『バウルを探して』が新田次郎文学賞を受賞!!
公開日:
:
最終更新日:2014/05/07
高野秀行の【非】日常模様
川内有緒『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』(幻冬舎)が
第33回新田次郎文学賞を受賞した。
いやあ、びっくりである。なんせ、川内さんは“はぐれノンフィクション軍団”である「高野軍団」の準構成員みたいな人なのだ。
川内さんは高野本の愛読者であり、最初にお会いしたのは書店のトークイベントだった。
『バウルを探して』の出版とどっちが先かよく覚えてないのだけど、
その後、メールのやりとりをするようになり、彼女が北尾トロさん主宰のノンフィクション誌「レポ」に書いた国連レポートを見せてもらった。
短い体験ルポだったが、これがひじょうにユニークかつユーモアあふれ、面白い。
ぜひ単行本にすべきだと思い、知り合いの編集者に紹介した。
川内さんは十分書ける人だし、編集者も熟練の人なので、私のプロデュースは必要なく、
ただ紹介しただけである。
そちらも順調に執筆が進んでいるという。
ご自宅にお招きいただき、美味い酒とチーズをいただいたりもしたし、
2月は原宿で、4月はTSUTAYA盛岡で、2回も川内さんのダンナさんのプロデュースするトークイベントに
出演したり、なんだかすっかり縁が深くなってしまった。
もちろん、『バウルを探して』も人に勧めまくっている。
この本を読んだとき、「まるで俺の本を読んでるみたいだ」と思って驚いた。
謎を探して、一つ一つ皮をめくっていき、でもその下にはまた皮があって…とタマネギの皮をめくっていくような構成や展開は『怪獣記』を連想させる。
川内さんが私の本に影響されているのかもしれないし、もともと二人の趣味が似ているから
お互いの本が面白いと思うのかもしれない。
でも、川内さんの旅行記には、私の本には欠けている優雅さや文学性があふれている。
そこが今回の新田次郎文学賞受賞につながったのだろう。
ともかく、大野更紗、アブディンに続く「高野軍団」の準構成員(もう勝手に決めつけている)が
受賞というのはすばらしい。
あらためて川内さん、おめでとうございます!!
そして受賞後第一作の完成を楽しみにしてます。
関連記事
-
-
ムエタイのちチュニジア飲酒紀行
3,4日前に発売になった「ゴング格闘技」7月号で、格闘家・ムエタイ研究家の菱田慶文先生(帝京平成
-
-
鍵は辺境にある!らしい
すごい本が出たものである。 内田樹『日本辺境論』(新潮新書)。 「日本人とは何ものか? 鍵は『辺境
-
-
ヴォイニッチ写本の謎
エンタメノンフフェアで買い込んだ本を読んでいて仕事にならない。 佐藤あつ子『もう一度会いたい 思い
-
-
ポプラ社で「ムベンベ」キャンペーン?!
ポプラ社の文芸ウェブサイト「ポプラビーチ」の日替わり表紙写真(「本のある風景」)が6月29日、「ムベ
-
-
今年の目標、早くも破綻寸前
今年の目標は「できるだけ仕事をしない」。 もともと私はいろんなことを同時並行でできるタイプではない
-
-
謎の独立国家ソマリランド大吟醸拾年古酒
仕事場にしている「辺境ドトール」は昭和の世界だ。 店長夫妻が常に店におり、私たち常連の客と交流
- PREV :
- 角幡唯介との対談本・本日発売
- NEXT :
- ときに意味もなく文庫解説一覧