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今年最後のトークイベント&川崎市と横浜市の市境は神の意志で決められた

公開日: : 最終更新日:2013/06/07 高野秀行の【非】日常模様

6月15日(土)19:0016:30(よっしいさんありがとうございました!)より早稲田奉仕園にて、元「たま」のランニングこと石川浩司氏とトークイベントを行います。
私のイベントは今年おそらくこれが最後です。
(もう私の一年はおしまいなのです)
あと、主催者から「まだ本に書いてない話を5つ用意してほしい」と言われてます。
そのうちいくつかは話すことになるんだそうです。
何を話すか今考え中ですが、お楽しみに。

詳しくはweb本の雑誌をご覧下さい。

☆         ☆            ☆

2013.06.06sinpan
『喧嘩両成敗の誕生』が面白かったので、引き続き清水克行先生の著書を読む。
『日本神判史』(中公新書)
これも面白かった。

日本では室町時代から戦国時代にかけて、紛争の解決や盗難事件などの犯人探しなどに
「湯起請(ゆぎしょう)」や「鉄火起請(てっかぎしょう)」が利用されてきた。

争っている二人、あるいは犯行の容疑者とおぼしき人たちに熱湯に手をつっこませ
火傷したほうが「クロ」と判断するのが湯起請。
ともに神様の意志に任せるわけだ。

室町は主に湯起請だったが、その後さらに過激な方法になり、
真っ赤に焼いた鉄の棒を持たせて判断する鉄火偽証が盛んになったという。

驚くべきは、神奈川県の横浜市と川崎市の境界も鉄火偽証によって定められたという話。
江戸初期(1607年)、早野村(現在の川崎市麻生区早野)と鉄(くろがね)村(同横浜市青葉区鉄)が村の境界をめぐって争い、鉄火起請の結果、早野村の勝利に終わった。
それがそのまま横浜市と川崎市の市境になってしまった。
神の意志で決められた市境をいまだに守っているのだ。

のみならず、今でも横浜市側では「川崎側が役人に賄賂をわたし、不正を行った」と伝えられているそうな。
神の意志に対する不満は今も続いているのがおかしい。

実際には本当に鉄火起請が行われたかどうかは証拠がないらしいが、
どっちにせよ、江戸時代の争いが現在にまで影響を残しているというのは興味深い。

本書では湯起請や鉄火起請が盛んになった経緯を丁寧に解釈しており、
そこが読みどころだ。
室町時代は複数の権力や慣習が入り乱れ、混沌とした時代だったようだが、
そこがアジア、アフリカの国と重なるので、私としては特に面白みを感じる。

例えば、湯起請や鉄火起請が盛んに実施された背景には、多くの場合、土地の争いがあったが、
当時、今現在使っている者に権利があるという既成事実主義と権利書や証文をもっている者に権利があるという
証拠主義の(相矛盾する)両方が社会に通用していたという。
だからこそ、事件や紛争の決着が付けにくくて神の裁定に頼る湯起請や鉄火起請が発達した面もあるらしい。

ソマリをはじめ、多くのアフリカ諸国でも、国家の法律と宗教の戒律・習慣と地元民族の伝統という二重三重の構造になっている。
そして国家の法律よりも他のしきたりの方が幅をきかせていることも多い。
例えば、市場で盗みを働く者がいたら、泥棒はその場でリンチに合うのが普通だ。
よくて半殺し、悪ければ殺されてしまうが、別に問題にならない。

そういうふうに昔の日本と現代のアジア・アフリカを重ね合わせるのが楽しくてしかたない。
もっといろいろあるが、それについてはまた今度。

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Comment

  1. shun より:

    いま、「わが盲想」を読んでいます。
    アブディンさんとの販促イベントなぞ、ないのでしょうか?

  2. よっしぃ より:

    たかのさーん
    スタートは16:30です!
    19時からは二次会ですので。
    みなさんお間違い無く!

    16:30開場 17:00スタート
    (終了:18:30ごろを予定)
    ※お時間に余裕のある方は、16時ごろに来ていただき
     会場作りのお手伝いをしていただけると助かります。

  3. HU より:

    週末のイベントに行きたかったのですが親戚家族が来てしまうため断念しました。

    シャン語のレッスンに参加されてるんですね。高田馬場のマイソンカーでしょうか。ホームページには休講中と出ていました。前に教科書だけもらおうとしたんですが断られてしまいました。
    ご存知だと思いますが、辞典類はネットで結構なんとかなります。便利な時代になったものだと思います。

    http://sealang.net/shan/
    東南アジア大学のオンラインシャン語辞典(英―シャン辞書として使えます)

    http://archive.org/details/shanenglishdicti00cushiala
    cushingの辞書のPDFがダウンロードできます。
    旧文字の綴りですが声調と母音の広狭が数字で表記されているので、シャン―英辞典として使えます。

  4. HU より:

    これもご存知だと思うのですが会場の早稲田奉仕園はミャンマーというかカチン族と大変関わりが深いところですよね。
    あそこを運営するのがバプテスト教会で、ミャンマーなど東南アジアのクリスチャンのほとんどがバプテストである関係から、私がカチン語を教えてもらいに行った10年くらい前は、隣接する東京平和教会にカチン人とチン人の牧師がいて、毎週日曜にはカチン語とビルマ語によるミサも行われていました。来ている人々はカチンだけではなく、カレンのクリスチャンや、インド側から来たのかミズ族の人などもいました。ミャンマー以外で世界最大のカチンのコミュニティがあるのはシンガポールで、それに続く規模のコミュニティが東京にあるのだそうです。

    今は主任牧師はじめメンバーが変わってしまっていますが、ホームページを見るとカチン語で毎週、カレン語で隔週ミサが行われているようです。
    http://www.tpchurch.org/index.html
    成増にはインドネシア語でミサをやるキリスト教会があります。中野の中華教会や荻窪と池袋の台湾教会などは行ったことがあるのですが、日本各地の外国語礼拝をやる教会を訪ねて回ってみたいなあと思っています。

  5. 高野 秀行 より:

    HUさんはいろんなことにやたら詳しいですねえ。
    何か研究をされているとか? それとも趣味ですか?

    私はシャン人の知り合い(「ノングインレイ」設立時のオーナー)に個人的に習っています。
    「マイソンカー」はもう閉店してしまったようです。

    早稲田奉仕園とカチンの関係は知らなかったです。
    そうなんですか、あそこはバプティストですか。
    勉強になります。ありがとうございました。

  6. HU より:

    馬場のマイソンカーは閉店していたんですね。残念です。
    http://maisong.jp/index.htm
    こちらのホームページは直接関係あるのかよく分からないのですが、更新はとまっているようです。
    中国と韓国については研究者の入口手前でずっこけ、今は仕事で関わっているので専門といえないこともないのですが、ビルマの少数民族語については完全に趣味です。大阪外大の加藤先生にお会いしてカレン語の教科書をコピーさせていただいたり、チン語、カチン語、カレン語、シャン語、カヤー語の辞書の復刻版を取り寄せたりしましたが、ここ何年か別な地域の言語にうつつを抜かしていたため全く勉強は進んでいません。
    以前はノートをウェブにアップしたりしていたのですが、サイトを運営していた会社ごと消えてしまったので、またいずれ再開したいと思っています。大変ご多忙とは思いますがその節にはご指導ください。

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