*

顔写真なしでよかった

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)の
全作業が終了した。
今回、講談社文庫に初めて入るので、
著者ごとに統一される背表紙の色を決めた。
選んだのはオレンジ。
東野圭吾と間違えて買う人を見込んでのことだ。
もう一つ、プロフィールのチェックで気づいたのだが、
講談社文庫には著者の顔写真がない。
これはいい。
前から常々、文庫の著者の写真はいただけないと思っていた。
だって20年も同じ写真を使いつづけるのだ。
それで20年くらいたつと、突然現在のものに変える。
いきなり20歳、年をとっていて、浦島太郎状態だ。
集英社文庫の私の顔写真だって、すでに9年前のものだ。
しかも、今の妻とまだ結婚する前、彼女が「新しいデジカメを買ったから」といって
そこらへんの景色とか犬とか私の顔とか試し撮りしたうちの一枚。
著者プロフィールというのは読者側からしたら貴重な情報源なので
けっこう熱心に見るが、作り手、つまり著者と編集者にとっては
やっと本文もカバーデザインも決まって、疲れ果てたところで、
最後の最後に「まあ、こんなんでいいですかね」とつぶやきながら適当につくる。
そのとき(2003年)も作業終了直前になって、編集者から「顔写真を一枚ほしい」と言われていたことを思い出し、
でも顔が大きく写っているものが他にまったく見当たらないので
面倒くさいし、てきとうに3年前に撮ったその写真を使った。
わりとコワモテ風に映っているので、当時の私としてはそれでハッタリをかましたかったということもある。
それが延々と掲載されつづけているというわけだ。
今ではあれとはかけ離れた顔になっていて、
初めて会う人にはときどきキョトンとされる。
あと十年すると、突然、好々爺みたいな私の顔に変わる…というのも困った話で、
やっぱり文庫の顔写真はないほうがいいと思う。

関連記事

no image

藤岡弘はキリヤマ隊長か

子供のころ夢中になっていたウルトラセブンを見たくなり、DVDを購入、第5話から第8話まで見たが、あ

記事を読む

no image

2013年小説ベストワン決定

風邪は治ったものの今度は咳がひどく、声もがらがら。 とくに夜になると咳が止まらず苦しい。 朝

記事を読む

no image

こういうときこそ日常

あいかわらず地震のニュースはひどい。 でもあまり悲惨な映像を見続けていると精神的に参ってしまうので

記事を読む

no image

私の目は節穴

前からうすうす気づいていたことだが、この度私の目が節穴だということが判明した。 なぜなら茂木大輔『

記事を読む

no image

「本の雑誌」存亡の危機

ご存じの方も多いと思うが、世界同時不況のあおりを食らい、 本の雑誌社の経営が突然悪化し、 「本の雑誌

記事を読む

no image

雪男

第七回 開高健ノンフィクション賞の発表があり、 中村安希『バックストリートの旅−ユーラシア・アフリカ

記事を読む

no image

探検部の後輩、パキスタンで銃撃される

下北沢で某社の編集者と打合せを兼ねて飲んでいた。 本題前の雑談で「パキスタンというのは意外といいとこ

記事を読む

no image

「ダカーポ」に書評が載る

 新作『異国トーキョー漂流記』が「ダカーポ」(3月2日発売)という雑誌の書評欄(「旬の本」というやつ

記事を読む

no image

小橋ファン、誕生!

暴れん坊の甥っ子(小1)がうちに遊びに来たので、プロレスのDVDを見せてやる。 数年前の三沢光晴V

記事を読む

no image

重版ラッシュ

二日前、「幻獣ムベンベを追え」と「巨流アマゾンを遡れ」がそれぞれ三千部ずつ重版になった。 両方とも単

記事を読む

Comment

  1. komari-ko より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.0; .NET CLR 2.0.50727)
    >東野圭吾と間違えて買う人を見込んでのことだ。
    あはは〜さすがです!(笑)
    あと、著者の顔写真。マンガ家さんなんかは自画マンガ像だったりもしますよね。あれちょっとモヤモヤします。
    マンガ家なんだからうまいはずだし似てるんだろうけど、謙遜も入ってるだろうし、あれを似てると信じていいのかどうかが不明だから。
    >やっと本文もカバーデザインも決まって、疲れ果てたところで、
    >最後の最後に「まあ、こんなんでいいですかね」とつぶやきながら適当につくる。
    ↑これ、なんか読者なりにわかってる気します。
    だってみなさん力の抜けた写真が多いですからね。
    でも選挙ポスターばりの写真は見たくないので、これからも脱力気味の写真でお願いします。
    やっぱり何年も前の写真でも著者の雰囲気だけでも見たいんですよね〜。

  2. 天野 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; YTB720; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.04506.648; .NET CLR 3.5.21022; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; YJSG3)
    タマキングのように鼻と口だけを写した著者近接影とか、ちょっとひねって著者頭頂部影とか、著者尻影とか、はるか遠くから写した著者遠影とか、そういうのはやったらダメなのですか?

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年11月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
PAGE TOP ↑