*

狂言

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

国立能楽堂で行われた「春狂言2009」を観にいく。
と言ったら意外に思われるかもしれないが、
狂言くらいは文化人として当然おさえておくべきジャンルだ。
…と言いたいのだが、見るのは生まれて初めてだ。
ていうか、歌舞伎と能と狂言がどうちがうのかもよくわからない。
一度も映像でも見たことがないのである。
今回は京都の狂言師・茂山童司さんという人からご招待を受けたのである。
童司さんは奇特にも高野本の愛読者らしい。
国立能楽堂におそるおそる行くと、案の定、「格式」という札がそこらじゅうに貼ってある気配で、着物などお上品なお召し物を着たご婦人たちがそぞろ歩き、
金髪の人間も、汚いデイパックを背負った人間も一人としていない。
セーシェル以来の完璧アウェイ。
一体全体どうなるんだろうと不安におののいていたが、
大名が客席に向かって「だいみょうでーす!」といきなり自己紹介(?)をしたり、
80歳を過ぎた老人が鶴印の金ぴかの帽子をかぶって、踊り狂っていたり、
パンクというかアナーキーというか、
はちゃめちゃなのでびっくりした。
物語も、大名と使用人が相撲をとるとか、山伏が腰痛のじいさんを治そうとすると
腰が激しく伸びたり縮んだりするとか、落語テイストに近い。
よく知らないけど、志村けんのバカ殿もこんな感じじゃないのか。
あとで茂山童司さんに訊けば、童司さんのおじいさんである茂山千之丞さん(金ぴかの帽子をかぶって踊り狂っていた人)は、桂米朝師匠と売れない頃からの大親友だったそうだし、
童司さん自身、まだ20代半ばと思うが、噺家の柳家三三や講談師の神田山陽と一緒に
会を催しているという。
「笑い」でつながるのだろう。
能や歌舞伎など伝統芸能を食わず嫌いしている人(つまり私みたいな人間)には
狂言から入るのがお薦めである。
※諸事情があり過去の日記をいくつか削除した。
なかったことにしたいのでご理解ください。

関連記事

no image

幼児の気持ち

依然として声が出ない。 ずっと考えているのだが、これはやはり「今日のおりょうり」のインタビューで

記事を読む

内側から見た「やくざ」

最近イースト・プレスの本が面白い。 まあ、知り合いの編集者が増えて新刊を送ってきてくれるせいも

記事を読む

no image

私の2006年上半期ベスト本はこれだ!

先月のことだが、「本の雑誌」編集部から、「高野さんの個人的な2006年上半期ベスト1を教えてほしい」

記事を読む

no image

名人級

 吉祥寺に出たついでに本屋にぶらっと立ち寄り、なんとなく大槻ケンヂの新刊『綿いっぱいの愛を!』(角

記事を読む

no image

驚異の山形勉強会

昨年に引き続き、山形大学医学部の先生主催による「勉強会」にお招きいただき、 週末は山形に行き、今さ

記事を読む

no image

オモロイ坊主

土曜日、「オモロイ坊主」こと藤川和尚を囲む会の新年会に参加させていただく。 藤川和尚はかつてタイで

記事を読む

no image

インタビューされる方は楽だ

「イングリッシュ・ジャーナル」誌のインタビューを受ける。 以前、私はこの雑誌で仕事をしていたことがあ

記事を読む

no image

タマキングはなぜモテる?

土曜日、新宿ネイキッドロフトにて行われたタマキング祭りを見に行った。 私は自分ではイベントにしばし

記事を読む

no image

平凡妄想

『放っておいても明日は来る』(通称アスクル)を出版することが決まったとき、 まず思ったのは「ゲストの

記事を読む

no image

昔の愛読書

今から30年以上も昔、私が小学生になったかならないかの頃、 トラゴロウというトラの出てくる物語を愛

記事を読む

Comment

  1. KJM より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    初コメント失礼します。
    自分も先日、国立劇場で、狂言を経験してきました。全く興味はなく、半ば強制的に連行された感じでしたが、高野さんと同じく意外とPUNKでROCKなのに驚きました。そして、観客のおじいちゃん、おばあちゃんが大勢居眠りしていたのにも驚きました。
    セーシェル以来の完璧アウェイ(笑)

  2. しばいぬ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; GTB5)
    こんにちは。いつも楽しみに拝見しています。
    高野さんも遂に能楽堂デビューですね!
    私は学生時代はハードロック少女で、見るからにロックないでたちでしたが、同時にかなり真剣に能の稽古にも通っていました。
    やっぱり共通するモノはしっかり流れていると思いますよ。
    狂言は茂山家の大ファンで会員になって公演も観に行っていますよ♪
    なので、高野さんの能楽堂デビューは、とっても嬉しかったです。
    機会があったら、また狂言を観に行って下さいね。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年11月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
PAGE TOP ↑