*

原発君とインド人

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

今日も原発君は元気なようである。
原発を憎むとかえってよくないような気がして、
親しみをもたせて、心を開いてもらいたくて君付けで呼ぶことにした。
ところで毎日いろんな人が電話をしてくる。
他に用事があってのことだけど、多くの人が「原発、大丈夫ですかね?」とか
「政府の発表はほんとうなのかな?」と私に訊く。
わかるわけないじゃないか。
原子力の専門家でもないし、政府や東電の人間でもないんだから。
昨日は宮田部長まで「ねえ、原発どうなんだろうね?」と言うから
逆に「どうして俺に訊けばわかるってみんな思ってるんだろう?」と聞き返した。
すると「いや、高野さんはさ、何か特殊なルートを持っていて、裏事情かなんかを把握してそうな気がしてさ」
なるほど。私はアジア、アフリカのことでは、一般の人が知らない事実を報告している。
でもそんなのは裏事情ではなく、単に日本のマスコミが報道しないだけだ。
原発君については日頃電気をもらっていたくらいで、特に親しくはしていない。
昨日は、海外からやってくる外国人客を成田空港から送迎するという仕事をしているKさんから電話が来た。
「高野さん、大変ですよ」と彼は言う。「インド人も逃げてるんですよ。ほんとにやばいんじゃないかな」
これには笑った。
インド人は野生動物かっていうの。
津波の前にゾウやトラが逃げたとか、沈没する船からネズミが逃げるとかと同じなのか。
もっともKさんの言いたいのは、どんなことがあっても気にしなさそうなインド人が
あわてているから、やばいんじゃないかという意味だったみたいだ。
ま、そりゃそうだけど、
彼らだって、帰るところがあれば、逃げるでしょ、ふつう。
Kさんの話でもう一つ面白かったのは、彼はインド大使館に頼まれて、
大型バス3台、中型バス2台を手配したのだが、
当日それに乗ったのはたった6人。
他の人たちは大使館の話を知りつつ、自分たちでそれぞれ車を手配して成田に行ったという。
「インドの人は頭から大使館の言うことなど信じてないんですね」とKさん。
多少は見習いたいものである。
     ☆        ☆          ☆
あわてるあまりだろうけど、郵便窓口で「日本赤軍に義援金を」と口走ってしまった人の話がコメント欄にあった。
笑わせてもらったけど、
そういえば、私も、5年前、妻が小学館ノンフィクション大賞を受賞し、すぐに来てくださいと言う電話が夜中に来たとき、、
タクシーを呼ぼうとしたら、なぜか110番につながっていた。
しかも「事故ですか、事件ですか?」と訊かれて、えっとどっちかなと一瞬考えてしまった。
みなさん、緊急時こそ落ち着きましょう。

関連記事

no image

戦国時代のインスタント味噌汁

料理雑誌「danchu」の取材で奈良在住の料理研究家の先生を訪ねる。 戦国時代からあるインスタント味

記事を読む

no image

リンガラ語を社内公用語に

楽天につづいてユニクロも社内公用語を英語に決めたそうである。 「日本だけの会社じゃない」という思いか

記事を読む

no image

八丈島での発見

一週間、八丈島に行っていた。 浜辺のキャンプ場にテントを張ったが、なにしろ起伏に富んだ地形なので徒歩

記事を読む

no image

ソマリランドで発見した素敵なドリンク

人と喋っているときはいいのだが、一人になると、波のように佐藤先輩のことが押し寄せてきて、 いろんな

記事を読む

no image

盲目の吟遊詩人

「メモリークエスト」が更新された。 今回の依頼は「盲目の吟遊詩人を探せ!」。 場所はラオス。 いや、

記事を読む

no image

人生の内定がとれてないアナタに

 内澤副部長の名作ポップはコレ。  副部長の漫画イラストなんて見たことがない。お宝ものだ。  ス

記事を読む

no image

南伸坊氏のカバー完成

 来年2月刊に集英社文庫から刊行される新作「異国トーキョー漂流記」(これが正式なタイトルになった)。

記事を読む

no image

ある天才編集者の死

集英社文庫で私の担当を長らく務めていた堀内倫子さんが急に亡くなられた。 茫然自失である。 堀内さんは

記事を読む

no image

インドラの矢

宮崎駿監督の「天空の城・ラピュタ」を見る。二度目。 1986年と宮崎監督のわりと初期の作品だから、

記事を読む

no image

相模原の秘境

取材で相模原の郊外へ行く。 畑の中にポツンとあるちっぽけな施設に、すごい人物がいた! ほんとうに凄い

記事を読む

Comment

  1. コシチェイ より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
    明るいニュース
    欽ちゃんが、気仙沼ちゃんの無事を確認したそうです。

  2. シャロン より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
     関西ローカルですが、「ちちんぷいぷい」という情報番組で、原発についてわかりやすく解説してましたよ。一部紹介します。
      http://www.youtube.com/watch?v=TWFCXrK0Fig
     「騒ぎすぎ」だそうで、今のところ東京どころか福島でも、原発すぐ近くでない限り大丈夫とか。

  3. シャロン より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
     げ、すいません。リンクの貼り方間違えていまいました。恥ずかし……。
     また失敗するとご迷惑なので、興味があればYoutubeで「ちちんぷいぷい 原発」「ちちんぷいぷい 被曝」などで検索してみてください。素人でもよくわかりますよ。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年7月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031  
PAGE TOP ↑