*

ムエタイのちチュニジア飲酒紀行

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

ScannedImage-3
3,4日前に発売になった「ゴング格闘技」7月号で、格闘家・ムエタイ研究家の菱田慶文先生(帝京平成大学)と私の対談が掲載されている。
1万字以上もあり、質量ともにひじょうに読み応えがあり、「賭博と真剣勝負」「ボディキャピタルと安全性」「興業と公平性」「技術の進歩と防御」「ムエタイ・ジムの疑似家族制度」
「教育における格闘技の効果」など、これまでの格闘技論にはなかった視点の話が目白押し。
格闘技・プロレス好きの人、タイ好きの人には、ぜひ読んでいただきたいと思う。

        ☆          ☆            ☆

2013.05.27innshu今年から昨晩は大久保に移転したチュニジア料理店「ハンニバル」で夕食。
ハンニバルは10年以上前に新大久保に開店した。
その頃、たまたま行ったらチュニジア人の陽気でイケメンオーナーシェフと当時新婚で初々しかった奥さんの二人が一生懸命に
料理の説明をしてくれた。料理も素晴らしく、すっかりこの店のファンになった。

その後、ハンニバルは原宿に移転した。
私はチュニジアに行く前に、この店でモンデールさんにチュニジアの酒事情について聞いたのだ。
(その経緯は『イスラム飲酒紀行』に少し載っている)

そして今年の初めから、今度は総武線大久保駅のすぐそばにこぢんまりした店をオープンしたという情報を
あろうことか「おとなの週末」の新宿特集で知り、行って見ることにしたのだ。
モンデールさんはいきなり「アミーゴ!!」とスペイン系でもないのに叫ぶ陽気さで、変わりない。
卵と野菜を春巻きのような皮に包んで揚げた「ブリック」も久しぶりに食べたが、やっぱり絶品。
でも昨日いちばん印象的だったのは中東に広く存在するお菓子「バクロワ」。

バクロワは一般的にひじょうに甘い。
トルコで食べたときは、あまりの甘さに頭痛がしたほどだったが、
ここのバクロワは甘さ控えめで、その分、各種ハーブやナッツ類の味が引き立っている。
モンデールさんはムスリムながら無類の酒好きだから、やっぱり酒飲みが好むスイーツが何かよく知っている。

実をいえば、『イスラム飲酒紀行』をモンデールさんに送るのを忘れており、
「え、本に出たの? 俺、見てないよ!!」と怒られてしまった。
いくら知り合いでも、ムスリムには見せづらい本だが、モンデールさんなら喜んでくれるだろう。
本を持って近々再訪したい。

関連記事

no image

雑貨のような本

『腰痛探検家』の韓国語版が届いた。 カバーはメールで送られてきていたからすでに知ってはいたもの

記事を読む

no image

歯ブラシ40本

上海に住んでいる後輩のイシカワ(仮名)が一時帰国しており、 ワセダのアパートでビールを飲む。 彼は2

記事を読む

no image

ハチャメチャな宴

探検部の大先輩である関野吉晴さん(一ツ橋大探検部OB)に「望月さんと一緒に飯食わないか」と誘われ、

記事を読む

no image

今年の目標、早くも破綻寸前

今年の目標は「できるだけ仕事をしない」。 もともと私はいろんなことを同時並行でできるタイプではない

記事を読む

no image

「アドゥンはタイ人」さんご来場

上智大学の講義第2回。 ゲストであるタイの伝統音楽家アドゥンさんと大学の北門で待ち合わせていたのだ

記事を読む

no image

ニュー蔵前本

次回の「辺境読書」では、蔵前仁一『わけいっても、わけいっても、インド』(旅行人)を 紹介することに

記事を読む

no image

イベントのお知らせ

2月21日(木)20:00~、下北沢のB&Bにて『謎の独立国家ソマリランド』の刊行記念ト

記事を読む

no image

シュウコウとヒデユキは同一人物です

ご存知のように、前回のブログのコメント欄に映画配給会社の宣伝の人から コンゴの作家、エマニュエル・

記事を読む

no image

エンタメ・ノンフの横綱はこの人!

今月号の「本の雑誌」のコラムで、高橋秀実『素晴らしきラジオ体操』(小学館文庫)を紹介した。 秀実さん

記事を読む

ギラギラと輝く船戸ワールドの原点

知り合いである大学の先生が仕事の忙しさを「まるで障害物競走のよう」とたとえていたが、 私もまさ

記事を読む

Comment

  1. HU より:

    あんまり長文を書くのもアレなので手短に…菱田先生との対談も最高でしたが、この雑誌はいいですね。「強い者は強い」というシンプルな価値観が貫かれていて、在日外国人やアジア圏の選手に対しても平等に暖かいエールが送られているなあと感じました。勿論格オタの全てがこうでない事は知ってるんですが、排外主義がはびこる21世紀初頭の日本で、格闘技はコスモポリタン最後の楽園になるのかも知れない、と…。
    格闘技の世界では在日外国人と日本人がずっと共存してきており、民族主義はとっくの昔に乗り越えている気がします。この状況の根底には、故・大山総裁の人柄があるのかも知れません。
    モハン・ドラゴンには是非カレー屋オーナーの夢を実現してほしいです。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年10月
    « 3月    
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031  
PAGE TOP ↑