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熱燗プロジェクト敗れたり!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

先週の金曜日から日曜日にかけて、
南三陸町にまた行ってきた。
今度はボランティアでなく、月刊「おとなの週末」で連載している「移民の宴」の取材。
たまたま南三陸町にフィリピン女性の被災者が十人以上いることがわかったので
その人たちに連絡をとり、パーティをやってもらうことにした。
赤羽にあるサリサリストア(フィリピン風雑貨屋)「赤羽物産」で、調味料のバグオンや春雨、
エビ、ジャックフルーツの缶詰などを仕入れ、レンタカーを借りて、森清と編集者のKさんと一緒に北上。
9時間かけて南三陸町に到着。
前回と同じく、ベイサイドアリーナ(総合体育館)の横にテントを張る。
二週間前はイスラエルの医師団のテントがあったり、車や人の出入りもわさわさしていて、いかにも「緊急時」という雰囲気があったが、今はもっと落ち着き、秩序だってきている。
トイレも格段にきれいになっていた。
もっとも相変わらず寒くて、とくに雨の中、コンロで自炊したり、テントで寝たりするのは
なかなか辛い。
翌日、フィリピン女性のリーダーであるアメリアさんという人の実家に行き、
そこの庭を借りて宴会の準備。
納屋の軒先みたいなところでやっているからやっぱり寒い。
こんなところで熱燗を飲んだらさぞかし暖まるだろうと期待していた。
今回は私が自分で寺田本家から一升瓶を4本買い、準備万端である。
だが結果的には空振りに終わった。
誰一人、酒を飲まないのだ。
なぜかというと、みんな、それぞれ車で集合しているからだ。
震災前は、みなさん、ふつうに車で飲みに行き、帰りは代行を頼んでいたようだが、
今代行など頼む経済的余裕はないし、代行自体、営業停止している。
つまり、南三陸のように町全体が壊滅してしまった被災地では、飲み会ができなくなっているのだ。各自が家や避難先で細々飲むしかない。
まあ、一升瓶は置いていったし、きっとみなさん、うちで楽しくやってくれるとは思うが、
やっぱりそれとは別に、みんなで宴会ができないというのは辛い。
幸い、フィリピン女性のみなさんは、全員が家と財産を一切合切流されたと到底思えぬほど明るく、またフィリピンの宴会料理で身も心も温まった。
「震災後、フィリピン料理を食べたのは初めて!」と喜んでもらえたし、よかった。
だからこそ、熱燗飲みたかった!と今でも残念でならない。

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Comment

  1. よっしぃ より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.9.2.16) Gecko/20110319 Firefox/3.6.16 (.NET CLR 3.5.30729)
    というのは?
    謎めいたエンディング・・・

  2. 高野秀行 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; en-US) AppleWebKit/534.16 (KHTML, like Gecko) Chrome/10.0.648.205 Safari/534.16
    あ、それは間違いです(笑)
    削除しました。

  3. タカ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4322)
     いいですね!
     被災地だからと言って打ちひしがれず、宴会をもちかける人、
    受ける人。
     震災を笑い飛ばせ、という思いがあってもいいと思います。
     とてもそうではないと思う人も多いでしょうけれども。

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    • 単行本の原稿が終わったら急に本が読めるようになった。まだエピローグ書いてないから気を許す段階じゃないんだけど。でも久しぶりに読書の喜びを味わっている。 ReplyRetweetFavorite
    • 今まで野村監督に特に興味がなかったんですが、加藤さんの本を読んで、すごく好きになりました。人間味にあふれた策士というところ、でも言うことは決して奇をてらわないとか。あと、やっぱりサッチー、スゴい(笑) https://t.co/FrRQVs2IX8 ReplyRetweetFavorite
    • あ、そうだったんですね。名監督の知られざる一面を描いているし、著者ご本人の青春記風でもあり、『嫌われた監督』を彷彿させました。落合夫人とサッチー夫人もよく似てるし(笑)いや、面白かったです。 https://t.co/66kmDl74FN ReplyRetweetFavorite
    • 先月から自分の単行本原稿が佳境に入り、読書が全くできなくなっていた。他人の文章が頭に入らない。なんだけど、今日一息ついたあとで、なぜか加藤弘士著『砂まみれの名将 野村克也の1140日』(新潮社)を一気読みしてしまった。あまりにも自分の仕事と関係がなかったのがよかったのかも。 ReplyRetweetFavorite
    • 単行本を一冊書くのはエベレスト登山にも似ている。頂上に近づけば近づくほど一歩進むのが辛くなる。でもようやく『イラク水滸伝』本文の最終稿を書き終えた。あとはエピローグと参考文献、写真のセレクト、地図の作成、ゲラ校正、専門家への確認……頂上までまだけっこうあるな…。 ReplyRetweetFavorite
    • 文庫1位が久生十蘭!そそられる!! https://t.co/OWK4Bvakwo ReplyRetweetFavorite
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