*

タマキングの原点はここにあった!

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様


週末、書店でのトーイベントのため大阪に行ってきたのだが、実に楽しかった。

なにしろ、朝は杉江さんと一緒に中之島をジョギングし、昼は観光、夕方は市民プールで水泳、
夜は飲み会。しかも経費はすべて本の雑誌社で出してくれる。

これがただ遊んでいるだけでも嬉しいが、いちおう「仕事」で行っていて社会的にも家庭的にも
名目が立っているというのもありがたい。
実際にはトークイベントでは温かい読者が待っていてくれ、私の拙いギャグにもちゃんと笑ってくれるし、
大阪観光ツアーの一環のような錯覚に陥ってしまう。

今回とくに印象的だったのは、「みんぱく」(国立民族学博物館)訪問だった。
前から気にはなっていたものの、毎回大阪に着くと忘れてしまっていた。

最寄りの駅に着いて、いきなり驚いた。
巨大な怪獣みたいなものが佇んでいるのだ。

太陽の塔だった。

いや、たまげた。
万博の跡地に太陽の塔が今でもあるとはなんとなく知ってはいたが、
てっきり10m程度のものだと思っていた。

あとで知ったが、高さ70mもあるらしい。
その巨大さ、唐突な感じ、圧倒的な存在感は巨大仏のようだ。

近づいてみると、また別な意味で異様。
顔が上下二つあり、後ろに回ると、また顔がある。
太陽の塔に「裏面」があることも初めて知った。
横に突きだした手とも角ともつかない突起はヒトデのようで
まあ、変な形といったらない。

そこで私の中でいろんなことが一気にわかったのだった。

巨大仏みたいなもの。変な形。

そして、ここ大阪市千里は宮田珠己の故郷だ。

つまり、太陽の塔こそタマキングの原風景じゃないのか。
そう考えれば、宮田さんの変な形や破調的な風景への偏愛は腑に落ちる。

(さっき電話で宮田さんに訊いたら「まさに、そう。俺の原風景はあれ」との答えだった。)

みんぱくでは時間がなくて、駆け足で一時間ほど回っただけだったが、
ニューギニアの仮面がよかった。
中には頭と腹に顔が二つついた、頭からすっぽりかぶる着ぐるみみたいなものもあり、
太陽の塔にひじょうによく似た印象だった。

宮田さんはこのみんぱくも大好きだという。

日本屈指のタマキンガー(タマキングのファン)として、
私はタマキングの原点を発見し、たいへんに満足した。
あたかもソマリランド和平の謎を解きあかしたときと同じようなカタルシスを覚えてしまったのだった。

関連記事

no image

びっくり!

 昨年11月に何度か上映会を行ったが、そのときこのブログを通じて、 私に直接「上映会を見たい」とメー

記事を読む

no image

泣けるような話

今週、出演するJ=WAVEの番組の打合せで、 構成作家の人に「何か外国でちょっと泣けるようないい話は

記事を読む

no image

日本はフライ級ミステリの宝庫?

独裁政権下の小説を読みつづけている。 最近はオレン・スタインハウアー『極限捜査』(文春文庫)を読ん

記事を読む

no image

出発

昨日、関係のない映像を観ていたおかげで 結局、かぎりなく徹夜に近くなってしまった。 死ぬほど眠い。

記事を読む

no image

なんといってもインド

ちょうど映画「スラムドッグ・ミリオネア」がアカデミー賞を受賞した日に その原作であるヴィカス・スワ

記事を読む

no image

今まだそこにいるんだけど…

ソマリランドの首都ハルゲイサもそろそろ一週間。 ソマリ人との付き合いは二週間。 さすがに最近は慣

記事を読む

no image

オネエとイケメンの偉大なる力!

毎週火曜日の朝は、杉江さんの「炎の営業日誌」を読むのは日課なのだが、 今日は途中からいきなり「オネエ

記事を読む

no image

今年からノンフィクション作家

みなさん、明けましておめでとうございます。 今年は何をするか。 まずは肩書きを変えることにした。 正

記事を読む

no image

なかなか出発できない件について

悪戦苦闘の挙げ句、『移民の宴』は無事校了。予定通り11月15日に発売される。 旅の準備も今よう

記事を読む

no image

闇の王国ブータン

ぜひ多くの人に読んでほしいと思いつつ、こちらの気持ちの思い入れが強くてなかなか紹介できなかった本

記事を読む

Comment

  1. CHIBASHIYAHAGICHO より:

    私は今でも実家に帰ると、万博みやげの太陽の塔のミニチュアを拝んでます。
    そう言えば、岡本太郎氏の作品としては、数寄屋橋に 太陽の塔の ひまごみたいなのが立ってますよねぇ。どちらも変ですよねぇ。

  2. CHIBASHIYAHAGICHO より:

    去年の5月の黄金旬間に、中学生の息子が「お父さんの車で どこまで行けるの?」と訊いてきたので、じゃあ行ってみようかいという事で、練馬区の自宅から 九州めざして西へ西への西遊記を実践したときのこと、大阪で何か うまいもの喰おうぜ ということで、千日前「はつせ」のお好み焼きか、新世界 通天閣下の「だるま」の串揚げか、と ドーパミンやらアドレナリンやら出しまくっていた時、高速道路を走りながら、ふと外を眺めると、いきなり至近距離から 太陽の塔の視線と鉢合わせして、ぶったまげたのを思い出しました。
    ちなみに この後、本州をぶっこ抜けて、壇ノ浦で 関門海峡を渡って 門司港まで行きましたが、そこが 我々の天竺でやんした。オシマイ。

  3. 匿名 より:

    太陽の塔は、内部も展示スペースになっていて、万博当時は一階から二階へ移動するエスカレーターでもありました。
    有名人は、望めば中に入ることもできると思いますよ!

  4. 隅田 美香 より:

    大阪にこられてたんですね~。情報を見逃してしまっていました…。ショック…。みんぱくは駆け足じゃなく、じっくりみていただくとアフリカの映像とかかなりおもしろいですよ~。また是非大阪でトークイベントしてくださいね。お待ちしております。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年3月
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31  
PAGE TOP ↑