*

離島に電子書籍を!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

最近は中東・アフリカのイスラム圏に行き、取材して原稿を書くことが多い。
そういうとき、ネットは便利だ。
なにしろ現地にいるときでも、調べ物ができる。
日本語では表示も検索もできないが、どっちにしても英語の情報のほうが断然多いから
問題ない。
問題はそのあとだ。
ネットの情報は概略を知るにはいいが、そのままでは使えない。
典型例がwikipedia。ひじょうに便利だが、まっとうな書き手なら
ウィキの情報を引用したりしない。
幸い、ウィキには出典が義務づけられているので、裏をとることができる。
ところが、だ。
出典を読むことができない。
図書館にもないし、アマゾンでも買えない。
あるいは買えても、一万円を超えるほど高かったり、到着に三週間もかかったりする。
それからネットとは関係なく、英語の資料が入手しづらいのも悩みの種だ。
ソマリア問題で面白そうな新刊が出たから是非読みたいと思い、
アマゾンで予約注文したが、11月刊行の本がいまだ届く気配がない。
日本に暮らすというのは、世界的には離島で暮らすようなものだ。
首都圏では当たり前に流通している本がまるで届かない。
というわけで、期待するのは電子書籍。
離島在住の問題点はひとえに流通である。
ならば、書籍が情報化されれば、理論的には一気に解決するわけだ。
モノとしての本をはるばる船や飛行機で運ぶ必要がないからだ。
電子書籍化されると値が下がるのもありがたい。
これまでタイトルだけ見て購入したものの、私の関心のある部分が少なすぎたり
全然なかったという、輸入本は何冊もあった。
めちゃ高い金を払ったのに。
日本での電子書籍の議論は、日本国内での話に終始している。
でも繰り返すが、それは離島の中の話でしかない。
日本語の電子書籍だって、まずは海外在住者100万人にたいそうな朗報をもたらすだろう。
そして今後は日本国内に住む外国人や、外国の書籍を必要とする人間に
朗報をもたらしてほしいものだ。

関連記事

no image

また知り合いがノンフィクション賞を受賞!

小説すばる(10月号)に、開高健ノンフィクション賞の発表が載っていた。 それを見て、たまげてしまった

記事を読む

no image

クールだけど超目立つ

 『謎の独立国家ソマリランド』、ついに昨日からAmazon.comで予約受付が開始された。

記事を読む

no image

寒波と猛暑

フランスに亡命したルワンダ人の友人のところに母国から家族が到着した。 奥さんと娘が移住を認められたの

記事を読む

no image

医学界に進出

「週刊医事新報」なる医学雑誌が自宅に届き、何事かと思ったら 私の本が紹介されていた。 神奈川県葉山

記事を読む

no image

パリジャンは味オンチ

最近フランス料理店の取材をしていたので、ミツコ・ザハー『パリジャンは味オンチ』(小学館101新書)

記事を読む

no image

出発

昨日、関係のない映像を観ていたおかげで 結局、かぎりなく徹夜に近くなってしまった。 死ぬほど眠い。

記事を読む

no image

夢を喰らい続けて50年って…

早稲田大学探検部創立50周年記念ビデオが届いた。 タイトルは「夢を喰らい続けて50年」という大時代

記事を読む

no image

あの素晴らしい旅行記をもう一度

なんとなく小島剛一著『トルコのもう一つの顔』(中公新書)を再読したが、 あらためて素晴らしい本だ。

記事を読む

no image

のまど寄席「林家彦いちの旅落語」

 本屋プロレスや本屋野宿といった素っ頓狂なイベントがあったが、今度は伊野尾書店ではなく西荻窪の「旅の

記事を読む

no image

さらば「増刷童貞」!?

 自慢ではないが、私は「増刷童貞」だ。  これまで書いた本は8冊。さらに、文庫化された本が3冊。さら

記事を読む

Comment

  1. コシチェイ より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
    なるほど!電子書籍のメリットがやっとわかりました。面白そうだが高い本も、マイナーな本も、情報で配信するのなら安くてより多い需要が見込めますから…

  2. ken より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10_6_5; ja-jp) AppleWebKit/533.19.4 (KHTML, like Gecko) Version/5.0.3 Safari/533.19.4
    Google BooksとGoogle eBookstoreには期待できるんじゃないですか。日本はダメですね。端末の話ばかりで。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年12月
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑