中国40年の狂気
公開日:
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
また外出。
町のあちこちで運動会の練習をしている。
「フレー、フレー、赤組!」なんて今でも言ってるんだなあと
ちょっと感慨に浸る。
浸るのはいいが、この「フレー」というのは一体何なのだろう。
「旗を振れ」が語源なのか?
でも旗を振るにしても、応援のために旗を振るわけで、
旗振りを応援するわけじゃない。
…そんなことを考えているうちに電車を一駅乗り過ごす。
☆ ☆ ☆
余華『兄弟』(上下巻、文藝春秋)を読了。
むちゃくちゃ面白かった。
文革から現在まで、一貫して狂気が渦巻く中国を描いているが、
読み心地はガルシア=マルケス『百年の孤独』にそっくり。
ガルシア=マルケスはラテンアメリカの現実を物語化したのだが、
人が空を飛んで消えたり、雨が何年も降り続いたりという
ファンタジーを盛り込んでいる。
でも『兄弟』は突拍子もないが、全部中国で起きても不思議ではない話ばかり。
中国の現実はラテンアメリカを凌駕している。
この本は「ノーベル賞候補作家の作品にしてはあまりに下品だ」と中国・海外で批判されているらしいが、
まあ、無理もない。
「くそ」と「処女膜」という単語がこんなに頻発する小説はないもんな。
下品といえば、主人公のあまりの下品もが中国で批判されているらしいが、
キレのいい罵詈雑言も読みどころの一つ。
罵詈雑言で中国人にかなう者はいない。
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