*

本物のダービーをつくる方法

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


イビチャ・オシム『考えよ!』(角川ONEテーマ21)を読む。
例によっていろいろな提言に満ちているが、「本物のダービーをつくれ」というところが
興味深かった。
要するに昔の「巨人対阪神」みたいなライバル伝説をつくり、競わせれば、選手はプレッシャーに強くなるし、
質があがり、観客も盛り上がるということだ。
例えば、ヨーロッパのビッグクラブはサポーターの対抗心をあおるために
わざと敵対するビッグクラブから選手を引き抜いたりして、経営力を高めるのだという。
これはひじょうにプロレス的な手法だ。
ならば、Jリーグもプロレスから学ぶことができるのではないか。
すぐに思いついたのは「髪切りマッチ」。
負けたほうがリング上で坊主になるというやつだ。
これを年1回、Jリーグでもやったらどうか。
Jリーガーはことのほか、おしゃれな人が多いから、そのプレッシャーは計り知れず、
真剣度は段違いにあがるはずだ。
間違いなく地上波でテレビ中継されるだろうから、
サポーター以外の一般人の間でもめちゃくちゃ盛り上がること必至だ。
一度でも超満員の観衆の前で坊主にされた方はずっと恨むので、
次回の対戦は自動的に本物のダービーとなる。
いっぽう、試合に負けた選手の一部もしくは全員が、髪を切られる前に逃げてしまうというのも面白い。
森本のように初めから坊主の選手や5分だけ途中出場をした選手はどうするかなど、
物議をかもす部分はいくらでもあり、ますますダービーへの注目度がますだろう。
そのうち、「ピッチの中でなく外のことばかりが注目されてむかつく」という選手や監督が出始め、「それならピッチの中でちゃんと勝てよ!」とか逆に批判されたりして、
ますます引くに引けなくなり…といくらでもストーリーが作られる。
むろん、プロレスとはちがい、試合自体は今までどおりフェアなスポーツとして行うわけだ。
そういうことにチャレンジすることがオシムの言う「リスクを冒せ」「欧州の真似ばかりするな」につながると思うのだが…。

関連記事

no image

旅の間の読書

2月発売のソマリ本の準備で、ブログを更新する時間もなかなか取れないし、帰国後に本も全く読めていな

記事を読む

no image

サバイバルには向いてない

産経新聞用の書評でベン・シャーウッド『サバイバーズ・クラブ』(講談社インターナショナル)という本を

記事を読む

no image

チャリ仲間が芸術祭大賞をプロデュース

私の友人で、昨年九州を一緒に自転車で走ったワンマン社長(社員が自分ひとりしかいないという意味だが)

記事を読む

no image

大家のおばちゃんには誰も勝てない

日曜日、「野々村荘」の大家のおばちゃん宅で宴会をした。 久しぶりに会うおばちゃんは齢83という高齢で

記事を読む

no image

平凡妄想

『放っておいても明日は来る』(通称アスクル)を出版することが決まったとき、 まず思ったのは「ゲストの

記事を読む

no image

ソマリアのワークショップで怪しまれる

日本エネルギー経済研究所・中東研究センターが主催するソマリア問題のワークショップというやつに行ってき

記事を読む

no image

タイの黄金のバーミヤン

バンコクから入り、西のラッブリー県というところに行った。 観光客はほぼゼロだが、なぜかバーミヤンみた

記事を読む

no image

聖なき巡礼

大谷幸三という、インドを長く研究し、ブータンやチベットにも造詣が深いライターの方にお会いして話をうか

記事を読む

no image

ドリアン系の作家たち

私が中島義道先生や町田康の本を面白いと書いて、なんだか意外だったようだが、 ほんとうに両方とも好き

記事を読む

no image

タイ国外退去!?

ネット書店「アマゾン」で自著の売上げを見ていたが、「極楽タイ暮らし」のところで、こんなレビューを発

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年11月
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
PAGE TOP ↑