一見、回り道のような経験も無駄にはならない(後編)
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最終更新日:2015/04/20
今日のお仕事
その布石は、まだ私が普通のサラリーマンをしていた、日本盛時代にあった。
メーカー、卸、小売には、酒類に関係する業者の会合や、組合、任意の団体など、業界、エリア、資本関係などによってたくさんのグループがある。それらは年に一度、予算と活動の報告を兼ねて加盟の会員を集めて総会を開くのだが、こういった総会にはなぜかゴルフが付随していた。
10人弱の小さなものから、100名近い関係者が集まるコンペまで、毎週どこかで何かしらのコンペが開かれていたように記憶している。
私の担当エリアは、堺市を除く大和川以南という広大なゾーンだった。
しかし、シェアのほとんどはライバルである某白鶴さんが押さえていたので、歴代の担当者が培ってきたシンパの得意先を中心に、新たなシンパを増やすという営業をしていた。ちょっと脱線するが、日本酒は地域ごとに銘柄の強弱があるというのが面白い。恐らくは明治〜昭和初期の特約店制度によって地元の有力店が特定の銘柄をかついだためだろう。
販売数量の契約や、料飲店への商品提案など、書類による商談、提案はもちろん有効だったが、大事な得意先には部長や支店長とともにゴルフというセッティングも多かった。
最初のうちは避けていたのだが、何かのきっかけで、泉佐野の山形屋さんという酒屋さんと、当時の支店長との間で、私の初ゴルフのスコアについて賭けみたいな話になってしまい、やらざるを得なくなった。
それは
「小林が初ラウンドを120台のスコアで回ったら、本年度の計画30石(一升瓶換算3000本)を完遂して下さい」
というものだったと思う。
私は球技全般がとにかく苦手である。
「動いていようが止まっていようが球を使うスポーツにはかわりない」と、その週末、淀川沿いの練習場へ行き、レッスンプロからクラブの握り方や、スイングの基本を教わった。デビューまでの2ヶ月間(!)で都合3回習い、残りは復習にあて、ほぼ毎週の練習でコースに望んだ。
結果は203。
途中で数えるのがどうでも良くなったので、プラスマイナスで5打位は誤差があるはずである。
その後、得意先や社内のコンペなども出たが、散財する一方で一向に上達しなかった。それでも、月に1度は何かしらのコンペがあり、下手くそながらもコースの経験とルールやマナーの知識だけは蓄積されていった。
出版社に転職してからは、一度もコースを回ったことはなく、これこそ本当に無駄な投資だったと思っていたのに、8年経って日の目を見た。
世界的に著名なゴルフ・インストラクターのデビッド・レッドベターのレッスンDVDに付くガイド・ブックの編集だった。先週校了し、来週末にはユーキャンより発売の予定である。
興味のある方はこちらをどうぞ。レッドベターのパーフェクトレッスン DVD
ところで、とんでもないスコアを叩いたおかげで賭けに勝った山形屋さんだったが、「男の約束だ」と、翌年30石の目標を達成してくれた。
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