頼るのは自治体でなく郵便と宅配便
公開日:
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
今さっき、カメラマンの鈴木邦弘さんと久しぶりに電話で話した。
鈴木さんとはかつて一緒にコンゴに行き(彼はテレ湖ではなく「ピグミー」の取材をした)、
そのあとはやはり一緒にアマゾンを4ヶ月旅したことがある。
常に怒っているか笑っているかどちらかという人で、
私も「だから、高野はダメなんだよ!」とよく怒られていた。
鈴木さんは写真家としては日本よりパリで認められていて、世界的な写真家セバスチャン・サルガドと家族ぐるみのつきあいをしている。最近では写真専門学校の先生をやっている。
その鈴木さんが10年ぶりに週刊誌カメラマンとして現場復帰し、南相馬市や石巻で取材をしているとツイッターで知り、連絡を取ったのだ。
思い出せば、鈴木さんの師匠は反原発写真家の樋口健二氏で、鈴木さん本人は福島白河の出身だから、ある意味当然の出動だろう。
詳しい取材内容は来週の週刊ポストに出るらしいが、
石巻では避難所格差がすごいことになっているという。
私が南三陸で見聞きしたのと似た状態のようだ。
鈴木さんと私の意見の一致したところは、「行政に頼るのはもう無理だ」ということ。
なんでもかんでも国や自治体の責任にされがちだが、
みんな、あまりにいろんなことがあって手がまわらず、職員は疲労困憊している。
だから、今後考えていかねばいけないのは、国や自治体を叱咤することでなく
いかに国や自治体に頼らずに支援をしていくかということではないか。
例えば、避難所格差は自治体の分配、配給能力を超えてしまっているのが大きな原因の一つだ。
いちばんよい方法は、物資を郵便や宅配便で、避難所にじかに送ることだ。
なにしろ郵便局やヤマトや佐川急便は何十年もかけてノウハウを蓄積してきている。
ていうか、それが通常業務だ。
だから、私たちも通常どおり、物資をゆうパックとかで送ればいい。
(宅配便はまだ場所によって行かないところもあるが、郵便はまずどこでも行く)
あとはどこの避難所でどんな物資が不足しているかわかれば、問題はかなり改善されるはずだ。
個人が細かいものをごちゃごちゃ送っても、全然困らない。
相手も自治体でなく個人みたいなものだからだ。
私が知っている場所では、「南三陸町細浦区」が(一週間前の時点でだが)水やカップ麺、漬け物、その他食料、たばこ、酒などに困っていたから、もし何かしたいという人は上の住所を書き、「阿部清人区長」宛に送ればいい。これで届く。
今から思えば、私が御用聞きみたいに、南三陸や石巻の避難所をまわって、必要なものを聞き、それをツイッターやブログで発信していけばよかったのにと思う。
☆ ☆ ☆
高田純『世界の放射線 被爆地調査』(ブルーバックス)を読む。
70年草木も生えないと言われた広島、長崎は戦後あっという間に復興し、そこで生まれ育った人たちも目立った健康被害はない。
そこで著者の高田先生は、マーシャル諸島、チェルノブイリ、東海村など、世界中の被爆地を訪れ、自分で放射線量を調べて回った。
現地に実際に行き、現地の人たちを説得して、自らやってみるというのが私好みだ。
結果から言えば、全体的にどこも意外なほど放射能汚染は消えていて、住民の健康にも問題はなかったとされている。
だが、放射能の話は、ひじょうに複雑で難しい。
ウランとプルトニウムとセシウムでは体に与える影響はちがうし、半減期も極端なくらい異なり、さらにガンマ波、ベータ波、アルファ波があって、そのほかに内部被曝と外部被曝があり、なおかつ生物による半減期(代謝により古い細胞が新しい細胞と入れ替わる)も加味する必要があって、一回や二回読んだくらいでは理解できない。
高田先生はネットで調べると、「右翼物理学者」などと呼ばれ、あの田母神俊雄氏と一緒に講演をしたりしている。
原発に対しても、「現代文明を維持するのに欠かせない」と推進派の立場であるが、御用学者ではなく、科学的信念をもってやっておられるようだ。
そのあたりの評価は分かれるだろうが、放射能を勉強するうえでためになる本ではある。
あと、本書のおもしろさは、高田先生の人間味あふれる現地調査ぶりで、
ロシア(旧ソ連)での調査では毎日勧められるままにウォッカを呑みまくっている。
ある面ではチェルノブイリ以上の核災害地であるマヤーク・プルトニウム核製造企業体周辺に行ったときなんかすごい。
ある日の調査では、昼食にウォッカを一本空け、午後にも調査の合間に村で飲み、
「その日は五本くらい飲んだような気がする。ロシア人はよく一日一本が普通という」と述べている。
調査の合間に飲んでいるというより、飲む合間に調査をしている感じで、宿舎に戻るときは「はっきりした記憶がない」と正直に綴っている。
全員がほろ酔いで放射能調査をしているという、素晴らしい光景だ。
カザフスタンでも、ついてそうそうに現地の研究者のお宅に招かれ「温かい家庭料理とウォッカでほろ酔いになり、旅の疲れも吹き飛んだ」とあり、ブルーバックスでこんなに酒の話が出てくる本は初めて読んだ。
放射能については依然わからないことだらけだが、酒飲みにとっては心休まる一冊である。
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宅急便開通後に、仙台出身の友人が女川在住被災者の幼馴染から送って欲しいと頼まれたもの→28�のスニーカー。
改めて思います。
ニーズは人それぞれですね。
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以前に客家についてのコメントをさせていただいたものです。ついでにかたつむり考試院についての翻訳もさせていただきました。
高田さんは右翼っていうほど明確な思想があるわけじゃなくて、いわば「難民科学者」ではないかと。この人の本をウイグル語訳した留学生が中国に帰国できなくなったりしたのは、批判されるべきことかも知れませんが。
ウイグル自治区における中国の核実験についての研究を発表したら、左寄りの学会や雑誌から敬遠されてしまい、しかたなく右寄りの交友関係を持つようになったのだろうと思います。日本の左派は普通中国を批判したがらないので、チベットやウイグル、内モンゴルの問題についてはそっぽを向いてしまうんですよね。
フリーチベットのデモが大抵、桜チャンネルとか在特会とかの受け皿を通じて行われていたのもそういう事情です。
本来少数民族の人権問題に熱心であるべき左翼が、民族主義国家である中国に阿り、右翼が逆に受け皿になるという奇妙なねじれの構図が存在します。そう考えると日本には本当の右翼も左翼も存在せず、単なる親米か親中かの違いでしかないんですよね。
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建物は残っているけど、ヘドロだらけで家具はいっさい使えず、建て替えないとムリそうな家の片づけ作業をしていたら、その家に郵便配達が来て、ダイレクトメールを置いていった。
律儀というか、迷惑というか。
でも手紙や援助物資が届くのはいいかなあ。
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野々山さん、お疲れ様でした。
郵便配達の話は笑ってしまいました。
ちょっとシュールですね。
石巻ではまだまだボランティアの仕事がありそうですね。
ゴールデンウィークや夏休みは、被災地へボランティアに行くツアーを旅行会社が企画して売り出せばいいんじゃないかとか思いますよ。
で、ノノさんがガイドを務めるとか。
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「ふんばろう東日本プロジェクト」http://fumbaro.org/
というのがあります。
ご参考まで