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話の長い人は「10文字以内で述べよ」のルールを使ってみる

純米吟醸酒もいいけど、燗で飲む美味しさは普通酒にはかなわないと思う。蔵の宿泊所で寝泊まりしたとき、杜氏さんたちは、これをやかんに入れて直接燗をして湯飲み茶碗で飲んでいた。

「10文字以内で述べよ」

これは、日本盛で営業マンをしていた頃、親しくしていただいたアサヒビールの方が常々言っていた言葉です。

私が担当していた酒販卸に常務として出向してきた彼は、業績の改善と、社員の意識改革に力を入れていました。

早稲田卒らしいバンカラさと、実直な富山県人の気質で社内を掌握すると、会社の雰囲気は、私のような得意先の平サラリーマンから見ても分かるくらいに一変しました。

「10文字以内で述べよ」という言葉は、社員だけでなく、私たち得意先、さらには、アサヒビールの担当者にも分け隔てなく放たれていました。

相手に何かを伝える時は、物事の本質や要点をハッキリさせること。それは時間を割いてくれた相手のためでもあるし、何より、目的意識が明確になることで最終的に自分に返ってくるというのが彼の真意だったと思います。

さて、そうはいうものの、いざ商談に臨んでみても、商品の理解や、キャンペーン内容、数字達成によるインセンティブなど、アタマの中がカオスな状態ではとても10文字で説明できるはずがありません。

言葉が増え、話の終わりが遠そうだとみるやいなや

「小林、お前の話は長い」

「ここへ着く前に、少しはものを考えてから来い」

と言われ、そして決めゼリフが飛ぶわけです。

 

現実に10文字で伝えようとしたら

「サカリを売って欲しい」

くらいしか言えません(笑)。
(大阪の酒販業界では、日本盛は“サカリさん”と呼ばれていました)

これじゃあんまりなので、なぜ売って欲しいのか説明するわけですが、それこそがまさにポイントで、先に結論をいい、次にその理由と事実を述べ、最後に自分の意見を添える・・・あれ、これってプレゼンテーションの流れそのものですよね。

伝える側には、商品の前提条件や知識に加え、社内や社外の評価、長所や短所、競合他社の情報、さらには自分の意見など、いろんなデータがそろっています。

それを相手に伝えるには、自分が情報を仕入れた順番や経緯のまま述べていたら、時間がいくらあっても足りません。

10文字で……という言葉は、まず先に結論を言えと置きかえてもよいでしょう。

しかしながら、現実は厳しいものでして、いまだに彼にお会いしても、なかなか10文字で要点が伝えられず、件の言葉をくらっております。

 

【まとめ】

「10文字以内で述べよ」の神髄

1)アタマの中の情報を分別する(結論、理由、事実、意見)

2)結論→理由→事実→意見 の順に伝える

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