*

半分以上、東京にもどる

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

昨日の朝、イサーン(東北地方)のウドンターニーから寝台列車でバンコクに到着した。
バンコクは一ヵ月ぶりで、まるで「帰国」したかのような錯覚に陥った。

そういえば、かつてチェンマイに住んでいた頃、日本に一時帰国するときはバンコクまで列車かバスで出て、
そこから飛行機で帰った。
すると、チェンマイ→バンコクは9,10時間かかり、バンコク→東京は6時間くらいとバンコク→東京のほうが短い。
なので私の感覚では「バンコクは、チェンマイと東京の中間で、やや東京寄り」という認識が定着した。
実際、チェンマイとバンコクはあまりに都市の近代化や規模がちがって、同じ国と思えない。
バンコクに着くと、どこに何があるのかさっぱりわからないし、バスの乗り方も覚えられないしで
1,2泊でそうそうに次(東京かチェンマイ)に移動したものだった。

それから十年くらいして、30代になると、さすがに私もバンコクからチェンマイや他の都市に飛行機で移動したりするようになった。
とくに帰りはそうである。
飛行機は一瞬で着いてしまう。国内便は手続きも簡単なので、なおさら「一瞬で着いた」感じがする。
いつの間にか、チェンマイも他の地方都市もバンコクからすぐ手近のところにあるように脳内地図が著しく変更された。

さて今回。非常識な犬連れ旅では、国内線の機内に犬を持ち込むのが禁止、バスも原則禁止(地方では曖昧だが)なので
移動は列車(しかもエアコンはダメなので扇風機車両のみ)かチャーターした車にかぎられた。
おかげでタイの広さを実感することになった。
面積が日本の1.4倍は伊達でない。

そしてバンコクの都市化ぶり、巨大さはチェンマイ大学時代に実感したものと同じ。
ここまで来ると東京とさして変わらない。
犬が泊まれる宿はどの町もひじょうにかぎられ、そんな風変わりな宿はデスクと椅子が部屋にあることなどほとんどなくて
座骨神経痛が悪化してからはパソコンを打つのも容易でなかったが(そもそも常にベッドにいるしかないから座骨神経痛にもなる)、
バンコクにはアイビス・ホテル・チェーンがある。
アイビスは世界的なビジネスホテルのチェーンだが、どこも基本的に犬OK、そしてデスクと椅子がある。

だからあれだけ更新しなかったブログもこうやって気軽に書くことができる。
座骨神経痛も急速に楽になってきた。ありがたい。

面白い事に、うちの犬もアイビスが好きだ。
部屋の作り自体、気に入っているようだし、どこもほぼ同じ作りなので、
アイビス・ナナでもアイビス・サイアムでもアイビスなら犬にとっても「帰ってきた」感じがするらしい。
去年、フランスのトゥールーズで私が泊まったアイビスも同じ作りだったから、
犬はアイビス・トゥールーズでも着いてすぐリラックスするはずだ。

匂いだけでなく空間認識も犬はとても大事にすることが今回わかった。
初めての宿でも犬が喜ぶ(居心地よさそうにする)宿とそうでない宿があり、往々にして犬が喜ぶ宿は
人間にとっても居心地がいい。

たぶん間取りや家具の置き方、窓やドアの位置などで、風や光の通り具合、音の反響の仕方などが決まってきて、
最終的には「安全」「安心」につながり、
その感じ方は人も動物も大差ないのだろう。
きっと風水もそういうことを基準に考えられているのだと思う。
犬に風水を見させてもいいのではないかという気がするくらいだ。

帰国まで約一週間。
バンコクで徐々に東京の生活に戻るためのリハビリをしたいと思うが、
新たな誘惑もあり、できるかどうか。

関連記事

no image

酒よりカツカレー

モガディショからソマリランドのハルゲイサに戻り、さらに今日、飛行機で隣のジブチに出た。 世間のイメー

記事を読む

no image

鼠にも刺青を彫る?!――『バタス 刑務所の掟』

藤野眞功『バタス 刑務所の掟』(講談社)を今頃読んだ。2010年に出たとき、本屋で立ち読みしたが、な

記事を読む

no image

昔の縁

仕事というより雑事に追われて ブログを書く時間もなかなかとれない日々が続いている。 昨日は稲城市で上

記事を読む

no image

火群のごとく

ジュンク堂の宮田部長とのトークイベントはもう定員に達してしまったそうだ。 間に合わなかった人、ごめ

記事を読む

no image

ケープタウンはよいところ

ケープタウンに滞在中。 ここはヨハネスブルグに比べると、空気もきれいだし 治安もいい。 といっても、

記事を読む

no image

美味すぎる差し入れ

読者の方よりお酒をいただいた。 身内の方が、千葉県香取郡神崎町にある超老舗(江戸時代初期創業だそう

記事を読む

no image

U-50枠に入る

早大探検部OB会に久しぶりに出席。 うちのOB会は隔月で開催されており、 この日も出席者は30人以上

記事を読む

カーンとハーン

「すごくおもしろそう」と妻が買ってきたインド映画「マイネーム・イズ・ハーン」。  DVDの表紙を見

記事を読む

no image

ツチノコ!?の正体

昨日の画像はコメントしてくれた方の指摘どおり、フォトショップで加工がされていた。 もともとの画像は

記事を読む

no image

『メモリークエスト』見本とどく

初めてのことだが、2日連続で新刊の見本がとどく。 今度はお待ちかね、『メモリークエスト』。 カバー

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年4月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930  
PAGE TOP ↑