3DJs Band called THE STYLUSTIKS from Malaysia
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最終更新日:2012/05/25
今日のお仕事
昨年に引き続き、今年の東京アジアミュージックマーケット(以下TAM)でもマレーシアからのアーティスト招聘に関わることとなった。今年で3回目を数えるTAMは、アジアから様々なジャンルで活躍する新進気鋭のミュージシャン達を東京に集め、代官山のUniteというクラブハウスで2日間に渡ってショーケースライブを行い、また同時に海外の音楽産業についてのカンファレンスなども併催するという、アジアの音楽業界に携わる人々が一同に介するイベントだ。昨年はマレーシアから脱アジアクラスのクオリティーを持つR&Bシンガーソングライターのレシュモニュ(Reshmonu)、インドネシアからはエレキギターとエレキベースがダブルネックになっている彼オリジナルのギターで鮮やかなフィンガリングを魅せたバラワン(Balawan)が来日し、東南アジア勢のパフォーマンスの高さを見せつけた。
去年同様、マレーシア在住の音楽ライター:アサネギシさんと連絡を取り合いながら出演アーティストを絞り込んでいき、主催者側の最終選考でエントリが決まったのが、なんとHIP HOP DJ3人組でつくったバンド「THE STYLUSTIKS(ザ・スタイリスティクス)」。ボーカルなしのDJが3人ステージに登っていったいどんなパフォーマンスが繰り広げられるのか?正直ピンと来ない人の方が多いかも知れない。日本では絶対に出てこないであろう彼らのスタイルを理解するには、ちょっとだけマレーシアのクラブシーンを押さえておく必要がある。
現在の日本で「クラブ」といえば、どちらかというと出会いを求めた若者が集まる場という雰囲気が強く、流れている音楽もハウスが主流、さらにジャンルも細分化されてきていて、それぞれにお好みの音楽が流れている「クラブ」に行くという構図がある。一方のマレーシアはHIP HOP主流、というか今まさにHIP HOP全盛といった様相で、一昔前、日本の若者が夜な夜なカラオケへと足を運んだのと同じ様な感覚で、クラブへ出かけていくといった具合だ。狭くて暗い、ちょっとワル〜い(笑)雰囲気が醸っている日本のクラブに比べると、ドカーンと巨大なマレーシアのクラブは「HIP HOPで踊るぜ!」というカラッとした、そしてノリの熱い連中で埋まっている。街に出ればDJ養成の専門学校もあるし、DJはTeensの憧れの対象でもある。こういった背景には都市部では英語を日常会話として話す人々が大半であることも無関係ではないだろう。アメリカンヒットチャートで流れてくるHIP HOP音楽をそのままダイレクトで飲み込んでしまう懐の深さと、語学のアドバンテージがマレーシアにはある。
さて、このTHE STYLUSTIKSのDJ3人はそれぞれマレーシアの人気HIP HOPバンドのDJでもある。リーダーとして曲のプロデュースを担当するDJ UNOはバンドとDJの融合したポップ・シュビット(Pop Shuvit)で活躍。日本でもアルバムを2枚リリースし、昨年も原宿と大阪でツアーを敢行。日本のファンも着実に増えている。DJ CZAはアリ・フィキール(Ahli Fiqir)というマレー語HIP HOPバンド、DJ FUZZはテー・タレ・クルー(Teh Tarik Crew)という英語HIP HOPバンド、どちらもマレーシアトップクラスのHIP HOPバンドのDJだ。ちなみに、DJ FUZZは去年のTAMでレシュモニュのサポートDJを担当しており、主催者曰く「2年連続で出演したのは彼だけですよ」とのこと。もっとも、FUZZにそれを伝えると「じゃぁ来年も狙う(笑)」と笑って返す良いやつである。
さて、23(月)の来日から、翌日のショーケースライブ&ウェルカム・パーティー、そして帰国日26(木)の渋谷レコード店巡りと一緒に行動してみて、音楽性の高さはもちろんのこと、多民族国家ゆえの、異文化や異民族への適切な接し方と、吸収力の速さ、そして適応力にあらためて驚かされる。ライブの日はちょうどラマダン(イスラム教の断食月)が開けたハリラヤスタートの日でもあり、そんな喜びと開放感も伝わるようなパフォーマンスであった。ちなみにラッパーもいないDJ3人だけで、ステージはどうするのと心配な皆さん、ご心配なく。HIP HOPはスクラッチなど元々アクションの大きなDJワークに加え、隣のターンテーブルを操作したり、一人ずつ順番にターンテーブルを交換したりと、驚きのターンテーブルさばきが一目瞭然で、会場のDJはもちろんのこと客席から驚きの声が上がっていた。
彼ら悪ガキ3人を束ねているのが、これまたアメリカ西海岸で育ったマレーシア人、ヤニズ・メリカン(Yaniz Merican)女史。イベント自体はどうしても中国・韓国・台湾がメインとなってしまうのは、有力なアーティストをレーベルやコンテンツホルダーとつなげるという役割も担っている性格上致し方ないのかも知れないが、彼女ははじめから「アジアのHIP HOPコネクションをつくりに日本へ行く」と、狙いが明確で、イベントでは会場の音楽を担当していた日本のDJや、台湾のMC Hot Dogなどとも大いに盛り上がっていた。ちなみに、彼女は西海岸のHIP HOP界の重鎮と高校・大学を共に過ごしたそうで、ウォーレン・Gなんかとも気軽にコラボレーションさせてしまうというから、すごいもんである。
まあ、更に付け加えるなら、そういったマレー系のミュージシャンに顔の利くマレー語堪能な日本人、アサネギシこと根岸麻高さんという人物も相当すごい人なんだが。
FUZZ、それはムスリムとしてどうなんだろう・・・。
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