。

約4分間のこの動画、ずっと着物と紋付き袴の男女が、緋毛せんの上で座って演奏していたら、ここまで反響を呼ぶことはなかったでしょう。

なんといっても、ガガ様の曲ですし、おどらにゃ損損といった具合で、ダンサーさんも登場しています。

しかも2分17秒からは光山さんも参加し、立ちながら吹いていたのを途中でやめ、最後は尺八も完全に置いて、ダンサーさんと一緒になって踊っています(笑)。

すばらしい。

 

というわけで、レディー・ガガの『Telephone』の和楽器版、おもしろさの秘密でした。こういった動画が他にも出てくると面白くていいんだけどなー。

続編を待ちたいと思います。

 

レディー・ガガのオリジナルはこちら。


PR

関連記事

no image

亡き友へ「復活」の響き

   演奏会から数日後、実家から新聞の切り抜きが送られてきた。  長野県の地方紙、伊那毎日新聞に「復

記事を読む

no image

第2回専大三曲祭り演奏記録mp3

 内輪向けの業務連絡記事です。  第2回専大三曲祭りの音源編集が終わりました。  別段変わったことを

記事を読む

no image

本とテレビ

 昨日は、趣味悠々「石川鷹彦のもう一度はじめよう!フォークギター再入門」の第2回目放送日。  裏番組

記事を読む

no image

終戦インパクトー価値観の激変を越えて

 アメリカで初の黒人大統領が誕生した。  どうしょうもない人たちがいる反面、ちゃんとした人たちも同じ

記事を読む

レンガ状に配置された「Project」。今回、会社のサービスを紹介する場所に使いました。

WPテーマ「Perth」の設定で困ったこと③プロジェクトが表示されない!

先日、会社のホームページをリニューアルしました。Wordpressの「Perth」というテーマを選ん

記事を読む

デジタル化で起こる「紙の本」の行方。東京国際ブックフェアの基調講演を聴いて、電子書籍について思うこと。

一年も半年が経ち、7月上旬の恒例イベント、東京国際ブックフェアの季節がやってきました。 今年の

記事を読む

no image

つい、作ってしまった〜イチゴのショートケーキ

 先日、ツイッターで紹介した 「@nifty:デイリーポータルZ:プロに教わる超美味しい家ケーキのコ

記事を読む

no image

本厚木の湯麺

今日は打ち合わせのため、本厚木にあるクライアントをたずねました。 ひょんなことから、弊社のデザイン

記事を読む

no image

またハマった…。韓国大河ドラマ

 昨年末、突如盛り上がり、にわかに消えた「チャングム」マイブーム。  数か月の小康状態を経て、再び韓

記事を読む

no image

明けませんが、おめでとうございます。

はやいもので2012年がはじまり、もう13日目です。 そう、今日は13日の金曜日です。 年末より取り

記事を読む

PR

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

PR

2020年1月21日(火)@赤羽/新宿二丁目ママ歴27年、涼ママの歌とトークと焼肉ホルモンde笑ってナイト、大盛況でした。

 久しぶりのイベント復帰、どんなことになるだろう……と思いつつ、フタ

2020年1月21日(火)@赤羽/新宿二丁目ママ歴27年、涼ママの歌とトークと焼肉ホルモンde笑ってナイトをプロデュースします。

 あっという間に2019年が過ぎ去り、2020年入り。 明けましてお

小林家と居倉家の対面について書かれた福島民友新聞社の記事。
小林家のファミリーヒストリー 〜信州から会津に行ったご先祖様〜

NHKに「ファミリーヒストリー」という人気番組がある。 毎回、ひ

出版不況の中、デジタルオンデマンド印刷の登場は、業界をどう変えるのか?
出版不況の中、デジタルオンデマンド印刷の普及で出版界はどう変わる?

このところ、本の雑誌社の杉江さんと「おとなの社会科見学」が続いている。

レンガ状に配置された「Project」。今回、会社のサービスを紹介する場所に使いました。
WPテーマ「Perth」の設定で困ったこと③プロジェクトが表示されない!

先日、会社のホームページをリニューアルしました。Wordpressの「

→もっと見る

  • 2024年4月
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑