ソマリランドで今、話題になってること
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
今、やっと日本でもソマリアの飢饉がニュースになってきたようだ。
では、こっちではどうかというと、ほとんど話題に出ない。
まず、一つには「よその国」の話だということ。
南部ソマリアはソマリランド人にとっては
20年前に別れた妻でしかなく、共感度は非常に低い。
ここソマリランド国内も旱魃で困ってる人は多いようだが、
国際団体が援助に入っているし、食料品の値段も特に上がっていない。
共感度の低さは、ケニアの難民キャンプでもそうだった。
前からの難民は「ニューカマー」(と呼ぶ)に対して、
「この人たちも大変だねえ」くらいの反応だった。
一般日本人とさして変わらない。
ちなみに、ここソマリランドで話題になっているのは、
大統領が異常なほど不人気で、おととい、ある町の大学の卒業式に大統領が出席しようとしたら、一部の学生が自分の靴を脱いで、それを大統領に向けて掲げたこと。
無論、ひどい侮辱だ。
(でもここは民主国家だから、それで逮捕されたりせず、
翌日の新聞の一面写真が載った)
ソマリランドでは一年前の選挙で、
国民待望の政権交代が行われ、
新大統領が歓喜の声で迎えられたそうだが、
期待が過大すぎて、たった一年で国民の9割が失望してしまったそうだ。
一方、野党に転落した元与党もだらしなく、
現在の与党を追求するより、内部の権力闘争や駆け引きに
忙しいとか。
実に先進的な民主国家ソマリランドなのである。
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「20年前に別れた妻」という言葉に、東アジアの分断国家の場合と重ね合わせて色々考えさせられました。
もちろん、自らの意思で(列強の分割支配が理由としてあるにせよ)分離独立したのと、他人の都合で分断されてしまったのとでは全く事情が異なるのでしょうが、ソマリランドは韓国よりも台湾に近い感じがします。ほとんどの国から国家承認されていない点でも一緒ですよね。
でも、3つに別れたソマリアと、エチオピアのオガデン地方に別れて住み、ナイロビでは移民として大きな経済力を持つソマリ人の現状は、東アジア各国にまたがって住む朝鮮民族にも似ていますね。
そういえば日本生まれの在日コリアンも、60年代以降に日本に来た韓国人のことをニューカマーと呼び、心理的に一線引いていることが多いです。