*

火サスの人

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

妻・片野ゆかが小学館ノンフィクション大賞を受賞、その授賞式兼パーティに行ってきた。
日比谷の東京会館で行われ、300とも400ともつかない人々が集まり、たいへんな盛況だった。
私の友人など、「すごーい! なんだか火曜サスペンス劇場って感じ。ここで殺人事件とか起きそう」と言うので笑ってしまった。
大げさな。芸能人が集まるパーティならともかく、ノンフィクション賞のパーティなんて有名人も少ないし(世間に顔が知られているのは猪瀬直樹くらい)、別に他の業界のパーティと比べても変わりない。
…と思ったのだが、よく見ると、中に一人、際立った人物がいた。
もうかなり年配のようだが、長身で、金髪に茶色のサングラスをかけた黒いスーツ姿の男。
おお、この人はほんとに火サスに出てくる悪の黒幕みたいな人物だ。
ていうか、この人物ひとりで、あたりが火サスっぽくするオーラを発している。
パーティも終わりに近づいたとき、その人物が誰だかやっと知った。
三浦和義。
ご存知「ロス疑惑」で逮捕され、長い裁判の末、無罪が確定したが結局拘置所に13年以上入っていた。今はシャバに戻ってきている。
文字通り火サスのような人生を送っている人だ。
私の友人の直感は正しかった。
それにしても、三浦さんは拘置所でも、ありとあらゆるマスコミを名誉毀損で訴え、裁判で勝ち倒してきたと聞いている。
だいたい、彼はマスコミのためにほぼ殺人罪の刑期に等しい年数を拘置所で費やしたようなものだ。
なのに、よくマスコミのパーティにやってくるものだ。
やっぱり、タダ者じゃないのである。
※昨日は「実刑判決を受け、刑期を終えて…」と書きましたが、誤りです。上のように訂正しました。あまりに長く拘留されていたので錯覚してしまいました。すいません。三浦さん、訴えないでくださいね。

関連記事

no image

事実上は本日発売だった!

『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)がいよいよ昨日発売になった。 本の雑誌社に行

記事を読む

no image

夢のエンタメノンフフェア

丸善川崎ラゾーナ店という書店で「エンタメノンフフェア」をやっており、 しかもそこの書店員オリジナルの

記事を読む

no image

目指すはドリトル先生

読者の方からご指摘があったが、今回の『メモリークエスト』のカバーは 「ドリトル先生」をイメージした

記事を読む

no image

高野本、韓国進出第2弾

『ワセダ三畳青春記』が韓国で出版されて二週間ほど経つ。 「河童団」はどう訳されているのかという疑問は

記事を読む

no image

アラビアン・オアシス

土曜日、アブディンと一緒に八王子へタンデムで出かける。 伴走はいつものようにワタル社長。最近はもうこ

記事を読む

no image

今度はサハラかよ

久々に帰国して、待っていたのは書かねばならない原稿の山。 まずまっさきにとりかかったのはサハラ・マ

記事を読む

no image

トルコより帰る

 トルコより帰国した。  私の滞在中、トルコ国内でも二度テロがあり、外国人旅行者も犠牲になったよう

記事を読む

no image

明日だそうです

さっきラジオ番組の電話インタビューに答えたのだが、 その前にディレクターの人が「『西南シルクロードは

記事を読む

no image

多忙につき

多忙である。 おそらく一般の人からすれば「まあ、ふつう」くらいだと思うが、 私のレベルでは「超多忙

記事を読む

no image

酒飲みにやさしいイスラム国

 半年間のトルコ遊学から帰国して間もない慶応大学の学生S君にトルコの話を聞いた。  場所は阿佐ヶ谷の

記事を読む

Comment

  1. OPPU より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.17; Mac_PowerPC)
    確かに三浦和義さんと康芳夫さんの回りだけ、独特の空気が流れてましたよね。
    いろんな面で、タダ者じゃありません。

  2. ひとみ☆ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    えっ!全然知らなかった・・・
    高野さんの周りも独特の空気だったような・・・

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年4月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑