*

また知り合いがノンフィクション賞を受賞!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

小説すばる(10月号)に、開高健ノンフィクション賞の発表が載っていた。
それを見て、たまげてしまった。
毎日新聞の記者で、現在メキシコ支局長の藤原章生さんが受賞しているではないか!
私は藤原さんと二回会っている。
最初は、もう十年以上前だと思うが、私のワセダのアパートに藤原さんがやってきた。
早大探検部OBで毎日新聞の記者をやっている先輩が酔っ払って連れてきたもので、狭い三畳間に三人でひしめいて酒を飲んだ。
二回目は7年前、アフリカのルワンダでばったり会った。
私はNGOの手伝いで行き、藤原さんは取材で来ていた。当時、彼はブラックアフリカ全体をカバーする南ア支局の特派員だった。
このときは、私が彼の部屋で酔いつぶれ、そのまま泊ってしまった記憶がある。
藤原さんはひじょうに鋭利な頭脳の持ち主だが、新聞記者としては相当変人だ。
ルワンダで会ったとき、南アのクッツェーという作家について熱く語っていた。
クッツェーは藤原さんに聞くかぎり、すごくシュールな小説を書く人のようだった。
たしか、藤原さんは「アパルトヘイトなんかは時代が変れば、それに抵抗した話は古くなってしまうが、この作家の小説は古くならない」と力説していたような気がする。
ある意味では、時々刻々と変っていく今を切り取る「新聞記者」という自分の職業を否定しかねない発言で、「ほんとに変ってるなあ」と思ったものだ。
今回の受賞作品はそのクッツェーをテーマにアフリカを論じたものらしい。
早く読みたいものだ。
しかし、応募制のノンフィクション賞というのは、小学館ノンフィクション大賞と集英社の開高健ノンフィクション賞が二大メジャーなのだが(ていうか、他にあるんだろうか)、今年の受賞者は二人とも知り合いだったというのは、あらためて驚きである。
ともかく、藤原さん、受賞おめでとうございます!

関連記事

no image

原宏一氏との対談がウェブ登場

昨日まちがえて「タカタカ対談リターンズ」と書いたが、 「タカタマ対談」でした。 まさか「本の雑誌」の

記事を読む

no image

人間失格+坊ちゃん=三畳記

「SPA!」のインタビュー記事「エッジな人々」が掲載される。 「見ましたよ、エッチな人々!」と何人か

記事を読む

no image

こんなことをやってる場合か

重要事が押し迫るほど、人は余計なことをやりたがる。 明日の出発に備え、歯磨き粉と爪きりと電池を買い

記事を読む

no image

ギックリの元はこの本でとれた

まったくげっそりした一週間だった。 せっかくここ数年でかつてないくらい体調も体力もあがってきた

記事を読む

no image

『メモリークエスト』文庫の装丁はすばらしい!

『メモリークエスト』(幻冬舎文庫)の見本が届いた。 単行本のカバーは正直言って気に入らなかったが、

記事を読む

「Brutus」にて“辺境小説”を紹介

現在発売中の「Brutus」1.1/1.16合併号の特集は「夢中の小説」。 私も「小説の世界で見つ

記事を読む

no image

犬の力

前に評判になったミステリに『犬の力』とか言う本があった。私にはあまり面白くなくて途中で止めて

記事を読む

no image

幻の旅人、復活!

「旅行人」2010年上期号が届いたので、じっくり読む。 いつにもまして、マニアックな現地情報と美し

記事を読む

no image

僕が、落語を変える

私は自分のことを「文芸人」だと思っている。 文章を芸とする芸人であるという自覚だ。 だから、「芸人

記事を読む

no image

今明かされる「野々村荘秘話」

  新国劇の島田正吾が亡くなった。  「新国劇」など、私には何の関わりもないと思うだろうが、多少の縁

記事を読む

Comment

  1. 藤原章生 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; AOL 7.0; Windows NT 5.1)
    高野さん、久しぶりです。受賞のことを書いてくれて、ありがとう。これも相対評価ですのでなんともいえませんが、私はそんなに変わってませんよ。私の勤め先では、平均値の上下20%に入る程度です。
    またどこかで会いましょう。
    藤原

  2. 西牟田 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; i-NavFourF; .NET CLR 1.1.4322; Lunascape 3.0.0)
    こっちは新潮ドキュメント賞落選です。苦笑

  3. タカノ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)
    >藤原さん、
    いま私は毎日をとっているので、藤原さんのニューオーリンズのルポも読みました。相変わらず臨場感があり、よかったですよ。
    >西牟田くん、
    君の「僕の見た大日本帝国」(情報センター)は大宅賞か講談社ノンフィクション賞をきっと取りますよ。
    そうすれば、今年は私の知り合いがノンフィクション賞を三つとることになる。
    だいたい、新潮ドキュメント賞の候補になること自体がすごい。
    その前にノンフィクションがベストセラーになること自体がすごいんだけど。
    いくら書いても売れないし、賞にも無縁な私はほんとうにそう思います。

  4. 西牟田 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; ja) Opera 8.5
    講談社の賞は候補にすら選ばれませんでした。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年7月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031  
PAGE TOP ↑