*

大感謝デー

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

金曜日は『謎の独立国家ソマリランド』大感謝デー。

まずは本の雑誌社の杉江さんと一緒に多磨霊園へ行き、集英社の編集者だった堀内倫子さんのお墓参り。
前にもブログに詳しく書いたが、堀内さんは『ワセダ三畳青春記』『異国トーキョー漂流記』など
私の本をいくつも担当し、技術も教えてくれた「プロデューサー」であった。

今回の『謎の独立国家ソマリランド』も、堀内さんから学んだことがなければ技術的に書けなかっただろう。
また『困ってるひと』や『わが盲想』のプロデュースも堀内さんゆずりの編集技術をそのまま応用したもので、
結果的にいえば大野更紗さんやアブディンは彼女の孫弟子みたいなもんだ。

アブディンにいたっては、本人を直に堀内さんに紹介していた。
ネタだしの原稿を読ませたら、「これは本当に金の卵ね」と感激し、その後アブと二人で会ったり電話で話をしたりして
急逝する直前まで企画を進めていた。私への最後のメールもアブの原稿について書かれていた。
アブも『わが盲想』のあとがきで「この本を堀内さんに捧げます」と書いている。

なので、『謎の独立国家ソマリランド』大ヒットと『わが盲想』発売のご報告に行ったのだ。
堀内さんはきっと喜んでくれたと思うが、同時に「高野さん、本が一冊ちょっと売れたからっていい気になってる場合じゃないわよ。
はっきり言ってそんなのヒットのうちに入らないし。早く次の本、書きなさい!!」という叱咤の声も聞こえた。

ちなみに、霊園前の花屋さんのおばさんは、「置き引きや泥棒が多いから注意してくださいね」「ほんとうに危ないから」と
まるでここが南部ソマリアかのように繰り返していたが、特に何もなかった。
40歳すぎて派手なキャップをかぶったオヤジ二人はどう見ても「盗られる側」より「盗る側」に見えたのかもしれない。

昼飯を食ってから本の雑誌社に行き、今度は職人カネコッチと一緒にソマリ映像制作。
イベントや講演会で使えるような写真と映像のセットを遅まきながら作ることにしたのだ。
自分の写真撮影と整理能力のなさ、映像を撮ろうとする意欲の欠如などに深く失望しつつも、
カネコッチのおかげでなんとか叩き台は作ることができた。

そのあと、社長の浜本さん以下主な社員のみなさんと、『謎の独立国家ソマリランド』ヒット記念飲み会。
というか、みんなで打ち上げもやってないので、やっとこれが打ち上げだ。
小さい会社はこういう点がいい。集英社や講談社で、社長から営業、編集が集まり、社内で打ち上げなんてありえない。
辺境ドトールの後援会長Yさんにいただいた福井の銘酒「花垣」のスペシャルバージョン2つを酌み交わす。
一つはこの前紹介した「花垣純米大吟醸拾年古酒」、もう一つは「花垣オーク樽純米大吟醸」。

日本酒を十年も寝かせるとどんな味になるのかと思ったら、ちょっと紹興酒に似た味になっていた。
こちらももちろん旨かったのだが、それを上回ったのがオーク樽純米大吟醸。
純米大吟醸のまとやかな甘みを残しつつ、樽のクールな風味が何とも言えない。

日本酒2本が空になると、今度は水泳のK先輩からいただいた「三鷹キウイワイン」。
三鷹産のキウイから作ったという酸味爽やかな珍品で、
これが濃厚な日本酒を実によく引き継いでくれた。
アルコール度数9度というのも適度で、いつもは日本酒をぱかぱか飲んで最後に撃沈するのだが、
この日は珍しくソフトランディングに成功。
Y会長とKさんに大感謝である。
浜本社長や杉江さんも「ソマリランドがもっと売れたら会社で自転車を買おう!」などと気炎をあげていた。

すっかり幸せな気分に浸り、ほろ酔いで電車に揺られていたら、
「高野さん、こんなことで満足してちゃダメよ!」という堀内さんの声がまた聞こえたのだった。

関連記事

仕事を減らして納豆探究?

慢性的な多忙状態が続いていて、すっかりごぶさたしてしまった。 なにしろ2年ぶりに出た自分の新刊

記事を読む

no image

頑張れ、ミャンマーの柳生一族!

 困ったことになった。  ミャンマー情勢である。  私は「小説すばる」誌で「ミャンマーの柳生一族」と

記事を読む

no image

『腰痛探検家』韓国マンガ版?

韓国語版『腰痛探検家』のレビューは、読者の方々があっという間に正確に翻訳してくれた。 高野本の読者

記事を読む

no image

幻のポスター

最近、出版社が新刊の文芸書のゲラを書店員の人たちに前もって配り、 感想をいただくということがよく行わ

記事を読む

仕事の邪魔になる本を是非!

帰国するなり、仕事と雑務が山積。 って、最近いつも同じことを書いている気がする。 ちょっと前

記事を読む

no image

幸いにも大事には至らず

四倉の状態だが、怪我はしたけど大丈夫で、本人が自ら電話で 「早く現場に戻りたい」と言っていたそうだ。

記事を読む

no image

やせてもかれても私は大家

最近、部屋を片付けていたら こんな紙切れが出てきた。 ワセダのアパート「野々村荘」(仮名)の 大家

記事を読む

no image

ima Somaliland desu

Somaliland no shuto Hargaysa ni iru. hoteru no net

記事を読む

no image

ムベンベは捕獲されていた!!

『怪獣記』刊行に先駆けて、「サンデー毎日」と、 取次ぎ会社・日販のPR誌「新刊展望」のインタビューを

記事を読む

no image

探検部映像50年史のお知らせ

早稲田大学探検部50周年映像史が、早稲田祭の期間中に 早大で上映されることになった。 ほとんどNHK

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • RT : いい本買った。世界各地から来ている難民の人たちが、日本で手に入る食材で作る料理の本。 https://t.co/tSZtHo5Yya ReplyRetweetFavorite
    • RT : 【来店&オンライン】 『ある大学教員の日常と非日常』(晶文社) 『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)刊行記念 横道誠×高野秀行トークイベント 「迷宮めぐりの旅談義」 11/4(金)19:00 「混沌から明晰へ」と向かう作品世界… ReplyRetweetFavorite
    • 「連戦連敗の学習法」とは星の数ほどある語学習得法の中でも史上初にちがいない。 https://t.co/BJYpRz6oka ReplyRetweetFavorite
    • RT : 発売中の「女性セブン」に高野秀行さんの『語学の天才まで1億光年』についてのインタビューが掲載されています!取材、構成は佐久間文子さん。「びっくりするぐらい本格的な内容の本」としながら、高野さんの楽しい文体の理由も明かしてくださっています。 h… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 25以上の言語を学んだノンフィクション作家・高野秀行さんが明かす“連戦連敗”の学習法 https://t.co/odail34l2y 「ぼくは言語おたく、はやりの言葉で言うと『言語推し』ですね」 @… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 高野秀行『語学の天才まで1億光年』 スペイン語=カクカク「平安京言語」他方ポルトガル語は アマゾン冒険でローマ字読みで習ったポル語が全く聞き取れず、ネイティブに学ぶべきだったとしきりに後悔しつつ、両言語を縦横に語る至言の数々 ただスペ語にクレ… ReplyRetweetFavorite
    • 野谷文昭先生、おめでとうございます! この本は、実在した主人公がコンゴ→アマゾン(プトゥマヨ川流域)→独立運動と移行していくという点で、私の『語学の天才まで1億光年』と見事にシンクロしており、本当に驚かされました。 https://t.co/MhFDF26sS6 ReplyRetweetFavorite
  • 2022年10月
    « 3月    
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31  
PAGE TOP ↑