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NHKの仕事でまたミャンマー

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


(撮影:森清、『西南シルクロードは密林に消える』より)
※こんな映像が撮れればいいのだが…
 
 3月に約一カ月間、またミャンマーに行くことになった。
 今をときめく(?)NHKの仕事である。
 私の家は衛星放送が入らないのでよくわからないが、BSのハイビジョンスペシャル(なんと正味110分!)というスゴイ枠で、「ビルマロード」をテーマにした「ハードなロードムービー的ドキュメンタリー紀行」をやるんだそうだ。


 「ビルマロード」というのは、一般の方には馴染みが薄いかもしれないが、太平洋戦争の行方を大きく左右した道である。
日本が中国に侵攻したはいいが、蒋介石の南京政府はいっこうに落ちない。これは南方のビルマ経由で武器や食糧が連合軍側から中国にどんどん送られていたからだ。
 いわゆる「援蒋ルート」だ。
 そのルートを遮断するため、日本軍はアウン・サンらの独立兵士たちを利用して、ビルマに侵攻、占領した。
 困ったのは連合軍である。これでは中国に物資を輸送できない。
 そこで彼らは、インド・ビルマの国境からジャングルを切り開いて、中国・ビルマ国境へ至る道を作り始めた。
 これが「ビルマロード」である。
 これが開通すれば、戦況は一気に連合国側に傾くということで、このルートをめぐって激戦が繰り広げられた。
 日本軍は玉砕につぐ玉砕。しまいには、「ビルマロードを背後から叩く」という無茶な奇襲をかけた。それが大失敗におわった、あの悲劇の「インパール作戦」だ。
 ま、それはともかく、日本人で(というか、外国人で)その辺をよく知っているのは私しかいないので、お声がかかった。
 実際、3年前の「西南シルクロード」の旅でも、去年の船戸与一との旅でも同じようなコースを通っており、正直、「また行くのか」という気すらする。
 しかし、今回は私がレポーター役もやるかもしれないという。
 もしかすると、今年の5月には、私のアホ面が2時間、画面に映りっぱなしになる可能性もある。
 それだけが気がかりだ。

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Comment

  1. 太郎 より:

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    太郎です。
    決まりましたか。 おめでとうございます。
    高野本を持てるだけ持ってきてください。
    日本への帰国を1日延ばしてヤンゴンでサイン本販売会でもしましょう。

  2. ほしな より:

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    ウチでは見られないのに頻繁にお知らせしてくれる「BSハイビジョンスペシャル」。高野さんのレポーター、放送はいつごろになるんでしょう。受信料支払い拒否の高野ファンも、ハイビジョンに加入したくなる!?

  3. 二村 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.0; Mac_PowerPC)
    今では最もスキャンダラスな放送局になってしまったNHKですが
    番組作りの姿勢やその影響力はまだまだ、民放に勝るところの
    多いのも事実です。(特に地方の親戚に対しては抜群!)
    高野秀行ブレイクの大きなマイルストーンとなることでしょう。
    ほんとどんな人が見てるかわからないんですよ。
    NHKのドキュメンタリー番組って。
    <経験者は語る(笑)<それも遠い目で。。。

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