ムエタイのちチュニジア飲酒紀行
公開日:
:
高野秀行の【非】日常模様
3,4日前に発売になった「ゴング格闘技」7月号で、格闘家・ムエタイ研究家の菱田慶文先生(帝京平成大学)と私の対談が掲載されている。
1万字以上もあり、質量ともにひじょうに読み応えがあり、「賭博と真剣勝負」「ボディキャピタルと安全性」「興業と公平性」「技術の進歩と防御」「ムエタイ・ジムの疑似家族制度」
「教育における格闘技の効果」など、これまでの格闘技論にはなかった視点の話が目白押し。
格闘技・プロレス好きの人、タイ好きの人には、ぜひ読んでいただきたいと思う。
☆ ☆ ☆
今年から昨晩は大久保に移転したチュニジア料理店「ハンニバル」で夕食。
ハンニバルは10年以上前に新大久保に開店した。
その頃、たまたま行ったらチュニジア人の陽気でイケメンオーナーシェフと当時新婚で初々しかった奥さんの二人が一生懸命に
料理の説明をしてくれた。料理も素晴らしく、すっかりこの店のファンになった。
その後、ハンニバルは原宿に移転した。
私はチュニジアに行く前に、この店でモンデールさんにチュニジアの酒事情について聞いたのだ。
(その経緯は『イスラム飲酒紀行』に少し載っている)
そして今年の初めから、今度は総武線大久保駅のすぐそばにこぢんまりした店をオープンしたという情報を
あろうことか「おとなの週末」の新宿特集で知り、行って見ることにしたのだ。
モンデールさんはいきなり「アミーゴ!!」とスペイン系でもないのに叫ぶ陽気さで、変わりない。
卵と野菜を春巻きのような皮に包んで揚げた「ブリック」も久しぶりに食べたが、やっぱり絶品。
でも昨日いちばん印象的だったのは中東に広く存在するお菓子「バクロワ」。
バクロワは一般的にひじょうに甘い。
トルコで食べたときは、あまりの甘さに頭痛がしたほどだったが、
ここのバクロワは甘さ控えめで、その分、各種ハーブやナッツ類の味が引き立っている。
モンデールさんはムスリムながら無類の酒好きだから、やっぱり酒飲みが好むスイーツが何かよく知っている。
実をいえば、『イスラム飲酒紀行』をモンデールさんに送るのを忘れており、
「え、本に出たの? 俺、見てないよ!!」と怒られてしまった。
いくら知り合いでも、ムスリムには見せづらい本だが、モンデールさんなら喜んでくれるだろう。
本を持って近々再訪したい。
関連記事
-
帰国&新刊「アスクル」
さっき帰国した。 これで年内は長期で出かけることはなく、おとなしくしていることと思う。 年明けには一
-
混沌とするタイのお化けワールド
ついに『謎の独立国家ソマリランド』の見本があがってきた! パネルも本の装丁もむちゃくちゃか
-
略して『みらぶ~』!
『未来国家ブータン』の3刷りが届いた。こんな表紙である。すげ~なあ。 本書を「みらぶ~」と命名
-
大藪春彦賞受賞パーティ
平山夢明さんが『ダイナー』(ポプラ社)で大藪春彦賞を受賞し、 私と妻も受賞パーティにお招きいただい
-
語学オタクが喜ぶ変な辞書
シャン語の辞書がほしくて、ヤンゴンに移住した私のITの師匠Gさんに訊いてみたら、 さっそく足と
-
知られざる名作がまた一つ
桜栄寿三『蝸牛の鳴く山』(藤森書店)を読む。 先日お会いした作家の古処誠二さんが「すごくいい本です
-
「ムベンベ」映画化企画
拙著『幻獣ムベンベを追え』を映画化したいというオファーが来た。 しかもアニメかと思ったら実写である。
- PREV :
- 大感謝デー
- NEXT :
- 日本の中世人と現代ソマリ人の共通点と相違点
Comment
あんまり長文を書くのもアレなので手短に…菱田先生との対談も最高でしたが、この雑誌はいいですね。「強い者は強い」というシンプルな価値観が貫かれていて、在日外国人やアジア圏の選手に対しても平等に暖かいエールが送られているなあと感じました。勿論格オタの全てがこうでない事は知ってるんですが、排外主義がはびこる21世紀初頭の日本で、格闘技はコスモポリタン最後の楽園になるのかも知れない、と…。
格闘技の世界では在日外国人と日本人がずっと共存してきており、民族主義はとっくの昔に乗り越えている気がします。この状況の根底には、故・大山総裁の人柄があるのかも知れません。
モハン・ドラゴンには是非カレー屋オーナーの夢を実現してほしいです。