*

キワモノ作家の王道娯楽ミステリ!?

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


久しぶりに新規の(自分にとって)小説を楽しんで読んだ。
田中啓文『チュウは忠臣蔵のチュウ』(文春文庫)
田中さんという人は、オーソドックスな小説を書こうと思えばいくらでも書ける人なのに、
なぜか毎回過激なギャグや極度のグロ、そのうえしつこい駄洒落に走り、
キワモノ作家と思われている。
そこが他人と思えない親近感を私に抱かせるところだが、
ファンである私にも「これは凄い!」と感激するモノと「これはついていけない…」と呆れるモノの二つに分かれる。
『チュウは…』は赤穂浪士伝を題材に、著者にしては珍しくユーモアとオーソドックスのバランスがとれた作品で、「なぜ浅野内匠頭はあんなに素早く切腹させられたのか」という謎からスタートした秀逸なミステリだ。
浅野内匠頭は殿中で見てはならぬものを見てしまったから抹殺された、そしてその裏には巨大な陰謀が…!という展開で、直木賞でも山本周五郎賞でも本屋大賞でもなんでも受賞できそうな王道のおもしろさだが、ネットのレビューを見ると、
「素直に面白かった」とか「笑えた」だけでなく、
「ギャグがすべっておもしろくない」とか「登場人物が不気味」などとも書かれ、
やっぱり評価が分かれていた。
私は傑作だと思うんだけど…。
         ☆         ☆         ☆
これから取材で、三度宮城県に行ってきます。

関連記事

no image

「出張上映会」依頼第1号

無料出張上映会だが、早くも依頼第1号が来た。 早稲田大学の社会人学生という人。 大学の学生会館を利用

記事を読む

no image

ブータンと提携した男

上智大学の対談講義にも来ていただいた マレーシア在住のジャングルマニアの二村聡さんが産経新聞で紹介さ

記事を読む

no image

豚に真珠とはこのことか

昨年亡くなった義母の命日なので (そして一昨年亡くなった義父の命日にも近いので)、 義姉とその夫であ

記事を読む

no image

スットコランド日記

宮田珠己ことタマキングが「web本の雑誌」で連載している 「スットコランド日記」(毎週月曜更新)を読

記事を読む

no image

イスタンブールは遠い…

再び成田空港に行き、今度はちゃんと飛行機が飛んだ。 が、ドバイに着いたものの、日にちがずれたためイ

記事を読む

no image

『メモリークエスト』やっと発売

見本ができてからあまりに長い時間がたったので すっかり実感を失ってしまっていたが、 今日(10日)

記事を読む

no image

超絶技巧!!

 私は現代アートというものが苦手だ。どうしても「意味」を探さなければならないという強迫観念にさらされ

記事を読む

no image

『謎の独立国家ソマリランド』PV&オタク本の魔力

『謎の独立国家ソマリランド』発売1カ月を記念して(?)、 プロモーション映像を作った。 http

記事を読む

no image

2010年小説ベストテン

恒例(だったっけ?)の年間枚ベストテンを発表したい。 私が今年読んだ本だから、出版年はバラバラだ。

記事を読む

no image

おお、神よ、私は働きたくない

宮田珠己待望の新刊『なみのひとなみのいとなみ』(朝日新聞出版)が発売された。 単行本の新刊は一年半ぶ

記事を読む

Comment

  1. しん より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 5.1; rv:2.0) Gecko/20100101 Firefox/4.0
    今日、駅に置いてある「R25」を読んだらドカーンと「間違う力」のブックレビューが載ってました。

  2. ファン より:

    AGENT: Opera/9.80 (J2ME/MIDP; Opera Mini/4.2.23546/24.783; U; ja) Presto/2.5.25 Version/10.54
    奇想天外殺人事件/横田順弥 を思い出しました。雰囲気は近いのでしょうか?読んでみたいと思います。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年4月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑