超能力は誰にでもあるもの?
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
4年前、関西ローカルの深夜番組にレギュラー出演していたことがある。
関西テレビ「未確認思考物隊」がそれだ。
関テレのディレクターFさんが私の本の読者で、「ぜひ何か番組をやりたい」というので、
「オカルトをテーマに、でもその真偽を問うのではなく、その状況を客観的に論議するという番組をやりたい」と答えた。
当初は私と大槻ケンヂさんという2人の「ムー脳人間」がメイン・レギュラーを務めるという計画だったが、オーケンさんは多忙なので準レギュラーとなり、代わりに「チョイヲタ」で知られる(今ではむしろ「嵐」の熱狂的ファンとして知られている)竹内義和さんと組むことになった。
とりあげたのは、ツチノコ、超能力、心霊、予言、都市伝説、UFO、妖怪などなど。
毎回、そのテーマに詳しい「専門家」をゲストに招いて、詳しい話を聞いた。
専門家といっても2種類いて、一つはそれを研究している人。
もう一つは実際に宇宙人と交流できたり、超能力を使えるという「能力者」である。
この番組をやって、いちばんはっきりしたことは、オカルトの真実より、「私はテレビに向いてない」という事実だったが、それはさておき、毎回とても興味深い話が聞けたし、
面白いものを見ることができた。
個人的に最も衝撃だったのは、宇宙人と定期的に交流をもち、超能力者でもある秋山眞人氏であった。
番組で秋山さんが何を喋ったのか全く憶えていないが、問題はそのあと。
舞台裏でメイクさんにドーランを落としてもらっていたとき、たまたま隣に秋山さんが座った。
私は当時、重い腰痛に悩まされており、このときも椅子に座っているだけで辛い状況だったから、何も考えずに、つい秋山さんに「超能力で腰痛は治らないんですか?」と訊いてしまった。
すると、秋山さんは「あ、治せますよ。ちょっとやってみましょうか」と言う。
「え、今?」と訊いた私のほうが驚いた。誰か超能力で腰痛を治せる人を紹介してくれないかくらいの気持ちだったからだ。
でも、髭を生やしていかつい容貌にかかわらず、ひじょうに腰が低くて気さくな秋山さんは
そのまま私の後ろに立って私の腰椎の辺りを軽く何度か叩いた。
「立って下さい」というので立ち上がったら、あら、びっくり。
腰の痛みが五割から七割軽減しているのだ。
「あれ〜? よくなってる!」間抜けな声を出してしまった。
他の出演者やスタッフもすぐ脇にいたが、ディレクターのFさんやたしかオーケンさんもいたと思ったが、みんな、「暗示でしょう?」とか言って笑っていた。
しかし、こっちは笑い事ではない。
なにしろ、一時的にしろ、こんなに楽になったのは数ヶ月ぶりだった。
この状態は東京の自宅へ帰るまでずっと続き、だが翌日にはいつもの腰痛がぶり返していた。
以上の経緯は拙著「腰痛探検家」に詳しく書いている。
あれは今思い出してもすごく不思議だ。
本物の超能力にしても暗示にしても、1分のやりとりで一晩くらいはあれほどの痛みが消えてしまう。一体何だったのかと思う。
また別の回、「超能力」では定番のスプーン曲げを見せてもらった。
やったのは「魔法使いアキット」という若者。
かっちかちのスプーンをそれこそ水飴のようにぐにゃぐにゃ曲げていく。
ゲストは「職業欄はエスパー」(角川文庫)で「清田君」こと清田益章氏や前述の秋山さんなどに徹底取材していた森達也氏。
スプーン曲げはさんざん見慣れているはずの森さんも「おおっ!」という感じで、
目を丸くしてそれを見ていた。
秋山さんもアキットさんも「これは誰にでもある能力です」という。
「治す(曲げる)イメージをもつことが大事です」とも言う。
でも、実は二人の立場は全然ちがう。
秋山さんはあくまで「能力者」であり、アキットさんはビジネス上はっきりとは言わないが、かぎりなく「パフォーマー」のスタンスである。
しかし、あの固いスプーンがどうやってトリックで曲げられるというのか。
しかもアキットさんは軽く握っているだけで、力を入れている様子もない。
と思っていたら、番組が全部終了したあとの打ち上げでまた驚いた。
この番組の準レギュラーには俳優の松尾貴史も出演していた。
松尾さんは超能力や心霊といったオカルト現象を一切信じていないらしい。
信じていないのに、その手のことにものすごく詳しい。
いろんな事例を挙げて、鋭い舌鋒で能力者を追及する。
そこが松尾さんの最も謎めいた部分だったが、オーケンさんんが「いや、日本でいちばんすごい超能力者は実は松尾さんなんですよ」と言うのだ。
てっきり冗談だと思って、でも冗談にしては意味がわからないと思いつつ笑っていたら、
打ち上げの席上でいきなり松尾さんがスプーンを手にとってぐにゃぐにゃ曲げだしたのである。
その手つきはアキットさんと同じかそれ以上になめらかで、
呆気にとられてしまった。
で、松尾さんは言うのだ。
「こんなの、誰にでもできますよ」
誰にでもできるって、何なんだろう。
例えば、私にはできない。多くの人にはできない。
意味もよくわからない。
トリックという意味なのか、超能力は誰にでもあるってことなのか。
ていうか、誰にでもある能力なら、それは超能力ではなく、ただの「能力」だろう。
…てなことを思い出したのは、森達也さんの新作「オカルト 現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ」(角川書店)を読んだからだ。
この本には冒頭部分で「未確認思考物隊」の場面もちらっと出てくるし、秋山さんもしばしば登場する。
今日のこの話に興味を持った人には面白いこと間違いない。
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Comment
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プロレスと同じくらいに、私が好きな分野の話しです^^
森さんの『スプーン』も、改題まえの『職業欄はエスパー』と併せていまだに愛読書です。
秋山さんや松尾さんとお会いになられてるんですね〜^^
やっぱり作家さんにはそういう機会があるんですね。
その手の分野に対する、高野さんのスタンスが気になります。
そのうち教えてください。
森さんの新作、急いで買いにいかなくては!!
情報ありがとうございました!
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今日のこの話に興味を持って、本にも興味を持って、番組にも興味を持って、何より松尾さんに興味を持ちました。斜に構えたウンチク屋ぐらいにしか思っていなかったのに。ああ番組の動画さがそ。高野さんの経験・体験談を綴ったブログはこれまた面白いですね。
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プロレスとオカルトは森達也氏曰く「親和性がある」んですよね。
森さん自身、プロレスの大ファンだし。
作家にそういう機会があるわけじゃなく、テレビに出るといろんな有名人と出会う機会があるというだけです。
で、私はテレビに向いてないとわかったので、もうそんな機会もないわけで(笑)。
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テレビ。。。向いてないですか?^^
未確認思考物隊、見てみたかったですね〜。
で、森さんもプロレスファンですか!^^
高野さん同様、『プロの』プロレスファンなんでしょうね〜。
あ、昨日早速『オカルト』購入してきました。
『木村政彦はなぜ・・・』ほど高価じゃなかったので、何とか入手できました^^;;
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高野さんの腰痛の原因として、神経障害性疼痛である可能性があります。交通事故などでも、長い間痛みにさらされると人間は痛みなどの感覚受容器と脳の関係が少しおかしくなって慢性疼痛に悩まされることが有るようなのです。
下記のwikiに詳しく記載されています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/線維筋痛症
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私もオカルトに興味大です。
高野本の中の写真を全てジックリ見て、心霊写真を探したり
してたくらいです。(ヒマ〜な時期があったため)
「未確認思考物隊」、私も見てみたいです。
どこかで見れないでしょうか。
「オカルト」早速、予約しようと思ってます。