*

板みたいなもん…

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

実家の親に頼まれ、新しいパソコンのセットアップに行ったのだが、
niftyのありえないようなシステム上の欠陥と同社サポートセンターの無責任ぶりのおかげで
結局丸一日つぶしてしまった。

ぐったりと疲れて、ビールを飲んでいたら、母が「そういえば、お正月、あんたがうちにつれて来たソマリ人の人たちは
なんだか板みたいなもんで写真撮ってたねえ。あれ、なに?」

板みたいなもん…。
ここは冷静を保たねばと自分に言い聞かせた。

「うーん、それはねipadっていう新しい機械なんだよ」

「どうしてアフリカの人がそんなもん持ってるのよ?」

「いや、だから、日本に住んでるからだよ」

「アフリカであんなものを見せたらみんな逃げちゃうだろうな。魔法の板だって」と父。

「(絶句しつつ)…いや、そんなことないって。つうか、町の若者はみんなネットやってるんだから。フェイスブック大好きだし」

フェイスブックを知らないため、両親は無反応。しかたなく「ipadだって知ってるよ」

すると母が
「そんなわけないでしょ。日本人だって見たことも聞いたこともないんだから!」

「……」

いや、すごいな、八王子。ていうかうちの実家。ソマリア以上の辺境だ。
さすがiPhone(ソフトバンク)の電波が入らないだけある。

なんだか少し癒された。文明生活から離れるために外国に行く必要はもうない。
もう少し頻繁に実家に帰り、親と話をするのも楽しいかもしれないと思ったのだった。

関連記事

no image

日本人はサッカーをビルマ人から学んだ

二週間前くらいだろうか、電車に乗っていたら突然、啓示が下りた。 「スローに生きよ」 そういう声が聞こ

記事を読む

no image

ブータンはチベットではない

日本で入手できる唯一のブータン映画ということで、 5000円近くも出して「ザ・カップ 夢のアンテナ

記事を読む

no image

私の出演するラジオ・テレビ番組がなぜ面白くないのか

今年はテレビ2本、ラジオはけっこうな数に出演した。 毎月一回は何かに出ているだろう。 が、正直言って

記事を読む

no image

くどくどかぱらぱらか

比較的調子よく来ていたブータン原稿がうまくいかなくなってきた。 逃避の意味合いもあって、ある作家の

記事を読む

no image

ロスト・シティZ

最近、突然読書量が増えたのは、仕事のあとや合間でなく、 始まる前に机に向かって本を読むようになった

記事を読む

no image

オネエとイケメンの偉大なる力!

毎週火曜日の朝は、杉江さんの「炎の営業日誌」を読むのは日課なのだが、 今日は途中からいきなり「オネエ

記事を読む

no image

アスクル人、カンヌを制す!?

『アスクル』に登場している沖縄の映画プロデューサーの井手君が上京、またうちに泊まっている。 毎晩、真

記事を読む

no image

イルカ人間

巣鴨で行われた水泳のマスターズ大会に出場、クロール、バック(背泳ぎ)、ブレスト(平泳ぎ)の 3種目を

記事を読む

no image

原発君とインド人

今日も原発君は元気なようである。 原発を憎むとかえってよくないような気がして、 親しみをもたせて、心

記事を読む

no image

多忙で読書が進む

テレビの仕事は別に辛くないが拘束時間の長さが問題だ。 一方で移動時間と待ち時間が異様に長いので 皮肉

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年5月
     1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    262728293031  
PAGE TOP ↑