*

仏教の週末

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


以前、『トルコのもう一つの顔』(中公新書)とその著者である言語学者の小島剛一氏を紹介し、
たしか「日本人でこんなすごい人はいないんじゃないか」と書いたような気がするが
(少なくともそう思っていた)
最近、小島先生に匹敵するすごい人の本を読んでしまった。
今枝由郎『ブータン仏教から見た日本仏教』(NHKブックス)
今枝先生はブータンに興味のある人にはよく知られている。
ブータン在住10年以上、ブータン仏教の専門家だからだ。
だが、それ以外の人には無名という点も、40年以上、フランスに拠点をおき、
日本にはあまり帰っておらず、日本の学界や出版業界とは疎遠という点も
フランス語、英語、チベット語、ゾンカ語、パーリ語、サンスクリット語などに
堪能という言語の天才ぶりも
ひじょうに小島先生によく似ている。
今まで私は仏教の話を聞いても本を読んでも、
さっぱり仏教のことがわからず、もわもわとしていたのだが、
本書を読んでよくわかった。
つまり、「日本の仏教は仏教ではない」ということなのだ。
あまりの衝撃に思わず出家したくなった。
      ☆       ☆         ☆
「おもろい坊主」と称して人気を博した藤川和尚が2月に亡くなり、
その「偲ぶ会」が淡路町で行われた。
藤川和尚は、日本の仏教でなくタイの上座部仏教を実践し、
帰国後は日本の悩める若者たちの面倒をみていた。
えらいお坊さんだった。
会の司会は、mixiで高野秀行コミュを主催している「よっしい」さん。
よっしいさんはミャンマーで藤川和尚と出会い、懇意にしていたという。
司会が同じ人だけに、なんだか私のトークイベントみたいな変な気持ちになる。
「今度は秋ごろにぜひ婚活イベントをやりましょう!」と二人で話した。

関連記事

no image

ソマリランド飲酒紀行

昨日発売の週刊SPA!で私の「イスラム飲酒紀行 最終回」が掲載された。 最終回はソマリランド。 ソマ

記事を読む

no image

ここにも藤岡弘探検隊のファンが…

ひょんなことから、作家の古処誠二(こどころ・せいじ)と飯を食った。 つい最近まで私は古処さんのこと

記事を読む

no image

霊能者、超能力者におねがい

先日、図書館教育ニュースという、学校図書館の壁に貼り出す写真新聞の取材を受けたのだが、 なにせカラー

記事を読む

no image

角田光代さんと対談

『怪獣記』がいよいよ発売された。 正直言って、私の単行本は今まで全く売れた試しがない。 だから、今回

記事を読む

no image

「イエティは現実だ」

長らく待っていたブータン行きがやっと決定した。 来週の14日(水)に出発となった。 期間は約一ヵ月半

記事を読む

no image

切羽詰まったら本人伝説

 竹島問題と尖閣問題が勃発して以来、毎日が憂鬱でならない。特に尖閣は、もういつ軍事衝突になっても

記事を読む

no image

無許可チムスルウォンとは何か

『腰痛探検家』の韓国語版(パク・スンヒ訳、Bookie出版)が刊行されたらしい。 韓国で本を読

記事を読む

no image

ソマリアの海賊裁判は面白い!

ほとんどの人が知らないと思うが、ソマリアの海賊が日本に来ている。 日本も国際協力の名の下に法整備を行

記事を読む

no image

エンタメノンフ的野球論

野村克也『あぁ、監督』(角川Oneテーマ21) 近年、二度目のブームを迎えている野村監督が ボヤ

記事を読む

第3回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞しました

ほとんどの人は梅棹忠夫・山と探検文学賞なる賞を知らないと思う。 かくいう私も、角幡唯介『空白の五マ

記事を読む

Comment

  1. 副部長 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; GTB6.4; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)
    たしか今枝さんてシッキムがインドに併合される前日にシッキムを出国したんですよね。その道でインド軍にすれちがったとかなんとか読んだことあります。クラクラしました。

  2. よっしぃ より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.9.2.3) Gecko/20100401 Firefox/3.6.3 (.NET CLR 3.5.30729)
    ご紹介ありがとうございます。
    各所で司会している、謎の人物・・・のように見せますが
    そんなこともないんです(今回の幹事が昼間の花見でベロベロになり、土壇場で私に振られました)。
    藤川和尚というのは、バブル時代に京都で地上げ屋をやっていて
    そのあとはタイに渡り、不動産をしていましたが
    あるとき、タイ人なら誰でもするという一時出家をしてみよう、というので
    出家し、そこで今までの人生を見直し仏教にはまり、そこで14年。
    5年ほど前から拠点を東京にうつし、各地を巡業していました。
    「とても優しい」とか、「スピリチュアルな・・」とか「清らかな」なんていう人もいるし、
    高野さんのコメントを読むと、エライお坊さん的なイメージがあるかもしれませんが
    実際は「オモロイ坊主」の名の通り、むちゃくちゃに自分のしたいことをしたおっさんでした。
    典型的なB型で、人の話は聞かないし、
    会うたびに「寿司が食いたいなぁ」とか「フグがうまいんや」などといいながら
    奢らされる・・・いや、タンブンさせていただくわけです、こちらは金がないのに。
    勘弁してくれよ、といいながらもついつい会ってしまう、
    そんな不思議な魅力の人でした。
    私との関係でいうと、ミャンマーのパガンでたまたま知り合い
    その後、タイでふらふらしているときにお寺で2週間くらいお世話になりました。
    翌年には、藤川和尚が企画した「タイ・ミャンマー国境沿いを行くツアー」というのに参加し
    そこで知り合ったのが、現在の私の奥さん・・・
    と考えると、図らずもそれが「婚活イベント」だったワケです。
    というわけで、高野秀行プレゼンツの婚活イベントは、ぜひしたいですねぇ。
    飲み会だけではつまらないので、
    高野&タマキングと行くハイキング、とかケービング、とか
    ミャンマーに非合法入国してワ州に入る1ヶ月ツアーとか
    そういうイベントをすれば、必ず婚活になると思うんですけどねぇ。

  3. takanist より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)
    今枝先生はチベット関連の日本語の著書が結構ありますね。
    今読んでいる「囚われのチベットの少女」も、フランス人によるルポを今枝さんが翻訳したものです。あとがきで「フランス在住でチベット専門の私が翻訳せずに誰がするんだろう」って書いてありました。
    小島先生は著書も少ないし今どこで何をやってらっしゃるかわからないし「隠者」のイメージなんですが、今枝先生は第一線で活躍しているイメージですね。

  4. より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.9.2.3) Gecko/20100401 Firefox/3.6.3 (.NET CLR 3.5.30729) Pathtraq/0.9
    今枝先生の著書を拝読しました。日本の坊さん達の、不勉強が良くわかります。今枝先生は結局、日本の坊さん達に本来の意味で出家せよ。苦労せよ、妻帯し、楽な生活で、仏教など、わかるもんかと言っているようです。この本が、広く読まれると、困るでしょうね。仏典は広汎で、生半可な学問で身につけられるような半端な代物では無いようです。パーリ語 サンスクリット語、等々を身につけ、出来るだけ原典に当たらなくては、真の仏教家とは言えないでしょう。日本のいわゆる宗派仏教は結局の処、広汎な原典を読むのはつらいから、つまみ食いをして、そのつまみ食いをした部分を適当に解釈したのだと言うことがわかっただけでも、収穫がありました。それにしても、フランス恐るべしですね。小島先生もそうですが、フランスに行って、本格的に、徹底的に、原典に当たって勉強している。偉いとか、簡単な言葉だけでは、表現できません。多分、日本の仏教界は今枝先生にはつらく当たっているような気がします。高校時代に進路を決める部分だけでも、高校生に読んで欲しい。真の知性とは何か、自分で考えるとは何か、良くわかります。全読書人、必読。それにしても、高野さん、この本を良く見つけましたね。もっと、広めよう。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年12月
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑