自虐読書の旅
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
地震以降、朝ジョギングに行くと、びっくりするほど人がいない。
私が走る玉川上水沿いは、いつもはジョギングやウォーキング、犬の散歩などで
にぎわっているのに、ここ数日は犬の散歩がごくたまにいるくらいで、
ランナーやウォーカーは皆無だ。
貸し切りのような気分で走り、家の近くまで来たら、車からアナウンスが聞こえる。
区役所か警察だろうか、「ラジオ」がどうのとか「テレビ」がなんとかと言っているが、
よくわからないうえ、どんどん遠ざかっていく。
また原発で大変な事態が起きたのかと思い、疲れた足にむちうって猛ダッシュ、
アナウンスカーに追いすがってみたら、
「使えなくなったラジオ、テレビ、自転車、オートバイなどございましたら…」と
言っていた。
☆ ☆ ☆
かつて私はインドに謎の怪魚ウモッカを探しに行ったもの、入国と同時に拘束され、
強制送還になった。
でも、まさか戻ってきたとは人に言えず、黙って自宅潜伏していた。
あまりにやることもなく、気持ちも落ち込んでいたので、
それを利用して「自虐映画鑑賞会」をひとりでやっていた。
今の自分と似たような、にっちもさっちも行かない状況に主人公が陥るという映画を観て、
もっとどんどん落ち込もうという、ひじょうに積極的に後ろ向きな企画だった。
(詳しくは拙著「怪魚ウモッカ格闘記」(集英社文庫)をご覧ください。)
今回の震災でも、せっかくなので、積極的に気持ちを落ち込ませるような読書をしてみることにした。自虐読書の旅である。
第一回目は河田惠昭『津波災害』(岩波新書)。
この本は帯からして凄い。
「必ず、来る!」
もう来ちゃったよ!とつっこんでから読者はページを開くことになる。
「まえがき」でも、災害研究の第一人者である著者は、
津波の避難率は年々下がるいっぽうで、2010年のチリ沖津波地震では
岩手、宮城を含む「津波常襲地帯」の避難率は5.1%にすぎず、
「こんなことではとんでもないことになる」とのべ、
「三陸津波の来襲では万を超える犠牲者が発生しかねない」と断言している。
刊行は昨年12月。
これが16世紀だったら、著者の河田先生はノストラダムスのような大予言者として
あがめられたことだろう。
だが、いかんせん、今は21世紀。
予言でなく、科学である。
私も津波の本なんて目もくれていなかった。
しかし、今、津波や地震の話を読むと、驚くほどするする頭に内容が入ってくる。
毎日テレビで見ているから、被害の情景は浮かびすぎるほどだし、
津波のメカニズムや地震のプレートの仕組み、あるいは宮古、大船渡、釜石など
「なじみ」の地名も頻発する。
みんながこの本を読んでいれば、と思ういっぽう、
「高台に逃げる余裕がなければ鉄筋コンクリート三階建ての建物に逃げる」とか
「津波防波堤が作られた釜石市や大船渡市はきわだって安全になっている」といった
今回の津波で完全に崩壊した「神話」も繰り返されており、
人間や科学の無力さをも思い知らされる。
他方、西日本に縄文遺跡が少なく東日本に多いから、
東のほうが発展していたと思われているが、
実は西日本は津波の被害で遺跡が残っていないだけじゃないかという
「津波考古学」を唱えたりして、純粋に知的なおもしろさもある。
恐怖、やるせなさ、諦念、知的興奮などさまざまな感情を喚起する読書だった。
※引き続き、震災以降のバカ話、くだらない話をてきとうに書いてくださいね。
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友人が見つけた、知らない人のつぶやき
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「津波考古学」については、私も今回の災害をTVでみながらボンヤリ考えていました。
「自虐映画鑑賞会」をやっている人は意外に多いのか、家の近くのTSUTAYAで『TSUNAMI』という最新映画が何気にレンタルされていました。
(ちなみに私の探していたDVDは、地震で店内がごちゃごちゃになった際に紛失してしまったとのこと。そんな馬鹿な…。一日も早く平穏な日常に戻ることを祈るばかりです)
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衝撃映像に精神的に参ってしまい、
テレビはNHKのニュースのみにしています。
そんな中「徹子の部屋」は復活したそうです。
ただ予定を変更してゲストは大竹しのぶ。
じゃあ本来の予定はっていうとカルーセル麻紀だったそうな。
何故?
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子供は注射が嫌いで予防接種は大変です
でも友人の子はお風呂嫌いで
「注射の日はお風呂入らなくていいから嬉しい」
被災地でも一人くらいはそんな子がいないかしらん?
(たぶん高野さんに似てると思うよ)
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笑える話をありがとうございます。
カルーセル麻紀はダメで大竹しのぶはいいっていうのもねえ。
日本赤軍も笑った。