*

だめだめスウェーデン刑事小説

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


ヘニング・マンケル『殺人者の顔』(創元推理文庫)
を読む。
「スウェーデンが世界に誇る警察小説シリーズ」だというのに惹かれたのだが、
もっと惹かれたのは、舞台になっているスウェーデン南部にチェンマイ時代の友達が住んでいるからだ。
ミステリとしては物足りない、というか、ミステリではないのかもしれない。
スウェーデンが当時(1990年代)に抱えていた移民問題がテーマであり、
主人公の冴えないラヴァンダー刑事の悪戦苦闘が読みどころだ。
たとえば、
ラヴァンダーが逃げられた妻に久しぶりに会うチャンスが来たものの、
妻が去ってから自分で掃除、洗濯もできなくて一張羅のスーツは染みがついている。
しかたなく、警察署の秘書の女性に頼んで染み抜きしてもらったものの、
妻との再会に極度に緊張してしまい、
それをやわらげるためにウィスキーをひっかけたら
こぼして、スーツの同じところに染みをつくっちゃって、
「あーあ…」
なんてシーンが最高にいい。
「スウェーデン人とは仲良くなれる」と思わせる作品である。

関連記事

no image

また知り合いがノンフィクション賞を受賞!

小説すばる(10月号)に、開高健ノンフィクション賞の発表が載っていた。 それを見て、たまげてしまった

記事を読む

no image

攘夷気分

中国漁船事件が勃発、ほんとに中国っていうのはとんでもないし、日本政府の弱腰には怒り心頭だ! 私を含

記事を読む

no image

大学の講義のゲストみたい

上智大学講義、第10回目。 今年ラストの授業のゲストは琉球カウボーイフィルムズ統括プロデューサーの

記事を読む

no image

今日のアブちゃん

今週の講義のゲストでもあるアブディンのブログを発見した。 ていうか、どうして今まで気づかなかったんだ

記事を読む

no image

「本の雑誌」存亡の危機

ご存じの方も多いと思うが、世界同時不況のあおりを食らい、 本の雑誌社の経営が突然悪化し、 「本の雑誌

記事を読む

no image

イギリスにもタマキングがいた!

書くのがだいぶ遅くなったが、今年最初に読んだ本は早くも今年最高の本になる可能性がある。 ダグラス・

記事を読む

no image

八丈島での発見

一週間、八丈島に行っていた。 浜辺のキャンプ場にテントを張ったが、なにしろ起伏に富んだ地形なので徒歩

記事を読む

no image

2月から3月はブータン

1月にソマリランドを再訪する予定だったが、 諸事情により延期し、 かわりに2月10日頃から約1ヵ月、

記事を読む

no image

TBS「クレイジージャーニー」とすしざんまい

さきほど私が出演したTBS「クレイジージャーニー」が放映された。当初は「ムベンベ」「アヘン王国」「ソ

記事を読む

no image

これも旅?

長い一日だった。 6:30起床、荷物など準備。 朝10時頃、ザックをかついで家を出た。 横殴りの雨で

記事を読む

Comment

  1. ウーマン17 より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 SO702i(c100;TB;W24H12)
    ウイスキーのくだり、いいですねぇ。素敵です。
    高野さんはミステリが好みなんですか??

  2. gadogado より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; BT Openworld Broadband; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727)
    ラヴァンダー警部??? これってもしかしたら、Kurt Wallander の事?マルモの近くの Y Stadt にすんでる。日本語ではラヴァンダーって訳されてるんですね。スゥエーデン語ではそういう風に発音するのかな??英語圏でも彼の作品は結構しられてます。去年BBCでKenneth Branagh が主人公Wallanderを演じシリーズ化され放映されました。今年も続きをやるそうです(楽しみ!)実際にY Stadt で撮影されたらしく、北欧の自然の美しさ、絶妙な光の加減が起こる事件の暗さ残酷さと相反していてなかなかよかったです。ちなみにKenneth演じるWallanderはずーっと無精ひげをはやしていましたよ。一人でもんもんとウイスキーを飲むシーンも沢山ありました。けど北欧インテリアがとっても素敵なせいか不健康な感じはしなかったな。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年8月
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    25262728293031
PAGE TOP ↑