*

名著復刊!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

知らなかったが、本屋大賞では現在絶版になっている本の復刊も訴えているらしい。
それに応え、集英社文庫で、広瀬正というSF作家の小説『マイナス・ゼロ』が復刊された。
読んでビックリ。
もう二十年以上も前の作品なのに、古さをまったく感じさせない。
タイムマシンものとしてはさほど意外性のあるストーリーではないが、
懐の広い美しい文章と
「時間旅行」の丹念な描写はそれを補って余りある。
すっかり持っていかれてしまった。
テレビ番組は半分以上再放送でいいと前から思っていたが、
出版も同じなのかもしれない。
ときどき「文庫のタマがない」という話を聞くが、
現代のつまらないものを無理に出すより
昔の名著を復刊したほうがよっぽどいい。
たとえ私のように現代の書き手が多少困ったとしても、だ。
そう思わせる名著なのだった。

関連記事

no image

謎の独立国家ソマリランド大吟醸拾年古酒

仕事場にしている「辺境ドトール」は昭和の世界だ。 店長夫妻が常に店におり、私たち常連の客と交流

記事を読む

no image

今年も奇書で行きます

新年あけましておめでとうございます。 今年は高野本プチバブル最終年になる。 新刊、文庫合わせて5冊

記事を読む

no image

酒浸りなのかと言われても…

私の数ある悩みの一つは、初対面の人に「これが私の書いた本です」とさっと渡せるような本が一冊もないこと

記事を読む

no image

奇跡のリンゴ

ブームが過ぎたベストセラーほど、読む気にならない本もない。 でも今は在庫一掃読書。 石川拓治『奇跡

記事を読む

no image

天国再訪

東京はたいへん暑いそうだが、チェンマイは依然として涼しい。 ふと、思い立ち、6,7年ぶりにチ

記事を読む

no image

犬連れ旅はつづく

 犬との旅を終え、やっと東京に戻ってきた。思えば、ずいぶんいろんな場所へ行った。 いわき市と南

記事を読む

no image

春日部がブータンを支配している

今回、私が一緒に共同調査(?)を行ったブータン国立生物多様性センターの所長は 本人はロンドンとオース

記事を読む

no image

驚嘆のユーゴ・サッカー三部作

山田先輩は四万十に帰ってしまいサッカーファン強化合宿は終了してしまったが、 その後も自主練はつづい

記事を読む

no image

ボロボロのデビルマンみたいなやつ

月曜日、ヒストリーチャンネルの取材が終わったあと、 探検部の現役学生3名と飯を食う。 うち二人はニュ

記事を読む

カーンとハーン

「すごくおもしろそう」と妻が買ってきたインド映画「マイネーム・イズ・ハーン」。  DVDの表紙を見

記事を読む

Comment

  1. komari-ko より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.0)
    >テレビ番組は半分以上再放送でいいと前から思っていたが、
    ほんとですね!目からウロコ!(ウンコじゃないですよ
    高野さん絶賛の「マイナスゼロ」帰省のお供にします。

  2. amano より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322)
    高野さん、「マイナス・ゼロ」は1970年に発表された作品なので、38年前になります。広瀬正全集という形で文庫化されたのが1982年です。まあどうでもいいことかもしれませんが。
    個人的には広瀬正の小説第2作「ツィス」の方が好きです。

  3. タカノ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    え、38年前?!
    でもそうですよね、時代設定や著者の逝去した年齢から考えても。
    ますます感心しますねえ。
    今月21日にその「ツィス」が出るので楽しみです。
    集英社文庫ではしばらく毎月広瀬正全集復刊がつづくらしいです。
    嬉しいですね。

  4. amano より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322)
    広瀬さんは1970年から作家活動を本格的に始めて、72年に亡くなられたため、出版された本は全部で6冊なんですよね。
    「マイナス・ゼロ」(直木賞候補)
    「ツィス」(直木賞候補)
    「エロス」(直木賞候補)
    「鏡の国のアリス」「T型フォード殺人事件」「タイムマシンの作り方」の6冊です。
    全部復刻されると素晴らしいですね。
    (ちなみに高野さんと同い年の私は中坊の頃に全部読みました)

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • タイ北部の狩猟採集民ムラブリの言語を研究している伊藤雄馬さんとの対談が掲載された。ムラブリも不思議だが、ムラブリ語を研究するうちに自分もムラブリ化してしまい、大学を辞めて日本国内で雑草を食べたり野宿したりしているという伊藤さんに驚… https://t.co/0U6LK1DK8z ReplyRetweetFavorite
    • RT : 「考える人」に、『言語の本質』の著者・今井むつみさんと、ノンフィクション作家の高野秀行さんの対談が掲載。『言語の本質』、『語学の天才まで1億光年』、『言語はこうして生まれる』の3冊を導きの糸として、AIと言語について語る前後編です。ぜひご一読… ReplyRetweetFavorite
    • これは読まねば。 https://t.co/29uT6pDwvB ReplyRetweetFavorite
    • 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。… https://t.co/pC6nt2SdzF ReplyRetweetFavorite
    • RT : 高野秀行さんのインタビューです。海外で大切なのは「相手をリスペクトすること、そして好奇心を持つこと」。 インドで身ぐるみ剥がされて気づいた異文化コミュニケーションのヒント。探検作家・高野秀行の多様性社会論 | コトナル - Yahoo! JA… ReplyRetweetFavorite
    • 『イラク水滸伝』の再校ゲラが届いた。恐ろしい分厚さ。次回は絶対に薄い本にしようと改めて心に誓う。ともかく中休みは終わり、これから約10日間が最後の山場だ〜 ReplyRetweetFavorite
    • 気を取り直して、これから少しずつ読みます。 https://t.co/1QtzRdWBVL ReplyRetweetFavorite
  • 2023年6月
    « 3月    
     1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    2627282930  
PAGE TOP ↑