*

日本のゲバラ、ここにあり。

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

新宿K’s Cinemaで長谷川三郎監督のドキュメンタリー映画『ニッポンの嘘』を観た。
なんと今年で齢90になる現役の報道写真家・福島菊次郎を描いたものだ。

この福島さん、おそるべき人である。
戦時中に徴兵され、あと一歩で特攻隊員になるところを終戦。

その後、天皇や国家の戦争責任を問い、広島の極貧の被爆者、全共闘運動、成田空港建設の三里塚闘争、公害問題、原発問題など、戦後日本の恥部をひたすら撮り続けてきた。

全共闘や三里塚では完全に学生や地元民の中に入り込んで共闘しているし、自衛隊の取材では本来撮影禁止である部署まで隠し撮りして防衛庁に激怒され、その後家を放火された。

ジャーナリスト志望の学生たちには「国が違法なことをやっているのだから、僕たちも違法な手段で取材していい」と明言。
「国の世話にはならん」と、年金を払わず生活保護も受けず、今も一人暮らし(犬が一緒だが)
生活費にも事欠く有様なのに、飯舘村まで取材に行き、必要とあらば、地面に寝っ転がってシャッターを切る。(でもなかなか立ち上がれない)

過激派どころじゃない。一人反政府ゲリラにして、国家転覆をもくろむ革命家だ。

ふつう、こういう過激なじいさんやおっさんは、尊大で、自己中だと思うのだが、この福島さんはちがう。
誰に対しても言葉遣いや態度は丁寧で、背筋がピンと伸びてジーンズやワッチキャップがよく似合い、ちょっとかわいくて、かっこいい。
20歳くらいのときの写真が残っているが、超イケメンである。

60歳のときは、メディア活動に絶望し、いったんはカメラを捨てている。
ついでに家庭も捨て、30歳年下の恋人(これがまた美人!)と瀬戸内の無人島で自給自足の生活を三年行ったという。

家庭を捨てたはずだが、娘(これまた素敵な女性)は今でも父の写真展を手伝い、「かっこいい人。自慢です」とはにかみながら答えている。

チェ・ゲバラが日本にもいて、銃のかわりにカメラを手にし、そして90歳まで生きたらこうなったのではないかと思わせる。

日本のゲバラが見たければ、そしてゲバラの目から見た戦後日本が見たければ、映画館へGO!だ。

 

関連記事

no image

うなドン

日曜日、和光大学で教えているロバート・リケットさんという人と下北沢で会う。 リケットさんは南三陸のフ

記事を読む

no image

失われた聖書男を求めて

A.J.ジェイコブズの『聖書男 現代NYで-「聖書の教え」を忠実に守ってみた1年間日記』(阪急コミュ

記事を読む

no image

形見の銃弾

 義父が昨年1月、義母が今月と、相次いで亡くなったため、 妻の実家は遺品の山である。  なにしろ8

記事を読む

no image

花のズボラ飯

久住昌之原作、水沢悦子画『花のズボラ飯』(秋田書店)を読む。 グルメ漫画を読んで、共感したのも初め

記事を読む

no image

スットコランド日記

宮田珠己ことタマキングが「web本の雑誌」で連載している 「スットコランド日記」(毎週月曜更新)を読

記事を読む

no image

マイナー・ミート対談

9月15日(土)にジュンク堂池袋店にて、『世界屠畜紀行』の内澤さんとトークセッション (まあ、公開対

記事を読む

no image

白水社のウェブ

つい2週間ほど前、本の雑誌の杉江さんとマラソン本の打ち上げをしたとき、 「全然執筆の依頼が来ないんで

記事を読む

no image

元気が出てしまう(?)自死の本

いわゆる「野暮用」ってやつで、仕事に専念しているわけでもないのにともかく忙しくて ブログを更新でき

記事を読む

no image

寿司と酒

久しぶりにスーダンの盲人留学生アブディンと会い、 珍しくイスラムの話など真面目な話をしたが、そのあと

記事を読む

no image

モガディショで宮田珠己

ソマリランド&ソマリアでは、いろいろな理由で暇な時間がひじょうに長かった。 とくにソマリアの首都モガ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2026年1月
     1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    262728293031  
PAGE TOP ↑