パリジャンは味オンチ
公開日:
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
最近フランス料理店の取材をしていたので、ミツコ・ザハー『パリジャンは味オンチ』(小学館101新書)を読んでみたのだが、
めちゃくちゃ面白かった。
パリの人間はスパゲッティのアルデンテも知らず、トイレでは手も洗わないし、
ルックスも中身も素敵な男は全部ゲイだから、パリジェンヌは過酷な競争を強いられているとか、まあ、言いたい放題だが、その言い方がウィットに富んでいて実に笑える。
これを読んでいると、パリの人間はどうしようもなく自己中で、
我慢ができず、欲望まっしぐらで、デリカシーや繊細さは皆無であるが、
自分の気持ちにはストレートで
人情味にあふれ、人生を謳歌している…
と並べていくと、びっくりするくらいコンゴ人に似ている。
そうか、パリジャン(パリジェンヌ)はコンゴ人だったか。
目から鱗が落ちたような気分だ。
☆ ☆ ☆
エンドレスにつづく「移民の宴」の取材。
今度は江戸川区に行き、台湾料理のお弁当作りを見学。
味見をしたが、どれも「台湾の味」がした。
台湾に行くと、何を食べても「ああ、台湾」という味がするのである。
八角や山椒、肉桂など、漢方薬系の香辛料や調味料のせいだと思うのだが、
具体的にはよくわからない。
お弁当をつくってくれた台湾女性のお話も面白く、
毎回思うのだが、この連載は取材だけなら本当にすばらしい。
原稿さえ書かなくていいなら、一生続けてもいいくらいである。
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