「いちおう民主国家」ミステリ
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様

今さらだが、伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』を読んだ。
独裁国家でのミステリ読書週間の番外編だ。
小説の舞台は今の日本とちょっとちがう日本だがいちおう今と同じ程度に民主国家である。
だが、国家レベルの陰謀である男が首相暗殺犯にでっちあげられるという点では
独裁国家ミステリに近い。
読んでいて気づいたのだが、
本物の独裁国家では、殺人犯が逮捕されても国民の誰もが「あいつがやった」とは思わない。
国や国の支配下にあるマスコミが本当のことを言うわけがないとみんなが知っているからだ。
国民が判断するのは「あいつ(犯人)は国に逆らうことをしたのだな」ということのみ。
ところが「いちおう民主国家」の場合、警察が逮捕しそれをマスコミが報道すると
国民全員が「あいつがやったのか」と納得してしまう。
ある意味では独裁国家より非民主的な展開になるわけだ。
その辺のちがいが展開のちがいとなって具体的に現れるのでおもしろかった。
関連記事
-
-
アラジンは中国人だった!?
旅のトリビア「たびとり」はまったく反響がなかったが、懲りずに最近驚いたことを一つ。 山田和『インド
-
-
シュウコウとヒデユキは同一人物です
ご存知のように、前回のブログのコメント欄に映画配給会社の宣伝の人から コンゴの作家、エマニュエル・
-
-
深谷陽というアジア風天才漫画家
日本にいる時間が残り少なくなってきたので、 駆け足で紹介。 先日行われたmixiのイベントに、純粋
-
-
最近であった美味いもの・その1と2
最近、出会った美味いものを思いつきで並べてみたい。 その1、福井県の銘酒「花垣」、しかも純
-
-
どこまで行くのか、韓国
またしても竹島問題で関係が急速に悪化している日本と韓国だが、 私の本はゴンゴン出版されつづけている。
-
-
『困ってるひと』ついに発売
大野更紗『困ってるひと』(ポプラ社)がついに発売となった。 今アマゾンで見たら、180位である。


