酒飲みにやさしいイスラム国
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
半年間のトルコ遊学から帰国して間もない慶応大学の学生S君にトルコの話を聞いた。
場所は阿佐ヶ谷のトルコ料理店「イズミル」。
トルコ料理は洗練されているし、酒もビール、ラク(アニス酒、ギリシアのウゾと同じ)、ワインとなんでもあり、どれも旨い。
話を聞けば、現地でも酒もふつうに飲まれているという。
特にラクは「日本の演歌じゃないけど、おっさんがよく酒場で一人酒している」とか。
これは意外。
というのは、ヨーロッパ以外で、私は現地の人間が一人で酒を飲んでいるのを見た記憶があんまりないからだ。(たまに見かけると、たいていはアル中である。)
トルコはイスラム圏のくせに、相当飲酒についてはゆるやかなようである。
実は、先週、チュニジア料理店「ハンニバル」の2号店オープニング・パーティにご招待を受けて行った。
チュニジアもワインがうまい。現地でもふつうに飲んでいるという。
また、「ブカ」というナツメヤシから作る焼酎もあり、これまた現地のムスリムが日常的に飲んでいるらしい。
今は、イスラム諸国は、どこもいわゆる「イスラム原理主義」の波が押し寄せ、女性がベールをかぶるだとか、飲酒を厳しく取り締まるとか、面倒なことになっていると聞く。 つい最近まではかなり穏健だったインドネシア、バングラデッシュ、エジプトなんかもどんどんキツくなっているようだ。
その中にあって、トルコとチュニジアの健闘(?)は特筆に価する。
まさに「酒飲みにやさしいイスラム国」で、ともに、「行ってみたい国」の一つだ。
と、言いながら、またミャンマーに行くのだが…。
関連記事
-
-
『誰も国境を知らない』
西牟田靖『誰も国境を知らない』(情報センター出版局)の書評を 「北海道新聞」に書く。 新聞の書評は
-
-
トルクメニスタン特集
毎回ディープな特集で楽しませてくれるバンコク発の特殊月刊誌「G-Diary」。 ちょっと遅くなって
-
-
可哀想なレビュアーの話
角田光代の『紙の月』(角川春樹事務所)を読んでから、アマゾンのレビューを見た。 「駄作です」という
-
-
アフガンの謎を千葉で解く
火曜日、『アジア未知動物紀行』の最後の著者校正をやっていたら、 校正係から困った指摘を受けた。 アフ
-
-
宣教師ニコライのファンになる
今、「移民の宴」で在日ロシア人取材をやっているので、その資料として中村健之介『宣教師ニコライと明治
-
-
「イスラム飲酒紀行」気持ちは早くも第2弾
今月25日に発売予定の新刊『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)の予約受付がアマゾンで始まった。 なぜかわ
- PREV :
- 新作『異国トーキョー漂流記』見本届く
- NEXT :
- 『異国トーキョー漂流記』