*

謎の国際ボランティア特殊部隊@浦安

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

後輩Kとネパール人のクマルという国際統合失調症コンビを引き連れ、
浦安市の被災地へボランティアに行ってきた。
今回公的なボランティアは初めてだが、登録・説明・マッチングが恐ろしいほどに
システマチックなのに驚く。
まるで浦安市は10年もずっと液状化していてずっとボランティアを受け付けてきたかのような
慣れ具合だ。
作業は泥かき。公民館の排水溝にたまった泥をスコップでとり、土嚢につめる。
公民館の周囲は50センチほど見事に陥没していた。
歩道もあちこちがぼこぼこにへこんだり飛び出していたり。
浦安市内から来ている人たちに聞けば、被害を受けたのはすべて埋め立て地で、
そうでない場所はほぼ無傷という。
実際に泥をかいてみれば、それは泥でなく砂。海の砂だ。
この辺は椎名誠が育った場所だと聞く。
あの少年小説の数々に描かれた海なのである。
椎名さんがさんざん泳ぎ釣りをし働いた海の砂がこうして、大地が揺れるたびに噴出してくるわけで、自然にはかなわないということを、ここでも実感せざるをえない。
国際統合失調症コンビは周囲の人たちと協調し、
自分が何をやるべきか適確に判断して、実にてきぱきと働いていた。
精神疾患の人はある種のことはできないかもしれないが、ある種のことは
ちゃんとできるのだということを改めて確信した。
もともと真面目で気遣いがあるタイプだから、環境さえ整えれば仕事に向いているのだ。
作業は2時間足らずで終了。
残念ながら(?)、浦安市の被災地は状況改善のため、市外からのボランティア受け入れはもうおしまいだという。
「また他のところでボランティアをしたい」と二人とも強く訴えるので、
今後もわれわれボランティア特殊部隊は活動を続けることになりそうだ。
       ☆        ☆        ☆
浦安の作業が終わると同時に西葛西に移動し、今度は在日インド人の元締め的存在である
チャンドラニ氏に取材。
西葛西には今2300人ものインド人が住んでいるが、
ほとんどが外資(インドもしくは欧米)のIT企業会社員であり、会社から「国外退去」の指令を受けているため、9割が帰国してしまっているという。
1978年から西葛西に住んでいるチャンドラニさんはもちろん居続け、
被災したインド・ネパール系の人たちにも尽くしているようだ。
在日インド人の歴史の話もめちゃくちゃおもしろく、
ITの人たちが戻ってきたら、ぜひ取材して、「移民の宴」に書きたい。
      ☆       ☆       ☆

私のマラソン本のテレビ登場は「よりによってこんなときに」だったが、
それを上回る本が届いた。
宮田珠己の新刊『ジェットコースターにもほどがある』(集英社文庫)
東日本全体がエンドレスのジェットコースターとなり、絶叫マシン化しているこんなときに
よりにもよって…と思いつつ、ページをめくるとすぐに爆笑。
こんなときこそタマキングを読んで明るく笑いたい。

関連記事

no image

3回目のボリショイ・サーカス

「本の雑誌」9月号の特集「エンタメ・ノンフ座談会」のゲラを校正する。 これがメチャクチャおもしろい。

記事を読む

no image

いよいよ『困ってるひと』

私がプロデュースする第1弾、大野更紗『困ってるひと(ポプラ社)の見本ができた。 カバーイラストはウェ

記事を読む

no image

霊能質問会で充実

親戚の葬儀に出てお骨をひろったあと、斎場からそのまま大阪へ直行、 「未確認思考物隊」の第5回「霊能質

記事を読む

no image

海賊の少年とすしざんまい

裁判というのはひじょうに傍聴が難しい。 いつ行われるのか直前にならないと公表されないのだ。

記事を読む

no image

陳会長の誕生パーティで動転する

日本冒険作家協会の内藤陳会長の誕生日パーティがあるから来ないかと友人に誘われ、行ってみた。 陳会長は

記事を読む

no image

『腰痛探検家』韓国マンガ版?

韓国語版『腰痛探検家』のレビューは、読者の方々があっという間に正確に翻訳してくれた。 高野本の読者

記事を読む

no image

これが例の葉っぱ

ソマリランドに「帰国」してもう10日近く経つ。 「帰国」なんて言葉を使ったのが行けなかったのか、今

記事を読む

吾妻ひでおがもたらした超有用情報

吾妻ひでおの『疾走日記2 アル中病棟』(イースト・プレス)を読んだ。こんな細かい漫画を8年も書き続け

記事を読む

no image

あの映画は何だったのか

名前はよく知っているし、名場面や音楽も知っているような気がするが、 実は一度もちゃんと見たことがない

記事を読む

学校や仕事に行くのが辛いとき、この映像を見よう

アブディンの『わが盲想』、やっと重版がかかった。 「すぐにドカーンと売れる」という私の皮算用か

記事を読む

Comment

  1. soleil より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; en-US) AppleWebKit/532.4 (KHTML, like Gecko) Chrome/4.0.237.0 Safari/532.4
    初めまして。
    今、カンボジアのとあるとこに居ます。
    その町のゲストハウスに、高野さんの本がおいてあり読ませていただきました。
    「幻獣ムベンベを追え」です。面白かったです。
    地震、恐ろしいですね。
    地震が起こったときはすでに日本を発っていたので経験しませんでしたが、インターネットのニュースで見る限り、悲惨なのがすぐ分かります。
    こんなときこそ、笑っていたいですよね!

  2. shanti より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; ja; rv:1.9.2.15) Gecko/20110303 Firefox/3.6.15 ( .NET CLR 3.5.30729; .NET4.0C)
    ミャンマーのシャン州でも地震がありましたよ!

  3. 高野秀行 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; en-US) AppleWebKit/534.16 (KHTML, like Gecko) Chrome/10.0.648.151 Safari/534.16
    タチレック(タイ側はメーサイ)とチェントゥン(チャイントン)の間あたりが震源地みたいですね。
    バンコクやヤンゴンでも揺れたというから、相当に大きい地震だったでしょう。
    向こうの建物は耐震構造とかないですからね…。

shanti へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年7月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031  
PAGE TOP ↑