上野動物園ゴリラ秘話(2)
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最終更新日:2012/05/28
辺境動物記
ゴリラ”ブルブル”のテレビ観賞記録はつづく。
「野生もの」に引き続き、飼育係が見せたのはプロ野球である。
巨人対中日。
昭和46年といえば、巨人のV9時代で、王や長嶋が活躍していた頃だ。
そして、当時、中日のエースは星野仙一(現阪神SD)だったはずだ。
ブルブルは「星野VS王、長嶋」という、今のファンにとっては「垂涎の対決」をリアルタイムで目撃していた可能性が高い。
ブルブルの反応はどうだったか?
飼育日記には次のように書かれている。
「始まって五分ほどは、画面を見ていたが、すぐに飽きてエサを食べ始める。ホームランで歓声があがると画面を振り向くが、すぐエサに戻ってしまう。野球はルールがわからないとおもしろくないらしい」
たしかに野球はルールが複雑でわかりにくい。アフリカや東南アジアで野球の説明をするのは誠に骨が折れる…。
って、そういう問題じゃないだろ!とツッコミを入れたくなるね。
それにブルブルの反応は、必ずしも野球嫌いとは限らない。
飲み屋ではよく見られる光景だ。
酒を飲みながらガヤガヤとしゃべっているおっちゃんたちが、どっと歓声があがったときだけ、フッとテレビのナイター中継に目をやり、また酒に戻る。それに酷似している。 私なども、特に巨人が序盤から0−7で負けているときなどに、よくそういう反応をする。
この辺からもうマンガの「クロマティ高校」(少年マガジン連載。不良(ワル)の巣窟である高校にゴリラがクラスメートとして混ざっている)みたいな、非常識な展開になっていく。
飼育係の個人的趣味か上野動物園の総意かわからないが、次から次へとゴリラに変なものを見せる。
野球の次は、プロレスとキックボクシングを見せた。
さて、ブルブルの反応は?
(つづく)
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