*

さらば「増刷童貞」!?

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

 自慢ではないが、私は「増刷童貞」だ。
 これまで書いた本は8冊。さらに、文庫化された本が3冊。さらに、英語に翻訳された本が1冊。さらにさらに私が翻訳した本が2冊。
 つまり、私は延べ14冊出版しているのだが、いまだ増刷されたことがない。
 かなりすごい記録だ。
 ふつう、14冊も出せば、1つくらい増刷されるだろう。
 逆にいえば、まったく増刷されないのに14冊も出しているというのが不思議だ。ふつうなら、その前に出版界から淘汰されている。
 まるで、毎年二桁敗北を喫し続けていた、かつてのロッテの小宮山みたいだ。
 しかし、今度の「怪しいシンドバッド」ではついにその恐ろしい呪い?から解き放たれ、一人前の「男」になれるのではないかという期待がある(毎回あるけど)。
 昨日もその気配を感じた。
 辺境とは何の関係もない雑誌の仕事で、航空力学を専攻する筑波大学名誉教授に取材を申し込んだところ、「実はそれは私の専門ではありません」という丁重なお断りメールが来た。
 しかし、驚いたのはそのメールの最後。
「追伸:貴名についてはよく存じ上げております。幻獣ムベンベを追え、巨流アマゾンを遡れ、ともに書棚にあります。楽しく読ませていただきました。」
 な、なぜ、航空力学のエライ先生がそんなもん、読んでるのだ?
 「高野秀行」は日本の先端科学界に静かに浸透しているらしい。
集英社の編集者によれば、「怪しいシンドバッド」の売り上げは、「好調な立ち上がりを見せています」とのこと。
すごい!
 まだ発売されて数日だからなんともいえないけど、うちの投手陣、いや私の本はこれまで立ち上がりだろうが、中継ぎだろうが、抑えの切り札だろうが(何の話だ?)、「売り上げ好調」と言われたことは一度もないので、けっこう嬉しい。
 また、別の集英社筋の情報では、「京都のキオスクで5冊置かれていたのを目撃」とのこと。
 キオスク? 5冊?
 これもすごいぞ。キオスクの本は、内田康夫か西村京太郎でなければいけないという決まりがあるんじゃなかったっけ?
 「高野秀行」は京都にも静かに浸透しているらしい。
増刷童貞を破る日は刻一刻と近づいている…。

関連記事

no image

ツチノコ!?の正体

昨日の画像はコメントしてくれた方の指摘どおり、フォトショップで加工がされていた。 もともとの画像は

記事を読む

no image

ベトナムの猿人

紆余曲折の結果、ミャンマー行きは取り止めになった。 最近、ほんとについていない。 その代わり同じ時期

記事を読む

no image

月刊日本語

日本語教師やそれを目指す人向けの雑誌「月刊日本語」(アルク)のインタビューを受ける。 担当の編集者

記事を読む

no image

新刊ラマダン

「在庫一掃読書では本は減らない」という指摘を友人から受けた。 なるほど、それもそうだのだけど、 新

記事を読む

no image

クリント・イーストウッドとモン族

一年ぶりにTSUTAYAでDVDを借りて、観た。 ウチザワ副部長がかつてブログで絶賛していたクリン

記事を読む

no image

名著復刊!

知らなかったが、本屋大賞では現在絶版になっている本の復刊も訴えているらしい。 それに応え、集英社文庫

記事を読む

no image

ハルキ風異国トーキョー

『異国トーキョー漂流記』(集英社文庫)の表紙を変えることになった。 あ、いや、何か問題があったわけじ

記事を読む

no image

エンタメ・ノンフ座談会

火曜日、『本の雑誌』の特集で座談会に参加。 テーマは「緊急座談会 エンタメ・ノンフの棚を作れ」。 私

記事を読む

no image

V字に向けて

後手後手になってしまっているが、2月20日ジュンク堂書店での 「エンタメノンフ三銃士トークショー」は

記事を読む

黒豆納豆のアボガド・サラダ

今日届いた納豆セットのうち、たった一つだけ入っていた黒豆納豆「光黒」を使ってさっそく料理。

記事を読む

Comment

  1. NONO より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
    大丈夫、ダイジョブ!
    高野君は知る人ぞ知る、判るヒトには判る、
    稀有な作家なのだ。
    編集者の評判もいいと聞く。
    今はあまり売れなくても、死後には、きっと評価される。
    そんなスタンスの長い作家なのだ。
    もしかしたら100年後くらいに新札の顔になってるやもしれん。
    子孫にはきっと印税を残せるから、
    今はとにかく面白いものを沢山書いてください。

  2. 小林 純 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.17; Mac_PowerPC)
    大いなる大器と存じ上げます。
    8月の辺境映像祭以来、大ファンになってます。
    いろいろあって、全く音がうかんでこなくなっていた僕を
    救ってくれたのは、バンドのメンバー、スタッフそして
    高野さんの本でした。失いかけていた大切な何かを補給して
    もらいました。
    きっと高野さんは、一旦、売れ始めたらでかいですよ。
    売れましょうよ。高野さんもうちのバンドも。
    いやになるほど売れて、ほんとにいやになったら、売るの
    やめればいいんだし。
    高野さんの本、僕には大切なものです。うまく言えないけど。

  3. BUFF より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    『怪しいシンドバッド』、読了しました。
    まだ2冊しか読んでないのですが、高野さんの本はもっとたくさんの人に読まれてもおかしくないと思います。
    潜在的な読者、出会いさえすれば面白く読んでくれる読者は、たぶん、発行部数の何倍かはいると思います。
    ただ、出会いの機会が限られていると。
    日本冒険小説協会・内藤陳会長も、面白本と読者の出会いのため“読まずに死ねるか!”を書き始め、そして、日本冒険小説協会を立ち上げられたと理解しています。面白本の“おススメ屋”として。
    ここ数年、ライブハウス通いが趣味なのですが。
    インディーズバンド、いいなと思うバンドとの出会いがいくつかあって、
    もっとたくさんの人に聴いて欲しいなと思うのですが。
    いかんせん聴く人とミュージシャンの出会いが限られてくるのが歯がゆいところです。
    私だって人に誘われてライブハウスに行くまでは、そんな世界を知らなかった訳ですし。
    そして、思うところ。
    いや、あたしだって、あたしみたいなキモメンでも気に入ってくれる女性、ともに人生を過ごしてくれる女性は日本だけでも数百人はいると思うのですよ。潜在的に。ただ、出会いがないだけだと。
    しかし、まぁ、男が生涯に出会える女性、お互いの心まで話せる女性なんてせいぜい数十人くらいになるのかなぁ。
    だからあかんのかなぁなどと思う次第であります。
    それでは失礼いたします。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年11月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
PAGE TOP ↑