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マスクマンになりたい

公開日: : 最終更新日:2014/12/04 高野秀行の【非】日常模様

2014.10.29honya
旧ユーゴ(主にコソボ)の取材が終わってだいぶ経つ。
ブログで写真をお見せしようと思っていたのだが、アップロードする方法がわからなくなってしまい、
できずじまい。今年は写真力を10%くらい(だっけ?)アップしようとしたのに、
前に簡単にできたことができなくなり、写真力アップどころかすでに私の脳が晩年の気配である。

仕事と雑務は相変わらず山積し、もちろん読書と飲酒も欠かせず、
そうこうするうちにひどい歯痛に襲われて悶絶するなど(歯茎に雑菌が入ったためらしい)、
想定外の危機にさらされ、歯痛が終われば原稿が進まず「迷いの森」に入ったきり出てこれない。
3日間、一行も書けていないが、今日は書けるんだろうか?

     ☆         ☆          ☆

今年はインタビューがひじょうに多い。
そのうち2つが昨日、今日と立て続けに発売になった。
両方とも衝撃である。

一つは「AERA」。「40歳のときどうだったか、先輩にお話をうかがうという企画です」と
取材者の人に言われて絶句してしまった。
おい、いつの間にそんな歳になってたんだ、俺。
ついこの間まで学生だったと思ってたのに。
雑誌の紙面で見ても、やはり役に立ちそうなことは何も言ってない。はあ。

もう一つは洋泉社ムック「本屋はおもしろい」
こちらは、話の内容は本屋のことなのでいいが、写真が…。
なにしろこのムック、表紙でわかるように最大の売りは壇蜜インタビュー。
いや、これはムックの企画としても、読書界を盛り上げるためにも大正解だと思うが、
その直後に壇蜜さんと同じ大きさで私の間抜けなおっさん面が現れるのはどうなのか。

私は思わず「うっ」とうめいて、本を閉じてしまった。
見るにたえん。
ムックの企画としても読書界を盛り上げるためにも、もっと若くて人気のあるイケメンの作家にすべきだろう。
小説家ではパッと思いつかないが、ノンフィクションなら角幡唯介とか石川直樹とか。

とにかく私はルックスが悪い。テレビはもう、よほどのことがないかぎり出演しないつもりだが、
それも第一の理由は、自分が動いて喋っている姿が全国に放映されるのが嫌だから。
でも、自分は村上春樹でもなければ尾田栄一郎でもない。
頼まれればインタビューにも応じて、少しでも自分の存在をアピールしなければ生き残れない。
当然だろう。

そこで思ったのである。
マスクマンになるというのはどうだろう。
要は話をするのが嫌なのでなく、自分の顔が嫌なんだから、マスクをかぶればいいのではないか。
そうしたら、読者にも迷惑をかけないし、私ももっと伸び伸びと質問に答え、インタビュー自体もよくなる可能性すらある。

いや、これは真剣に思っているのだけど、これからマスクマンとしてデビューするのはダメだろうか。
単行本や文庫の著者近影もマスクマン。でも本名…というのはちとおかしいが、
別に素性を隠す覆面作家ではないから仕方ない。
どうしても整合性をつけたいというなら、スーパーストロングマシン3号とか
ザ・グレート・タカノという名前で登場してもいい。

壇蜜さんのあとにマスクマン作家が登場したら、読者は喜ぶし、
読書界もさぞ盛り上がると思うのだが。

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Comment

  1. ほげほげ より:

    サングラスしてみるのはいかがでしょうか

  2. 黒猫太郎 より:

    そんなに、悪いルックスとは思えないんですが^^

  3. 西嶋 より:

    本多勝一氏は
    サングラス&カツラ
    馳星周氏は
    サングラス&金髪
    さいとう・たかを氏は
    アーミースタイル

    高野さんも民族衣装か民族ラフスタイル&サングラスなどいかがでしょうか?
    高野さんの本を読みこん
    でないコメントテーターや読者にも,何をしてる方なのかビジュアル的に分かりやすいとおもいます。

    • 高野秀行 より:

      うーん、考えてみれば、サングラスをかけると「かっこつけてる」と思われるんですよね。
      私は顔をさらしたくないだけですから。

      民族衣装でコスプレに徹するのはいいかもしれませんが、
      何にすべきか…。
      イランやアフガンのブルカなんかは顔まですっぽり覆うのでいいかもしれません。

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    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
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