*

『ワセダ1.5坪青春記』、出版間近?!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


『ワセダ三畳青春記』の韓国語版カバーなるものが集英社から送られ、驚く。
マジで出版する気らしい。
タイトルが少し変わった。
『ワセダ1.5坪青春記』である。
韓国では「畳」がないので「三畳」なんてわからない。
だから「坪」で表したという。
ちなみに、先月、「韓国政府は「坪」「匁」の使用禁止を強化」という記事を読んだばかりだ。
韓国政府は土地の広さを表す単位は平方メートルに統一せよと言っているのに、
日本時代に植えつけられた「坪」がいまだに一般的に使用されている。
それに業を煮やした政府は、今後、「坪」表示をする不動産業者には厳しい措置をとる…といったような内容だったと思う。
出版物ならいいのだろうか?
発禁処分にでもなれば、それはそれで面白いが。
カバーデザインも素敵だ。
部屋はどう見ても韓国である。
「布団はない」と書いているのに、棚の上に布団が載っている。
だが、主人公のタカノ青年が現実とほぼ忠実にかっこいいから許そう。
いちばん後ろの「守銭奴」とおぼしき人物が、本物の守銭奴に限りなく近いのには
驚かされた。
守銭奴のイメージは、アジア共通なのだろうか。
カバー裏に記された惹句の翻訳も律儀に送られてきた。
(裏表紙訳) 
> 早稲田大学前の古びた二階建てアパート野々村荘。
> そこに住む変な住人たちの青春物語。
>
> 自分の部屋で横になって学校を遠くで眺めることで出席を代わりにする青年タカノ
> トイレのドアを閉めない住人に天誅を下しつつ、10年間、司法試験を受け続け
> ているケンゾウ
> ゴキブリの這う音がうるさいと家主に抗議する守銭奴マツムラ
> 空き部屋に住む野良猫のご飯の面倒を看てくれる大家のおばちゃん
> 幻覚サボテンを醤油で煮つけて食べる無愛想なイシカワ
> 1.5坪の部屋でガールフレンドと寝ることに命をかけるナリタ
> 七十になる大家のおばさんに勝ってみせると、死に物狂いで卓球に打ち込むナカエ
>
> 野々村荘でなければ会えない個性豊かな住人たち。
> そんな彼らの感動青春物語。
> もう誰も彼らを止めることはできない!
おもしろそうではないか。
私も読みたいぞ。韓国語、習おうかな。
この本を読めば、韓国の人たちの日本への妙な緊張感も和らぐかもしれない。
「日本人は敵視するほどの連中じゃない」ってことだけでも
わかっていただければ幸いだ。
まあ、ちゃんと出ればの話だが。

関連記事

no image

2007年に読んだ本ベスト10(小説部門)

恒例(といっても2回目か)の「今年読んだ本ベストテン」である。 自分が読んだということだから、今年出

記事を読む

no image

熱燗プロジェクト敗れたり!

先週の金曜日から日曜日にかけて、 南三陸町にまた行ってきた。 今度はボランティアでなく、月刊「おとな

記事を読む

no image

ノビシロマン

水泳に行くと、仲間というか先輩の方々から「高野さんはいいね、ノビシロがいっぱいあるね」と言われる。

記事を読む

no image

奇談

双葉社の雑誌(週刊大衆増刊)「奇談」のインタビューを受ける。 担当者はなんのことはない、探検部の後輩

記事を読む

no image

エチオピアへ

突然ながら、6月1日より30日まで一ヵ月間、 アフリカ方面に出かけることした。 行き先は未定だが、と

記事を読む

no image

こんなこと、してる場合じゃないのだが…

明日からトルコへ行く。 ワン湖の怪獣ジャナワールの調査である。 ただでさえ忙しいのに、昨日、中国か

記事を読む

no image

サッカーの合間に

井田徹治『生物多様性とは何か』(岩波新書)を読む。 新聞記者だけあって、著者はかなりよく整理して書

記事を読む

no image

アブディン作家化大作戦

mixiのトークイベントの翌日、私もただ二日酔いでうなっていたわけでもなくて スーダンの魔術師(?)

記事を読む

no image

「いちおう民主国家」ミステリ

今さらだが、伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』を読んだ。 独裁国家でのミステリ読書週間の番外編だ。

記事を読む

no image

奇跡のリンゴ

ブームが過ぎたベストセラーほど、読む気にならない本もない。 でも今は在庫一掃読書。 石川拓治『奇跡

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年7月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑