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ソマリ人の好きな意外な食べ物

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

みなさん、新年明けましておめでとうございます。

とはいうものの、私自身は正月を迎えた気がしない。
年末年始はソマリ人の若者が12日間も家に泊まっており、その面倒をみるので手一杯だった。

年末の間はソマリ料理を作っていたが、妻に「羊やヤギはもう飽きた」と言われたし
(クリスマスイブはヤギ汁)
ソマリ料理は酒の肴に不向きなので、私でもさすがに他のものが食べたくなる。
大晦日の晩からはいつものご飯+正月料理に切り替えたのだが、
たまげたことにソマリ青年はほとんど何一つ食べることができなかった。

豚肉の類と酒はイスラムの戒律上アウトだからしかたないが、生もの、魚介類、牛乳以外の乳製品、
さらには焼き鯖寿司、年越しそば、鍋、もち、焼き魚、すべての炒め物&煮物&サラダ…ととにかく一切ダメ。

来日してまもないのならわかるが、彼はもう1年半近くも日本に住んでいるのだ。
なのに、醤油を指さし、「これは何?」と訊く。なめてみても「うーん…」と怪訝そうに顔をしかめるのみ。

どうしてこんなに食の幅が狭いんだろう。
結局、彼が食べられるのはソマリ料理の他は、牛丼、ファミリーマートのチキン、クリームシチューと麻婆豆腐が若干くらい。
子供が好きな、味の濃い洋食風の料理ならちょっとは食べられる。
でも、彼の味覚は繊細を通り越して過敏で、
同じチキンでもケンタッキーのフライドチキンは食べない。あの皮が苦手らしい。

ごま油はソマリにもあるから、牛しゃぶのごまだれというメニューを出したら、
やはり一口で箸を置いた。
どうもゴマはゴマでもソマリのものとはちがうらしい。牛肉はふつうのだし。

私が作ったソマリ料理以外のもので唯一彼が気に入ったのはツナとマヨネーズをぶっかけたご飯。
昔、私が早稲田のアパートに住んでいたとき、常食としていたやつだ。
毎食、テーブルの料理を一口食べると箸を置き、台所に行って自分でツナマヨご飯を作ってかきこんでいた。

さらに、意表を突いたことにはツナ缶が切れたら、いつの間にか、ごまだれとマヨネーズをご飯にぶっかけて食っていた。
え、いいのか、ごまだれ!?
じゃあ、しゃぶしゃぶは、ごまだれはよくて牛肉がダメだったってこと?

12日間、彼がおいしく食べられるようにと四苦八苦したが、最後にこのごまだれ飯を見て私は「もう無理」と観念した。
そして、疲労感に包まれて、正月は過ぎていったのだった。

そうそう、そういえば、彼が喜んで食べていたものがもう一つあった。
「かりんとう」だ。
「あ、これ、ソマリアにもある。カアカアっていうんだ」

純和菓子だと思っていたが、かりんとうはソマリア起源だったのか…
なんて、わけないが、もう頭が働かなくてぼんやりするだけの私だった。

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    • しかし、3作連続で福島正実訳はびっくり。この人の訳文は明朗かつ深みがあり、会話文はともかく、地の文章は40年たっても全然古びていない。 ReplyRetweetFavorite
    • SF古典宇宙の旅・第4弾は『鋼鉄都市』アイザック・アシモフ(福島正実訳、ハヤカワ文庫)。ストーリーより世界描写中心なので、テンポはイマイチだが、よくSFとミステリと人間ドラマを組み合わせている。反宇宙人の群衆が歌う「くされ宇宙人」には爆笑。 ReplyRetweetFavorite
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